第19話義姉と後輩はピザを囲む
「はじめまして、私は
「初めまして、私は七瀬サラといいます。せんぱいの一個下で二年生です
「私もサラちゃんって呼んでもいいかしら?」
女同士格付けのようなものは終わったようで、表面上は問題なさそうだ。
俺は頃合いを見て焼きトマトのサラダを出す。
「さぁどうぞ、おあがりよっ!」
深めの皿に乗せられたのは、スライストマトと玉ねぎ、シーチキンを乗せたサラダだ。
「美味しそう!」
「バジルかしら彩も綺麗ね……」
「食べるときはそのままでもいいけど、このパン粉とクラッカーをニンニクで痛めたものを乗せるとプロヴァンス風に、こちのサラダ用ドレッシングをかけても美味しいし、チーズをかけてもおいしいよ?」
俺の説明を聞く前に二人は既にサラダに手を付けていた。
「何品か作っていったけどこんなに簡単で美味しいなんて凄い!」
「基本の味付けが濃くないので何にでもなれますね……一年前と比べると雲泥の差です……」
「あははははは……」
サラの言葉に俺は愛想笑いを浮かべるしかなかった。
一年前の俺の料理、酷かったからなぁ……
「一年前まではこんなに上手くなかったですよ。手料理食べさせられた時は男料理! っていうよりは食べられればいいって感じのモノでした」
「人に歴史ありだね……」
としみじみと呟いている。
「フレンチドレッシングで食べてもさっぱりしてて美味しい……あれ、これって……いつものドレッシングよね?」
「よくわかったね。作り置きしてるドレッシングで、マスタードと白ワインビネガーが効いてるんだと思うよ。日本人にとってワインビネガーの刺激臭と味って結構キツくて10対1ぐらいにするとおいしく食べられるんだ」
お酢はダイエットに利くと言われており、高校デビューを目指した過程で見つけたレシピだったりする。なのでサラは食べたことが無いレシピだ。
ドレッシングをまじまじと見ているサラを見て
「あれ? サラちゃんは食べたことないの?」
「カレー味のドレッシングで食べたことはるんですけど……このドレッシングは初めてです」
「カレー味のドレッシングってあの赤っぽい色の奴ね」
「せんぱいがインドカレーにハマってそのお店のドレッシングを再現したいって言って試行錯誤してたんです」
「あのドレッシング美味しいけど、和洋中で出てくると浮くよね」
「分かります!」
実は不評だったのね。ぐすん。
「お次はサーモンのマリネねトマトと一緒に食べても美味しいよ」
30、40分程度付けただけのサーモンなので酸味がきつくなく丁度いいぐらいだろう。
「こっちがコンソメスープ」
具材は牛筋、玉ねぎ、人参、セロリのこの四つのシンプルな具材だけ、隠し味は白ワインと旨味調味料だけ。
「凄い美味しい」
「あったまる流石せんぱい料理上手」
「出汁は出来合いのものだから具材に火を通すだけだし……」
こうも褒められると照れる。
「ピザ食べようよ冷めちゃうよ」
俺は飛び切り可愛い義姉と後輩に褒められて赤くなった顔を隠すために、ピザを食べるように促す。
「確かにピザ冷めちゃいますね……」
「そうだね」
そう言うとピザを切り出して取り皿に乗せる。
チーズとトマトソースが絡まって美味い。やっぱり俺は王道のピザが好きだ。
「久しぶりに食べると美味しいわ」
「冷食とかピザトーストと比べてもやっぱり美味しいです」
色々な味を食べたいと言っていたわりに、組み合わせは王道なものばかりで正直言って面白みはない。
だがそれでいい。
「そういえば二人はどういう経緯でであったの?」
別に隠すようなことでもない。
「塾だよ塾。前に俺が勉強を頑張り始めたのは、幼馴染にフラれたからってのは説明したよな?」
「うん、一年と少しぐらいまえだっけ?」
「そう、そのころから塾に通い。慣れないながらも家事を本格的に始めたころにサラに会ったんだよ」
サラが説明を始める。
「今もそうなんですけど、親と仲が悪くて幸い帰ってくるのが遅いことが多いので苦ではないんですけど、その日は家でしてて24時間営業のスーパーで半額のお弁当を買おうとしていた時でした」
「偶然、せんぱいが声を掛けてくれて料理をごちそうしてくれたんです……」
「……いい話だね……」
「でもものすごく微妙だったんです。男料理というか、味も濃いめだしかと言って特別美味しい訳でもないなんて言うかサービスエリアの醤油ラーメンみたいな……」
「ああ……何となく分かる気がする……」
「それ以降も、ちょくちょく相手して貰っているのが私、七瀬サラです」
「何となくだけど関係は分かったし、部外者の私がとやかく言う事ではないわね…親御さんに心配かけないようにしてくれれば私からの文句はないわ」
「ありがとうございます。
「……」
思い当たる節があるのか、
新しい家族の中で、元々その家にいた人物には友人がいてその友人を家に度々招くというのは、
ここで心の内を吐露しても要らぬ波紋を呼ぶだけだ。と考えれば、沈黙それが正しい答えとも言えなくはない。
「なので私は、
その言葉は自分と同じような孤独を抱えた年上の少女へ手を差し伸べるようなものだった。
「確かに見知らぬ土地で、血の繋がらない二人の男と『今日から家族よ』と母から言われて『はい。そうですか』と、即答できるほどできた人間ではないわ。まだ高校も始まっていないし私自身が心を許せる友人が出来るかもわからない。だから……
「……」
「だから私と友達になってくれる?」
「もちろんです」
こうしてLIMEを交換した二人は俺を緩衝材にしつつ共通の話題で盛り上がるのだった。
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