第2話麦は踏まれて強くなる
「あー ほんとーに ごめん! そーいうのムリだから。
流れるようなサラサラの黒髪をかき上げながら、幼馴染の
「なんで……」
絞り出した言葉は小さく細いものだった。
「
取り繕うために、今考えたとしか思えない理由を語る。
「それに身長だって特別高い訳でもないし、顔もイマイチパッとしないし、オマケに太ってるし……」
「うぐっ……」
彼女の言う通り身長は170センチと少し、ギリ人権がある程度。
顔は自称フツメン、趣味が『美味しい物を食べる』というせいでぽっちゃり系と、モテ要素がないことぐらい自分でだってわかっている。
「勉強が特別できる訳でもないし……何て言うかーカレシにするには面白みがないのよね」
「……」
「だからごめんね。
「――――」
いつもすずの後ろを付いてまわっていた僕に、彼女を丸め込める話術はなく、僕は黙って頷くしかなかった。
中学二年の夏休み前、つい夏休みマジックを夢見て告白してみたけど、主人公的ムーブは出来なかった。
フラれる以前の問題で、スタートラインにすら立たせてもらえなかったようなものだ。
幼馴染にはカレシがいた、きっと暇を持て余した夏休みに彼女は少女から女への階段を昇っていくのだろう。
そんなことを考えると気持ちが沈んだ。
………
……
…
僕の家が父子家庭となったのは割と早く、一人で留守番することが多かったので、ご近所の皆さんの声掛けは正直ありがたかった。
特に同年代の子供がいるすずのお母さんは、何かと気をかけてくれ、ありがたいことに夕食に招いてくれることも多かった。
普段、スーパーの総菜や冷凍食品を常食としてた僕には心温まる美味しい家庭のご飯は、何よりも嬉しいものだった。
そうすると必然的にすずと顔を合わせることが増える。
身近な異性に惹かれた僕は、多分なんにも悪くない、と思う。
中二の夏、度々招かれた食事の席で感じるフラれた気恥かしさと、まるで蕾がほころぶかに華ひらいてゆく、僕の知らないすずの女としての一面が垣間見える度、込上げてくる複雑な思いに潰されそうになっていた。
何とかそこから脱却するため、おばさんに料理のいろはを習い、総菜や冷食・デリバリーを止め、中二の夏休み中料理に向き合い。家事全般のスキル向上と、塾での勉強に打ち込んだ。
そんな感じで主婦業と学業に打ち込んで、凡そ一年。
あまり勉強の得意ではない、すずでは通えない高校を目指すことにした……中学三年の夏、料理に至っては勉強の息抜きにまでなっていた。
「二年の秋頃は成績が落ち心配したが、冬・春と成績も上昇している。志望校もより上位を狙えるぞ。」
――――と2、3年と担任を引き継いだ教師にも御墨付きをもらい、志望校を変更。
無事試験も終わり、後は結果を待っている。
そんな不安定なある日のことだった。
………
……
…
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