3-1 Smoke Of Rebellion

 新学期を迎えた。高校生活も、残り1年を切った。

 クラス替えの結果、流雫は変わらなかったが、黒薙と笹平は2人揃って別のクラスへ移った。そして流雫の場合、美桜との関係からか席も今のまま……美桜の1つ前で固定されていた。それは、2年前に出逢った少女が後ろから、かつての恋人を見守っている……ように見える、と云うのは、些か妄想も過ぎるだろうか。

 その始業式も、流雫は上の空だった。


 「詩応さんが……死んじゃう……」

2日前の夜、スマートフォン越しに流雫の耳に焼き付いたのは、泣きじゃくる澪の第一声。何が起きているのか判らず、何も言えない流雫は、最愛の少女に何時かの自分を見ている気がした。

 ……美桜の死を最初に聞いた自分の叫ぶような泣き声を、何も言わずただ聞いているだけだった黒薙も、こんな思いだったのだろうか。

 折角、どうにか話せるようになったと云うのに。美桜の時と同じじゃないか……。

 ……何故?その言葉すら浮かばない。流雫は

「伏見さん……助かる……絶対……」

と声に出すのが精一杯だった。そして、喜怒哀楽の全てを失った表情を滲ませ、ただ願うだけだった。

 ……信じる者は救われる。ならば、敬虔な信者は救われなければならない。ソレイエドールよ、絶対に伏見さんを殺すな……。

 そして日曜朝、弥陀ヶ原から連絡を受けた流雫は、その場に崩れた。緊急手術が成功したらしい。集中治療室にいるが、生きているだけでも一安心する。

「伏見さん……」

そう口にした流雫の瞳は、濡れていた。


 名古屋駅のプラットホームに差し掛かった新幹線の車内で、詩応は突然首を切られた。隣に乗っている乗客が突然奇声を上げ、立とうとした彼女にカッターナイフを振ったのだ。車内の混み具合は通路まで乗客で溢れ、車内販売も辿り着けないほどだったから、車内巡回をしていた警察官も先頭車両への到着が遅れた。

 当時犯人の男は泥酔状態だったが、警察への連行中に昏睡状態に陥り、名古屋市内の病院で急性アルコール中毒で死亡した。

 そして詩応は、搬送先の病院で緊急手術が行われ、一命は取り留めた。しかし、月曜日になっても集中治療室から出られないままだ。心肺停止状態で搬送され、脳にその後遺症が出ていないかが、最大の不安材料だった。

 ……事件の背景は何なのか。詩応の回復を待つしか無いが、わざわざエムレイドが駆け付けると云うのは、単なる突発的な、通り魔的な犯行ではないことを示唆していた。

 それは、被害者が太陽騎士団の信者だから。……フランス発の宗教団体、その信者が当事者となる事件は全て、偶然とは思えない。そして、伏見さんは最初から狙われた。通り魔なんかじゃない。誰に狙われた?答えは一つ。

 そう思った流雫は、確信を強めた。……自分たちが知ろうとしていることは、今の太陽騎士団……もとい旭鷲教会の連中にとっては、相当不都合なことだと。だから、伏見さんも粛清すべき存在と思われた……。

 知らぬが仏、と云う言事が日本には有る。知らない方が幸せと云うことは少なくない。しかし、それぞれが何らかの形で知った。それがとばっちりの末だろうと、プロセスはどうでもいい。知ったと云うリザルトが、何よりも重要だったからだ。

 

 流雫は、教室でも上の空だった。自己紹介をしなくて済んだのは幸いだった。

 午前中で放課後を迎えた。他の生徒から少しだけ遅れて、流雫が帰ろうと立ち上がると

「……宇奈月くん」

と言って、少女が教室に入ってきた。先月まで同級生だった笹平だ。今は最も離れたクラスにいる。

「……あ、笹平さん……」

とだけ返した流雫に、新しいクラスでも学級委員長になった少女は

「……澪さんと何か有ったの?」

と問う。それに対して

「特には………」

と答える流雫は、しかし本当の理由を言うワケにはいかなかった。

 「何か暗いから、ついそう思っちゃった」

と言った笹平に、流雫は

「……美桜と出逢って2年だから……それ思い出してた」

と言いながら、窓に目を向ける。ふと、あの教会が目に止まり、思わずそれからは目を背けた。

 ……かつての恋人が生きていたのも2年前。そのことは忘れていたワケじゃない。しかし、それ以上に詩応を襲った悪夢が、流雫に暗い影を落としていた。ただ、今笹平に対して取り繕うのには最適だった。

「2年……。早いわよね……」

と言って、主を失った机を撫でる笹平は目を閉じる。

 ……恐らく、今は美桜との出逢い、何気ない日常、そしてあの日……爆心地となった渋谷で目の当たりにした、彼女の亡骸を思い出しているに違いない。

「……今も、宇奈月くんの背中を見守ってるといいな……」

と笹平が言うと、シルバーヘアの少年は

「……見守ってると思う。僕と澪を」

と返し、鞄を手にすると

 「……じゃあ、僕は帰るよ」

とだけ言い残して教室を出た。それと入れ替わるように

「宇奈月と離れたのは痛いな……」

と言いながら、黒薙が

 「……あの話?」

と笹平は問う。渋谷で詩応の姉が殺された日、首都タワーで黒薙は同級生に打ち明けた。オフレコだと釘を刺した、美桜の死で流雫を揶揄う本当の理由だった。

 自分の目が届かないところで、他の奴らが何か言い出さないか。最悪な方向に転がるのは避けたい。

「ああ。……お前、まさか担任に話してないだろうな?」

と問うた黒薙に

「話してないわ。あんな真実を聞かされると、言うワケにはいかないでしょう?」

と答えた笹平。あの確執が看過できないと、一度は担任に話をする気でいた。

 しかし、黒薙の話を信じて話さないと決めた。だが、離れた。黒薙にとっては、引き離された感の方が強い。だから、念のため問うた。

 ……笹平は言っていない。それは間違っていないだろう。ならば、誰かが告げ口したのか。あの2人を見ていられないから、引き離した方がいい、と。

 そして、確執の張本人はこれからの1年を誰より心配していた。……東京に恋人がいるとは云え、この河月創成高校では孤独な少年が、他の生徒から揶揄を受けた時に耐えられるのか。誰よりも死に対してナーバスな相手に

「お前が代わりに死ねばよかった」

と云う言葉が、どれほど突き刺さるのか。知らない連中が多過ぎる。

「……帰るか」

と言った少年の隣に並ぶ笹平は

「……平和だといいけど、この1年……」

と言う。……東京の恋人より近くにいるのに、何の役にも立たないことへの苛立ちを滲ませていた。

 流雫は、黒薙や笹平を助けてやれる。しかし、2人は流雫を助けてやれない。助けてやれるのは、2人が知る限りこの河月にいない少女だけだ。見守ることしかできないが、黒薙は河月にいる限りそれさえもできない。

 だから、彼が二度と銃を持たなくていいように、平和を願うだけしかできない。……それが黒薙にはもどかしい。


 天国から地獄に突き落とされたような週末を味わった澪が通う学校も、始業式が終わった。結奈や彩花とは、結局3年間同じクラスで過ごすことになった。

「今年も一緒だね」

と笑った彩花に微笑む結奈。澪もそれにつられた……ハズだが、その異変を2人は逃さなかった。

「……澪?」

と結奈がその名を呼ぶと、彩花が

「……流雫くんと何か有ったの?」

と続く。澪が何処か思い詰めたような表情を浮かべるのは、テロに遭遇した時か流雫のことで何か起きた時だ。答えは前者なのだが、厳密には違う。

 「流雫とは、変わらずよ」

と言った澪に、彩花は

「……変わらずって、キスから先が未だってこと?」

と耳元で囁く。

「な……!?」

とだけ上擦った声を上げて、澪は轟沈した。

「彩花……だから澪は……」

と頭を抱えた結奈は、しかしそう戯れても澪が沈んだままであることが気懸かりだった。

「……じゃあ……」

とだけ言った彩花は、そこで言葉を切る。多分……触れてはいけない。2人の脳裏を過ったのは、福岡での出来事だった。

 ……修学旅行の最中に、暴動に遭遇した挙げ句結奈に銃口を向けられた。同級生を助けようとした戦士然とした目付きと、スマートフォン越しに流雫に向かって泣き叫ぶ声……。自分といるから、結奈と彩花が煙たがられている……澪はその現実への贖いを求めていた。

 だから、それ以上触れようとはしなかった。大好きな同級生のタブーに、土足で踏み入る真似は避けたかった。

 そして、銃を持つことや人を撃つことがどう云うことなのか。映画スターのように華やかではなく、あまりにも生々しい現実を突き付けていた。だから、澪の前でそのテの話はタブー……何時しか、それが2人の認識だった。

 「……2人は、何も知らない方がいい……」

と、澪は少し震えるような声で言う。

 ……あの日、父が家を出た後にテレビで流れたニュース速報で、澪は何が起きたか知った。……通り魔じゃないことは、流雫も澪も速報の時点で辿り着いていた。

 ……流雫と澪が、夜景と云うイルミネーションの祝福を受けながら一線を越えて、1年の節目。楽しかった1日の最後、新宿駅の山梨方面のプラットホーム上で、流雫と澪は軽くキスを交わした。くすぐったい余韻は、何度経験しても物足りなくなる。しかし、それも父親のスマートフォンの着信音で終焉を迎えた。

 「……澪」

とだけ名を呼んだ2人は、同級生の背中に触れた。……代わってやれるものなら、そうしたい。

「……あたしは、平気だよ」

とだけ言った澪の、取り繕った微笑みは寂しさを滲ませていた。

「……平気じゃない」

と彩花が返し、それに結奈が続く。

「……平気なワケがない。澪は特別じゃない。ボクたちと同じ。普通に生きていればいいだけなんだ。なのに、どうして……」

……普通に生きていればいい。1年前まで、そうだった。しかし……。

 ……疫病神の恋人。その言葉が浮かんだ。流雫のことは、決してそう思っていない。ただ、自虐として放った言葉が、引っ掛かっていた。

 その3人に近寄る中年の男。それに最初に気付いた彩花は

 「……あ、澪の……」

と声に出す。俯いた澪が顔を上げると、そこには父の常願がいた。

「迎えに来た。署で話が有る」

と言ったベテラン刑事の父親に、澪は頷いた。何のことなのか、一人娘は判っている。

「悪いが、澪を借りていくぞ」

と言われた同級生2人……そのボーイッシュな方は思わず口にした。

 「……やはり、澪は……」

「……君たちにも言えないことだ。……本当は、此奴も無関係であるべきだが……」

と言った父に、澪は

「……行こう……」

とだけ言った。詩応のことなら、早く話を終わらせたい。

「と云うワケだ、悪いな」

と言った常願に澪が続く。

「また明日ね」

「澪。……明日ね」

と彩花は返す。……慕う同級生に何と言ってやればいいのか、どうすれば澪の力になってやれるのか……。答えが出てこない。

 結奈は彩花の手を握り

「行こう」

と言った。心配も大きいが、澪を信じるしかない。……何に直面していようと、どれだけ苦しくても、澪は立ち上がってみせると。


 ペンションに帰り着いた流雫が、ケチャップとチーズだけの手製のピザトーストを頬張りながらコーヒーを啜っていると、インターフォンが鳴る。応対した親戚からは、流雫相手の客人だと言われた。

 「やあ」

ロビーに通された男は、顔馴染みのシルバーヘアの少年を見て手を上げた。彼に

「……弥陀ヶ原さん」

と名を呼ばれた刑事は

「……名古屋でのことで話が」

と言う。

「伏見さんのこと……?」

と問うた少年に、弥陀ヶ原は

「ああ」

と言って、向かい側に座ると手帳を開く。

 ……こうして流雫を見ていると、彼も元々は普通の高校生なのだと思い知らされる。

「……思い当たる節は無いかい?」

と弥陀ヶ原は問うと、流雫は残ったピザトーストを平らげて言った。

 「……通り魔じゃない……伏見さんを狙っていた……最初から……」

「でも自由席だぞ?」

「だからできた」

と流雫は言った。弥陀ヶ原は首を傾げる。

「……?」

「……伏見さんの席って……?」

と問うた流雫に、弥陀ヶ原は

「1号車の最前列、2列になった方の通路側だ」

と答えた。……そうか。流雫は10秒だけ間を置いて、語った。

 「……東京で乗って、一度に鞄を置く。そして品川で、伏見さんが近付けば席を空けてやって、座らせる」

「……もし他の人が座れば?」

と弥陀ヶ原は問う。混んでいたのなら、それは有り得る。

 「その時は、最悪名古屋駅で追う。寧ろ、名古屋駅で狙う前提だったかもしれない。あの混雑する駅なら、伏見さんの足でも走れない。人を押し退けて追い付ければ……。でも、伏見さんが隣に座ったから、新幹線の車内で……」

「……逃げられると思ったのか?」

「思ってないから、伏見さんが座った後で酔った。酒に酔って覚えていない、で済むとは思っていない。最初から、急性アルコール中毒を起こして死ぬ気で……」

と言った流雫に、弥陀ヶ原が

「自分を口封じ……」

と言葉を被せると、少年は頷く。

「自分自身を口封じして、裏の関与を隠すことができれば……」

「……無茶苦茶だ。そもそも、何故そこまで……」

「口封じ」

と、今度は流雫が言葉を被せる。

 「……旭鷲教会に纏わる真実を、伏見さんは知っていた……。例えば……太陽騎士団を乗っ取ろうとしている事実や、その背後……」

「……渋谷の大教会から、僕たちを追っていた。伏見さんを迎えに行くのは、澪のアイディアだったけど、それは正解だった。ただ……その後も追い回されていたとすれば……」

と流雫は続ける。そして、今の最大の疑問を刑事にぶつけた。

 「……どうして、伏見さんが乗る新幹線を知っていたのか……。直前で購入した自由席なのに」

「……どうしたと思ってる?」

「流石にそれは……」

そう言った流雫が、軽く逸らした目線の先にはキーケースが有る。ペンションの鍵と、ロードバイクの頑丈なロックの鍵を収納してあるネイビーのそれには、黒い正方形の物体が有る。

 忘れ物トラッカーと云うアイテムで、ブルートゥースとGPSを使って、スマートフォンからトラッカーを鳴らすことで、忘れ物の場所を特定すると云うもの。そして、このトラッカーは紛失報告をすると他のユーザーと共有され、誰かのスマートフォンに反応するとトラッカーが何処に有るか特定できると云う高性能なものだ。

 「……これの応用……?」

と流雫は呟いた。

 その時、弥陀ヶ原のスマートフォンが鳴る。

「はい。……こっちも、流雫くんの取調中です。……スピーカーでやりますか?」

と言った刑事は、端末の背面に取り付けられたリングを立てて置いた。画面はそのままだが、奥から室堂父娘の声が聞こえる。

 「澪?」

「流雫……!」

恋人の声に返した澪は、先刻より表情を穏やかにした。

「……そっちは?」

と先輩刑事から問われた弥陀ヶ原は

「何故同じ新幹線に乗れたのか。そのことについて……」

と答える。すると常願は、今度は流雫に問うた。

「……流雫くん、……できると思うか?」

流雫の答えは

「……それなりに人がいれば」

と答えた。


 「……それなりに人がいれば」

その言葉に、澪は父の隣から

「流雫?……どうやって?」

と問う。普段の雰囲気を取り戻したような恋人の声に、安堵の溜め息を軽くついて、流雫は答えた。

 「忘れ物トラッカー。犯人が予め用意して、伏見さんに持たせる。そして紛失報告を出して、トラッカーを共有モードにする。名古屋へ向かう新幹線、都内から乗れるのは東京駅か品川駅……」

その言葉に、澪は目を見開く。

「じゃあ……!……品川に詩応さんがついた段階で……犯人は新幹線に乗る準備をした……」

「うん。名古屋まで乗る人が選ぶのは、殆どが最も速い種別……きぼう号。それに絞って、1号車の最前列に座る……」

と言った流雫に、澪は疑問をぶつける。

「どうして1号車なの?」

 「進行方向で一番端。止まるまでに、必然的に全ての乗車口を見ることができる。仮に別の車両のところにいるなら、名古屋駅で追えばいい。襲えれば、ホームでもコンコースでもよかったんだろう」

その答えに、澪は更に疑問をぶつけた。

「もし、いなければ?」

 「予備の実行犯に連絡する。この列車にはいないと。そして降りて、東京駅へ折り返す。その間別の犯人が次の列車で同じことをする。その繰り返しで、実行犯の誰かが伏見さんと同じ列車に乗り合わせるまで続く……」

「そこまでする……必要が有るの……?」

澪は、思ったことをそのまま口にした。そこまでして、詩応さんを……?

「……伏見さんだから……」

その答えに、澪はふと思い出す。

 「……やっぱり……詩応さんから送られた音声データが……」

「音声データ?」

と常願が問う。初耳だった。

 「……詩応さん、切られる前の日、新たな総司祭と話してたの。多分、あたしに送ったのは自分に何か起きた時のため……。その時点で、既に何か起きると思ってたんだと……」

と父親に答える恋人の言葉に

「……それが、まさか帰りの新幹線でとは……」

と続けた流雫は、その場で頭を抱える。……あの音声を聞いていながら、何故手を緩めたのか……。

 「……僕が……連中の動きを読めていなかったから……」

その言葉に、澪は無意識に反応した。

「流雫は……流雫は悪くない……」

少女の声は震えていた。

「あんなの……予測なんてできない……」

 最愛の少年の、悲しみから生まれる自分への苛立ちに触れた。そして、自分たちの予想すら超える脅威に戦慄する。詩応が殺されかけたことは、一見無関係な高校生2人の心に、大きな爪痕を残した。

「……そこまでして、隠したい真実が有る……」

と、流雫は言い……そしてこの数日間思っていたことを吐いた。

 「……旭鷲教会は……太陽騎士団を乗っ取る……。ただ……それは恐らくスタートライン……」

その言葉に、澪が

「……目的じゃない……?」

と言葉を被せてくる。流雫は恋人には見えないが頷いた。

 「……引っ掛かる。何故連中が、レンヌの教会まで狙ったのか。……アルスは、レンヌと新宿の事件を機に、血の旅団が旭鷲教会との絶縁を決めたと言ってた。でも、寧ろ旭鷲教会は最初からそうなることを狙って……」

「わざわざフランスで……!?」

と言った澪に、流雫は答える。

「……本部を置く、教団にとっての祖国で攻撃する……。相手に宣戦布告するなら、それが何より効果的……」

 「……連中は何故、そこまでするんだい?」

と弥陀ヶ原が問う。質問攻めになっている感がするが、仕方ない。

「……教団のことが明るみになると、マズいことになるから。……そうでもないと、日本の組織のことなのに日本からは閲覧できないなんてこと……」

「……待て」

と、常願が流雫の言葉を遮る。……聞き捨てならない言葉を聞いたからだ。

「え?」

「日本から閲覧できない……?」

「……はい」

と流雫は答え、アルスと最後に会った日のことを話し始めた。

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