年上に「頑張ってください」と言ってしまうミス~新社会人たちへ~

矢沢永吉さんだったか、長渕剛さんだったか。


ツアー中、ホテルを出たところ中学生と思われるファンが、「大ファンです」と歩み寄ってきて握手を交わし、去り際に「頑張ってください」と言われ、ムッとしたという話しを、なにかの雑誌のインタビュー記事で読んだことがある。今から20年以上前。


その記事を読んだときは、なんで怒ったのかいまいちピンと来なかったが、大人になるとわかってくる。


社長に向かって「頑張ってください」とは言わないし、小学生から「頑張ってください」と言われたらもうダメかなこれはと思う。


深田恭子が初めて「HEY!HEY!HEY!」に出たとき、ダウンタウンを前に緊張してうまく話せない様子を心配して、観覧に来ていたファンが「頑張って」と声をかけたとき。


松本人志さんはそれを受けて、「君より頑張ったから(深田恭子は)ここにおるんや」とスタジオを沸かせた。


僕もTikTokを始めてから、明らかに中高生と思われる子から「頑張ってください」と言われることがあり、なるほど、確かに違和感はある。


自分に置き換えてみてどうだろう。例えばとんねるずが目の前に現れたとして、「大ファンです」と歩み寄ったとする。


握手してくださいと言って、してくれたとする。そして去り際思わず、「頑張ってください」と、言ってしまいそうな自分がいる。これでは同じだ。


韓国ドラマ『梨泰院クラス』の主人公パク・セロイに「責任が取れないから未成年なんだ」というセリフがある。


子どもはまだしも、自分の言いたいことだけをただ相手にぶつける大人ではいかん。新社会人も考えてみてほしい。


では、なんと言えば良いだろう。


「いつも応援しています」


これだと、頑張ってくださいとニュアンスが近い。


「いつも見てます」


去り際に言う言葉ではない。


「これからも見てます」


日本語としておかしい。


こういうのは、相手の気持ちになるべきだ。


「次の作品も楽しみにしています」


これはなかなか良い気がする。


「作品」は、番組とか、新曲、新作と言い換えても良い。


未来のあなたも大好きですという思い。


クロマニヨンズの甲本ヒロトさんは、「バンドは今やってる奴が一番かっこいい」と言っていた。きっとこの人は、どこに行っても「ブルーハーツ大好きでした」と言われ続けているんだと思う。


「ブルーハーツ大好きです」は、決して失礼な言葉ではないと思う。正直なファンの思いだし、本人もそれは理解しているはずだ。


でも誰だって、過去より今を愛されたいし、未来も大好きですと言われた方が嬉しい。


『101回目のプロポーズ』で武田鉄矢さんが演じた星野達郎が、100回目のお見合い相手を繋ぎ止めたのが、「僕は誓う。50年後の君を、今と変わらず愛している」という一言だった。


あなたの未来も大好きです、というこの観点は、ニュアンスを間違えるとストーカー寄りになってしまう恐れはあるが、憧れの人に限らず、片思いの異性など、様々な場面においても有効かもしれない。


誰かが退職することになると、みんなで一言メッセージを添えた色紙を渡す慣習が以前の職場ではあったが、僕は毎回、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『サンダーバードヒルズ』の一節を利用し「ハローベイビー。お前の未来を愛してる」と書いていた。


緩やかに滑っていた気はするが、あながち大外れでもなかったのかもしれない。


逞しくあれ新社会人。

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