【明石家さんま論】雨でもテンション高い人最強説
この2週間、よく寝られなかった。
温かくなってきたと思えば暑いし、かと思えば急激に寒くなって暴風雨だの春の嵐だので気圧はトチ狂い、元々寝付きが悪い私には、辛い日々であった。
4月10日の水曜日を覚えているだろうか。久しぶりの快晴で、湿気もなくカラッとしたこの日埼玉は、沖縄と化した。
園児のように熟睡できたこの日は身体が軽く、どんなことでもやれそうな気さえした。
気候により身体がダルくなり、仕事がはかどらない日々を振り返ると、実に無駄な時間を過ごしてしまったように思える。ダラダラして、未来の計画も億劫になる。
飲みに行きましょう!
いやー、いいや。
今度こんなことやりましょう!
いやー、いいや。
実際にはどこの誰からも誘いなどなかったが、心境としてはこんな感じ。
天気の良し悪しでテンションが変わるような人間に、幸せは訪れない。雨が降ろうと槍が降ろうと元気な人にこそ、幸せは訪れる。振り払っても振り払っても、幸せが勝手についてくる。
明石家さんまさんはいつも元気に見える。
しかし、同じ人間である以上、そんなわけはない。
さんまさんだって多かれ少なかれ気候の影響も受けるだろうし、ちょっと寝不足の日や、ちょっとお腹痛いとか、それくらいのことはあるはずだ。
でもあの人はいつだって元気だ。実際はともかく、こちらからはそう見える。
盟友の島田紳助さんが、「こいつめちゃくちゃ寝起き悪いねん、しょっちゅう遅刻するし」とよくお話されていたから、オフのときはダラーっとしているに違いない。
とすると、なにか自分の中にスイッチのようなものがあり、バチンとそれを入れているんだと思う。
スイッチの源は、欲求だ。
人を笑わせたいという崇高に見える思いも、めくってめくってめくっていけば、モテたい、目立ちたい、儲けたいといった誰にでもあるものだろうけど、あのポジションに行ってまでそのスイッチを入れられるのはすごい。
もう使命感になっているんだろうけど、スイッチを入れた先にあるものが、楽しい世界線だから、ということを身体が分かっているからなんだろう。
だから、ダルかろうがなんだろうが、スイッチを入れる。そうすることで、強引に“今”を楽しくしてこれたんだと思う。その結果として人がついてきて、人気がついてきて、お金がついてきた。
つまらなそうな人には誰もついてこない。
実際がどうであれ、そう“見える”人には、つまらない人しかついてこない。類は友を呼ぶ。
つまらない人に面白い人はわざわざ入り込んでいかないし、忙しい人にチャンスは入り込んでいかない。
一定のところまで上がりきった人はともかく、仕事、恋愛、なにかチャンスを求めている人は、忙しそうに見せてはいけない。
私は30代、誰と会っても暇だ暇だと喧伝し、どこかお声がかかれば、金になろうがなるまいが、どこへでも行った。来た連絡には秒で即レスし続け、不在着信があれば番号をググることなく即折り返した。半分は妙な業者だったが。
仕事が山積みでも暇人を演出し、「声かければいつでも来る奴」を演じ、お声がかからなければ、自分からもお声をかけ続けた。「今度飲みいきましょう」を社交辞令にせず、必ず誘った。
おかげでテレビ局などのメディアからもよく呼ばれたし、仕事も途切れなかった。空いた時間はずっと勉強し、それに飽きたら誰かを飲みに誘い、学んだことを復習するように喋り続けた。
休む暇もなく忙しかったが、暇人を演じ続けたことで、40代になった今は多少ゆとりを持って、自分のペースで生きていけるようになった。
ポイントは、実態は関係ないということだ。
楽し「そうに」に見えればいい。例えつまらなくても、楽しそうにしていれば、本当に楽しくなる。もちろんそれには努力が必要だ。楽しそうにできるように努めなければならない。
つまらなそうな人にでも突破してきてくれるのは金欲と性欲だけ。詐欺師かナンパ師。なんか搾り取れそうだなと察知した連中が、甘言と共に忍び込んでくる。それはまるでウィルスのように、隙あらば入り込んできて、養分を吸い尽くす。
つまらなそうにしてると、詐欺師かナンパ師しか呼び込まない。次第に、ああ、なんて自分は運が悪いんだと塞ぎ込んでいくが、招いているのは自分自身。
さんまさんは誰かを笑わせる以前に、自分を笑わせにかかっているようにさえ見える。
だから常にストイック。そんなんじゃさんちゃん笑わへんという、お笑いへの厳しさがある。そんな厳しい自分を笑わせるから、あの人の毎日はきっと楽しい。楽しい人間に楽しい人間はついてくる。病魔も入る余地がない。
まさにお笑い怪獣である。
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