「美人はモテない理論」は本当か
YouTube一人演芸協会の吉村崇のショート動画で、冒頭、「美人はモテない」と私は切り出した。
完全無欠の人間は近寄りがたい。
なぜか。
それは、自分の至らなさを指摘されそうだからだ。
日頃の不勉強、不摂生。なにを言われても言い返せない。相手は完全無欠だから。
実際そんなことはないだろうが、そういうオーラを感じ取られると、SNS上ならメリットにはなるが、リアルでは誰も近寄ってこない。
リアルで本当にモテる人間とは、隙がある人間である。
どこかに隙があるから、文字通り近づける「隙」が生まれて、声もかけやすい。
スターバックスに行ったときのこと。
いつものように仕事道具を持って列に並んでいると、前のおじさんが支払い時に、首から下げていたネームプレートを提示して会計を済ませた。
えっ
今ってネームプレートで支払いできる何かがあるの?
ああ、あれか? スタバのカードかなんか?でもそれ首からぶら下げるか?
しばらく逡巡していると、流行りのベージュブラウンに髪を染めた若い女性店員が、そのおじさんに「お疲れ様でーす」と挨拶した。
ああ
店員か。
社員専用のバーコードかなんかか。
社員と思われるそのおじさんは、「お疲れー」と女性店員に挨拶すると、受け取りカウンターへと進んだ。
そういうことかと納得したところで、私が注文カウンターに進むと、そのベージュブラウンは「お疲れ様でーす」と私に言ってきた。
え?
と思った次の瞬間ベージュブラウンは
「あっ、間違えた」
と小さく照れた。
かっ…!
かわいい。
その直前まで、なんとも思っていなかった女性に、私の心は急速に持っていかれることとなり、「新婚旅行はスタバの本社があるシアトルだね」と彼女に囁く光景まで浮かばせた。
モテる女性は“隙”である。
これを計算してやっていたのが頂き女子りりちゃんだ。
捏造された隙は、見分けることができない不可避トラップ。
このベージュブラウンもまさか。
いや、私に色目使ったところで先方にはメリットないのだから、取り越し苦労だ。
もう19時だから、寝付きにくくなることを危惧し、当初はショートサイズにするつもりだったが、少しでも売上に貢献しようと謎の思考が働きトールサイズにしようかと一瞬悩んだが、
「ショートで」
と冷静に支払いを済ませ、いつものように仕事を始めた。
確かに美人は目を引くが、本当にモテる女は“隙”がある。
自分が入り込める余地という名の隙である。
これがないと判断された場合、多くの一般男子はアクションを起こさない。すると、その女性に言い寄る男は、ナンパ師か、反社まがいの強面か、思い詰めた犯罪者予備軍のいずれかになる。
ナンパ師は毎日女に声をかけているため話しかけることにためらいも恥じらいもないし、反社まがいは力で人を押さえつけてきた経歴と自信からそれができるし、余地はないが突破したいと思い詰めた犯罪者予備軍は、いきなり強行手段に出る。
女性からすると、あまり近寄られたくないであろう者からしか来てくれなくなる。
健全男子からモテる女性は“隙”がある。自分のようなものでも近づいていいのかなと思わせる、余地という名の隙。
美人はモテないというよりも、隙がある女性が最終的には一番モテる。
ただ男側にすれば、それが計算によって作られた隙なのか、自然発生的なものなのか、見分ける術はない。
もしその見分け方を生み出せたら、それはノーベル平和賞ものだ。
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