第27話義姉の手作り料理1
「私も料理が出来るようになりたいの……」
俺が作り置きの総菜を作っていると、いつもならリビングでテレビを見ているか、ファッション誌やスマホでSNSを見ている菜月さんがキッチン越しにそう呟いた。
俺は率直な疑問を口にした。
「料理が出来るようになるのは良いことだけど……急にまたどうして……」
現在の家事分担としては、俺が弁当や夕飯の副菜・主菜になるようなおかずを作ること風呂掃除がメインで、
両親共働きで互いにバリバリのキャリア組と言う事を考えれば、掃除洗濯なんかの家事が疎かでも仕方のないことだろう。
因みに床の掃除は、高性能ロボット掃除機が活動しているので最低限で問題ないのだ。文明の利器最高。
「もうすぐ母の日だからそれに合わせて……というわけではないんだけど、母に手料理を御馳走したくて……何かいいレシピはないかな?」
えらく抽象的だな……「いいレシピ」と言うのは作るのが簡単でお洒落と言う意味なのか、作るのが簡単で美味しいという意味なのだろうか? ……分からない。
取り合えず
「好きな料理ってなんだっけ? 和食とか中華とかイタリアンとか……」
共に暮らして数か月立ったとは言え、個人の好みを完璧気把握している訳ではない。分からないなら訊いてみようという判断だ。
「特にないわね」
「じゃぁ万人受けするイタリアンか中華にしようか、どっちがいい?」
「ミネストローネスープとか、トマトのスパゲティとかオシャレでいいわね」
イタリアンか……まぁ家庭科は小中で習っている訳だし切る煮るぐらいは出来るか……
「解った。じゃぁミネストローネとトマトスパゲティにしようか……」
そう言うと俺は、冷蔵庫から材料を取り出す。
「先ずは肉とお野菜を切ろうか……野菜も肉も同じサイズに切っていく……歯触りを良く整えるためだ。サイズは……大体1センチ角ぐらいだ」
お手本として人参の先端と頭を切ってから半分にカットする。
それからブロック状に切り揃える。
「流石ね
「ありがとう……まぁ半分は趣味見たいなモノだけどね。菜月さんも残りの食材を切ってみよう」
包丁を渡し切るように促すと、拙く危なげな手付きでジャガイモを切っていく……
「
余りの手慣れていない手付きにヒヤヒヤとして、ついつい口を出してしまう。
自分が指を切るのはいい。だが、他人が切るのは見過ごせない。
「でも安定しないし、それに
それは刃物の扱いに慣れているという理由もあるが、別に速さを競っている訳でもないので包丁で指を切る可能性も低いのだ。
「俺は慣れてるし……実際バランス的に猫の手じゃ切れないものもあるし……」
それらをどうにか言語化しようとするが、彼女を説き伏せるだけの妥当性のある理由が見つからない。
「初心者だから基本に忠実に従え」と言ったところで、自分が素直に言う事を聞くとは思えないからこそ相手にも言えないのだ。
そんなこんなで、
「指が痛いわ……」
絆創膏を巻いた指を見ながら彼女は呟いた。
絆創膏のガーゼ部分は赤く染まっており、血が滲んでいるのが分かる。
「だからゆっくり丁寧切るか、猫の手で切れば指を怪我しなかったに……」
刃物で切った傷は、傷が薄ければ “痛い” よりも “痒み” のほうが勝ることが多くそれは
「清潔にしていれば治りますから、傷をかいたり消毒したりすると治るの遅くなりますからね? あと血が止まったら絆創膏外した方がいいですよ?」
「解ったわ……」
そう返事を返した彼女は、少ししょんぼりとして見えた。
「ここからパスタソースとミネストローネに食材達が分岐進化をしていく事になります。なので少し多めの分量を炒めて行きます」
「解ったわ」
「俺はこう言う色んな料理に派生する前段階の中でもカレーと肉ジャガなどに進化する前段階をイ〇ブイと呼んでいます」
「イー〇イってあの色んなタイプに進化する奴?」
「そうです。火、水、雷から始まり今や八種います。カレーの材料はそう言う複数派生の可能性がある食材なので、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、肉は常備しておいて間違いないかと……話がそれましたね……」
「大匙4杯のオリーブ油をフライパンに淹れ、角切りベーコンと共に焼き色が付くまで炒める」
コンロ前に立った
ニンニクとベーコンの焼ける匂いが合わさると無性に腹が減る。
「ニンニクを入れ香りがったったら半分に分け、一方からニンニクをキッチンペーパーの上に取り出して油を抜いて置く……ニンニクを取り出した方に、湯剥きしたカットトマトを入れひと煮立ちさせる。音がパチパチ言ってきたら火を止めよ熱で食材を加熱する」
「結構やることが多いのね……」
「そうだね。でもずっと見ていないといけない訳じゃなないし慣れれば簡単だよ。パスタは7割完成だからミネストローネの方に戻ろうか」
俺は
お店で出すような美味しい料理には、手間暇がかかっているのだ。
さて次は斬った材料を炒める番だ。
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