最初に自分の足を引っ張ってくるのは自分
「負けの99%は自滅だ」
これは20年間無敗の雀鬼、桜井章一氏の言葉である。
会社員時代、仕事が上手く行っていたときのこと。
ある取引先から、突然連絡が途絶えた。
いつもならそろそろ連絡が来るタイミングなのに。
その頃私は次々と舞い込んでくる大きな仕事で忙しく、そのうち連絡が来るだろうと高をくくっていた。
しかし、待てど暮らせど連絡は来ない。
自分の中にあった小さな疑問が、日を追うごとに大きくなっていく。
なにか忘れていないか。
なにか見落としていないか。
はたと思い出した。
「…じゃあその件は、こちらでやりますよ!いえいえ、いつもお世話になってますから、全然大丈夫ですよ!」
これだ。
こちらでやると言っていた仕事を、私は一つ欠いていた。
きっと先方は、私に言いにくかったのだ。
立場的には、こちらがクライアントだったし、そのクライアントが自分からやると言っていたことを無下にはできない。かといって、催促もしにくい。
“あの人、他にも大きな仕事たくさんしてるみたいだから”
“うちのような案件はきっと後回しだろうし”
そんな彼らの心の声が頭の中でこだまする。
私は大急ぎでその仕事をこなし、先方に謝罪した。
すごかったのは、そのときの先方の対応だ。
忘れていたのはこちらの方なのに、先方も忘れていた“フリ”をしてくれた。
つまり彼らは、“クライアントに謝罪させた”という構図を作らないよう、嘘をついてくれたのだ。今後気まずい関係性にならないように。
ちょっと仕事ができると思って、いい気になっていた。
恥ずかしくなった。
その後も先方との取引きは無事再開したが、もし私があのまま忘れていたら。
思い出すのがもう少し遅れていたら。
関係は修復不能だったかもしれない。
最初に自分の足を引っ張ってくるのは、上司でも部下でも取引先でもなく、自分だ。
自分の中の慢心が、自分の足を引っ張ってくる。
嫌な上司、嫌な部下、嫌な取引先。
彼らが「嫌な人間」に映るのは、自分が嫌なことを先にしている可能性がある。
YouTubeをやっていると、いきなり石を投げつけてくるような奴がいるが、そういう輩を相手にしようとは思わないし、礼儀正しい人には礼儀正しく応対する。
相手の反応は自分との合わせ鏡だ。
自分のしたことを忘れている場合、一方的に相手を「嫌な人間」と決めつけてしまう。
こうして足元はすくわれていく。
やがて信頼を失い、人が離れていく。
自分から離れるときを思い出してみてもそうだ。
ああ、この人やると言っていたのにやってないな。忘れてるな。全然覚えてないな。
これを繰り返しされると、その人を信用しなくなる。
やがて離れる。
それは、「嫌いになった」という移ろいやすい感情論でさえなく、信頼できない人とは時間を共有できないという、決定的なことを意味する。
確かに、「負けの99%は自滅」かもしれない。
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