夜の四十万に、冴えざえとした怜悧な月。
遍く夜を司る神の鋭く尖った刃にも似て
不穏な夜の空気を上弦より薙ぐ。
芳しき白花の巫女たちの要塞の内裏では
一人の少女が 渇望 に悶え苦しむ。
暗闇の中に蠢く黑ぐろとした衝動が湧き
上がり、更にその奥底で光る青い瞳は
一体何を齎すものなのか。
許されざる逢瀬を重ねても満たされない
渇望は、黑き衝動を深紅に染める。
与える者と、拒みながらも甘受する者。
彼等の運命は。
これは【白花冥幻譚】【白花ノ剣】に続く
和風異世界ファンタジーであり、今作は
官能的なホラー要素も盛り込まれている。
白ノ宮を舞台に、衛士と巫女の許されざる
血の逢瀬と相反する仄かな想い。
物語は、まだ始まったばかり。
美しく蠱惑的な夜の世界を。そして彼等の
運命の行く末を。
これは己を探す物語でもある。