概要
谷崎の耽美主義が最も発揮された代表作
「つまりナオミは天地の間に充満して、私を取り巻き、私を苦しめ、私の呻きを聞きながら、それを笑って眺めている悪霊のようなものでした」 独り者の会社員、譲治は日本人離れした美少女ナオミに惚れ込み、立派な女に仕立てやりたいと同居を申し出る。我儘を許され性的に奔放な娘へ変貌するナオミに失望しながら、その魔性に溺れて人生を捧げる譲治の、狂おしい愛の記録。角川文庫『痴人の愛』所収。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!谷崎潤一郎版源氏物語
まず驚くのは、読みやすさですね。ひたすらに読みやすい。ドナルド・キーンが、日本の作家(当時の純文学の書き手)で一等読みやすいのはたれかと問われ、谷崎潤一郎と答えたそうですが、欧文脈の、くだいていえば、英文の翻訳に近いもので、ために我々現代を生きるものにとっても読みやすいわけですね。
それは谷崎潤一郎のコンプレックスというのか、妻となるひとの指摘もあり、それゆえ春琴抄などの技巧へとなり、源氏物語訳にもなるのでしょうが。
指摘するまでもありませんが、本作は谷崎潤一郎版源氏物語なんでしょうね。谷崎潤一郎は光源氏をけしからんと言っていたそうですが、紫の上を素材として、谷崎潤一郎であればこう料理する、…続きを読む