第4話相談
「どうしよぅ……」
親の再婚で義姉か義妹が出来る、という割と大きな問題を抱えてしまった……
「困難は分割せよ」とルロイ修道士は言っていたが、問題は一つののため分割すらできない。
\(^o^)/オワタ……
ボッチ気質の俺は、こんな時に頼りにできる知り合いはほぼいない……
そんな思わず目を反らしたくなるような事実を、まざまざと突きつけられ、思わず目頭が熱くなり目から心の汗が溢れてくる。
悩んだ俺は思い切って唯一思い浮かんだ、塾の後輩に相談する事にし、メッセージアプリLIMEを起動してメッセージを打った。
20:02「話したい事があるんだけど、今時間大丈夫?」
……すると、爆速で既読が付いてメッセージが届いた。
【サラ】「え? 何ですか急に……」20:03
どうやら後輩を困惑させて、しまったようだ。
20:03「お前に聞いてほしい事があるんだ」
【サラ】「リアルで会うなら準備に一時間ください!!」20:04
何を勘違いしてるんだコイツ……
20:04「夜も遅いしそこまで迷惑はかけられないよ。電話で良いのでお願いします」
【サラ】「時間は全然大丈夫なので、電話で良ければいつでもどうぞ……」20:04
ピロロロン ピロロロン と、LIME電話の呼び出し音が2コール流れると『はい。サラです』と、一年後輩の女子。
『悪いな急に、こんな事言って……』
先ず謝罪した。
非常識……とは言えないぐらいの時間だが、年頃の女の子……彼女でもない子に電話して良い時間じゃないな、と反省してのことだ。
すると、彼女は少し困ったような声音でこう言った。
『いえ。確かに急でしたけど、センパイから「話したいことがある」なんて言われたら私、断れませんよ。で、話したい事って何ですか?』
『実は父さんが再婚する事になって……』
俺は次の言葉が出てこなかった。それを察してサラは、阿吽の呼吸で俺に次の言葉を催促した。
『はぁ……センパイって父子家庭でしたよね?
それなら特に問題ないのでは? それで新しいお義母さんができるんだけど美人過ぎて……とか「実は義理の美人な姉か妹……欲張って姉妹が出来る」とかそう言う、最近のラブコメで人気が出たテンプレみたいな話ですか?』
別にサラは俺と違って、ゴリゴリのオタクと言う訳ではない。
彼女が入塾して一年と少し、毎日塾で顔を合せていた俺達が仲良くなるのはある意味自然だった。その時に漫画の話になっておすすめの漫画を何冊か貸した。
その時の作品をネタにしているのだろう。
『娘さんがいることしか聞いてない。年齢も俺より上なのか下なのかすら聞いてない』
『そこ! 重要じゃないんですか? オタク男子にとって義妹、義姉って合法的に背徳感を楽しむコンテンツだと思ってましたけど、何で確認しなかったんですか!』
――――と声を荒げる。
確かに血の繋がった “姉妹” をヒロインに据えた作品は少なく、倫理上の観点から義妹や幼馴染、従妹など関係を変えつつ属性を盛るという方向性にしている作品が多い。
『残念ながらそこまでの精神的余力はない!』
俺はハッキリと言い放つ。
「大丈夫ですよセンパイ。先輩みたいに性根の腐った人は『あくタイプ』のはずです。
太陽と月以降は、あくタイプに『いたずらごころ』で変化技撃っても無効化されるんで、そうやって斜に構えていれば大抵何とかなりますよ」
――なにが性根の腐った人は『あくタイプ』のはずです――だ。弟の影響でハマったらしい国民的育成ゲームの情報を被せて来んな。俺はポ〇モンじゃねぇ!
先制補助技が弱体化されたのは害悪共……特にあのクソペルシャ猫のせいだろうけど、性格が悪いと言われているので少し腹が立つ。
しかし、昨今の新作ではステータスで技のタイプが変化するアレや、受けキャラ用の補助技の変更など運営から「正面から殴り合え」と言わんばかりの無言の圧力が嫌になる。
閑話休題。
『で、逃げ道なく顔合わせの予定が立てられてるんだ。』
『それはまた何というか……センパイ受験生ですけど大丈夫ですか? そんな過密なレーススケジュールを消化するのって、今からだと春休みしかないじゃないですか!? 先輩にとっては大ケヤキを超えた最終直線でスパートを掛け終わった時期、一番ゆっくりしたい時期だけど結果が出てないからイマイチ気を抜けないモヤモヤ期だといのに……大丈夫ですか?』
――――と言うかなんで君は、ちょくちょく競馬感ある用語が出て来るの? 君、実は
もちろん俺はプロデューサーで提督でトレーナーだけど。
『大丈夫だ。問題ない……って言えたら良かったんだけど不安だよ……他人同士が上手く折衝する方法ってなんだろうね……』
『女の子相手なら、先ず服とか容姿を褒めれば上手くいくんじゃないでしょうか?』
『なるほど……』
『でも過度にほめ過ぎたり、体型に触れるような発言は軟派に思われる可能性があるんで、そーですねー、警戒心の高い猫に接するような感じで対処すれば問題ないかと……』
『ふむ、勉強になるな……』
『一緒に暮らす上では必要以上に関わらないことと、お風呂やトイレのシーンに遭遇しないようにすることですかね……』
うっかりお風呂やトイレに気付かずに突撃するのは、もはやラブコメの定番といってもいい。
『せんぱい。今いやらしい妄想してましたね?』
ちょっと何この娘、俺の心が読めるの? エスパーなの?
もしかしてこれが奴の
『……よ、よくわかったな』
『一年以上の付き合いですよ? せんぱいの思考程度、完璧に予想できます。……て言うか勉強はソコソコできる癖に、なんでそういうところはIQが下がるんですか? もしかして今のIQ3ぐらいしかないんですか?』
『「IQが下がる」って……酷くない? いくら俺の言動が多少アレでも恋愛頭脳戦してる漫画の書記見たいに、ウルシゴキブリ素手で掴んで「森へお帰り」ってやらないし、他人の恋愛に首を突っ込むようなこともやってない! IQ53万の俺の脳内CPUがハジき出した結論は…… “
俺は強い言葉で否定した。
そんな出歯亀みたいなことは、俺の人生でたったの一度もない。
すると、サラは呆れた口調でこういった。
『はぁ……逆に考えてみてください。それ以外の事はやっていると……』
『なん……だと……確かに言われてみれば俺、中二の夏まで今みたいに家事と趣味以外は勉強してるみたいな生活は送ってないな……グレートですよコイツは……』
『サザエさん見てぇな髪型の不良少年になっても許されませんからね? 黄金の精神を持った星型の痣を持つ一族みたいなこと言っても済みませんからね?』
――――と、強く念押しされた。
『……で、私相手にスパーリングして心は軽くなりましたか?』
『いつも甘えているのは私なのでたまにはいいですよ?
それでは私は自習があるので失礼します』
そう言って後輩は電話を切った。
「きっと彼女の半分は優しさで出来ているんだろうな」
俺はそんなくだらない事を言うと、ベッドに入って眠りについた。 ちょっと心が軽くなった。
☆本家の薬効成分って半分しかないって……こと?☆
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