話が上手い人が必ずやっていること

“儲けてる人は居酒屋にいる”


この世で一番酷い極刑は、ムチでも拷問でもなく、「孤立」だという。


独房で完全に一人にさせ、監視員も来ない。動物も植物さえない。とにかく生命と一切関わらせず、この世で完全に一人の状態にする。


すると、人は簡単に発狂してしまうという。


現代社会では、「孤立なんか全然いい。むしろ一人になりたい」と思う御仁もおられるかもしれないが、それは所詮、「どこかに誰かいる」という前提の孤立であって、隣の部屋、隣の家、外に出れば誰かいるという孤立は真の孤立とはいえない。


では、人間にとって一番の地獄が真の孤立だとすると、その反対はなにか。


それは、交流である。


交流とは、会話であり、言葉だ。


友と語らい、恋人と愛し合い、ネットでバズる。友人も恋愛もバズも、全て言葉から生み出される。


そして、会話のゴールは「共感」にある。共感しあったときに友情が生まれ、愛は最高潮になり、バズが起きる。


承認欲求という言葉が使われて久しいが、そんなものは有史以来人間にデフォルトで備わっていることで、時代と共に方法を変えながら、常に人は会話し、共感を求めてきた。この世の地獄が孤立であるからこそ、その反対の交流求めるのは人間の本能といえる。


そして、この「交流」を制するものに人、お金、情報が集まり、大成する。


太古の世界では交流せず一人でいると、すぐに野生動物に襲われそもそも生きていけないわけで、その本質は現代でも同じである。


会話には、大きく分けて2種類しかない。


「出来事」と「感想」だ。


今日学校で起きたことを親に話す。昨日観た映画について友人に話す。今話題の事件について議論する。


「出来事」とは体験であり、エピソードであり、歴史・情報・データ。


その出来事を受けての自分の反応や考えが「感想」。


お笑い芸人によるすべらない話も、コメンテーターによる時事ネタ解説も、私がやっているYouTube(一人演芸協会)も、全てこれに当てはまる。「出来事」と「感想」。


現代では、野生動物から身を守るための必要最低限の会話ではなく、「面白さ」が問われる。


会話が面白い人とはなにか。


様々なテクニック論があるが、万人に共通する答えが一つだけある。


スポーツ選手で大成する人の共通項を考えてみればわかる。東大に入る人、仕事ができる人でもいい。


答えは、量だ。


圧倒的な練習量。


島田紳助さんは、それぞれ別の人に三回話して初めてその話が自分のものになると言っていた。


野球、サッカー、あらゆるスポーツも、同じことを繰り返し練習することで上達していく。どんなに才能がなく下手な人でも、昨日より今日、今日より明日の方が上手くなる。辞めさえしなければ。


しかし、スポーツや勉強なら一人でも練習する環境があるが、会話の練習はどこで積めばいいのか。


話がうまい芸人さんや、成功している若い起業家の共通点を探ってみるとわかる。


話がうまい芸人さんは、ほとんどと言っていいほど、飲み歩いている人が多い。そういった場で何度も繰り返し仕上げた話を、テレビで披露しているのだと思われる。


数少ない私が知る大手企業の某社長も、毎晩のように飲み歩いていた。それが仕事だと言っていた。そういった場で自分の思いを繰り返し共有し、反応を様々な人から受けることで、プレゼン上手になり、刺激や発想力が鍛えられて、内容もより研鑽されていく。「夢や目標は口にしろ」とよく言われる所以はここにある。


風が吹けば桶屋が儲かるように言えば、儲けてる人は居酒屋にいる。


英語を覚える最短方法が外国で住むことのように、会話がうまくなる最短方法は居酒屋で飲み歩くことである。


そこに、「話しが上手くなりたい」という意識がある人は、前回の反省点を活かしながら話すだろうし、儲けたい、大成したい、仕事が欲しい、なにか目標がある人は、それを共有していくことで、“それ”に巡り合う。


フリーのクリエイターでバリバリ稼いでいる人の共通点もそう。一昔前までは、腕の良さ、センスの良さ、キャリアや実績、こういったものを持っているものが稼げていたが、今は、技術力よりコミュ力の方がお金になる。


なんであれだけセンスある人なのに辞めちゃったんだろう。あいつまだ若くてたいしたキャリアもないのに、なんで稼げてるんだろう。それは、交流を制しているから。面白いから。「あなたにお願いしたい」と言われる人だから。


とは言っても、なにも意識せずただ飲み歩いているだけでは、同じ話を何度も繰り返す面倒なアル中だ。外国に住んでいても、毎日翻訳ツールを使って生きていれば何年経っても英語は話せない。


わずかな意識と、話す環境。


話しが上手い人は、必ずこの2つを持っている。

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