2-2 Forbidden Contact

 最愛の少年が日本を発って5日。春休みだが夜更かしせず、普段通りに起きた澪は、少し都心に出ようと思った。同級生2人……結奈や彩花と遊ぶのは明日だが、その時に疑問を持ち越さないようにと思ってのことだった。そのためにも、今日1人で動きたい。

 デニム調の服に着替えた澪は、列車に乗って渋谷へ向かった。動きやすさ最優先だけにファッションセンスは二の次だが、唯一のこだわりは流雫を感じていられるブレスレットだった。

 ダークブラウンのセミロングヘアの少女を乗せた列車は、20分ほどで渋谷に着いた。澪が1人でこの場所に降り立ったのは、1年前……慰霊碑に初めて足を運んだ日だった。美桜と云う存在を意識した澪は、彼女の死が自分と流雫を引き合わせるきっかけだったことを思い知らされた。

 それから1年。今では寧ろ、流雫の隣に立つ、彼に最も近い存在であることを誇りに思う。それが、彼女への弔いになる……澪はそう思っていた。

 雲一つ無い快晴だが、肌寒さを感じさせる渋谷駅前は、平日ながら相変わらず喧騒に包まれている。その一角、ハチ公広場の真ん中に立つ少女が目に止まる。ダークブラウンのショートヘア、空を仰ぐ瞳の色はターコイズ……。

 「……詩応さん……?」

澪は思わず声にした。小声だったから聞こえていないだろうが、ボーイッシュな少女はふと澪に向け、少し驚いたような表情をした。

「澪……?」

 目が合い、軽く頭を下げた澪に詩応は近寄りながら

「久し振りだね」

と言った。澪は

「ええ!」

と返し、問うた。

「ところで、今日はどうしてこっちに?」

時々メッセージは送り合っているが、東京に来るとは一言も聞いていなかった。

 「教会の行事でね。真は名古屋にいるけど」

と詩応は答えた。

 渋谷の日本本部大教会で行われる、太陽騎士団の若者向け合宿行事。教会に隣接した宿舎を使ったもので、詩応は今年初めて出席した。昨年までは陸上部の活動で忙しかったが、今年からはその柵も無い。

 期間は1週間ほど。今年は、年明けからの事件を受けて厳戒態勢を敷きながら実施する。とは云え、宿舎と教会を往復するだけではなく、自由時間も割り当てられている。

 後輩で恋人の真は、名古屋に残っている。合宿行事自体は任意だから、行かなくてもいいし詩応も当初はその気は無かった。ただ、今年に入って気が変わった。応募書類を出したのは1月中旬……〆切直前だった。

 「そう云えば、今日流雫は?」

と詩応が問う。彼女にとって、澪は流雫とワンセットのイメージが強い。

「来週までフランスに」

と澪は言った。

 彼が両親と離れて日本で暮らしているのは、彼自身あの名古屋の日に与太話として語っていた。詩応もそのためだろう、とは容易に想像できた。

「しかし、流雫も大変だね……日本とフランスを行ったり来たりなんて」

と詩応は言う。

 宗教難民に近い形での移住、とは流雫も語っていない。それは澪だけが知る秘密だった。

「流雫は案外、楽しんでるかもしれませんよ?普通、こんなに海外に行くなんて経験しないと思うし」

と澪は言った。

 事実、彼が帰郷を楽しんでいることはメッセンジャーアプリで送られてくる写真を見ても判る。しかし、そもそもの理由が理由だ。澪には、それ以外に取り繕う言葉を見つけることができなかった。

 「……ところで、アタシ東京はほぼ初めてなんだ。何処か澪のイチオシって場所、有る?」

と、話を変えようとした詩応は問うた。

 ……連れて行くと面白そうな場所は、定番過ぎるが知っている。

「定番でもいいのなら、あたし案内しますよ?」

そう答えた澪に、ボーイッシュな少女は

「いいの?」

と問う。流雫や同級生以外には総じて丁寧語の少女は

「今日は1人ですし、予定も無いので」

と答えた。

 教会には夕方に着けばいい。そして、澪と少し話したい。メッセンジャーアプリでは伝わらないニュアンスも有る。そして彼女の地元とは云え、行くと云う連絡もしていないのに偶然再会した。これもソレイエドールの導きなのか。そう思いながら、詩応は

「じゃあ、甘えよっかな」

と返し、微笑んだ。


 シブヤソラ。超高層ビルの屋上に位置する、地上230メートルの屋外展望台。高さでは僅かに名古屋、ミッドランドプロムナードの方が上だが、大きなアトリウム状のそれとは異なり完全に屋外なのが特徴だ。

 1年近く前、流雫が故郷から日本に戻ってきた日、この場所で流雫と澪は一線を越えた。今この時が止まっても本望、とさえ思えるほどの幸せが降り注ぐのを感じた。

 流雫とは何度か上がったが、彼以外の相手は詩応が初めてだった。

「面白いね、此処」

それが、何にも遮られない展望台のヘリパッドに立ち、眼前に広がる景色を目にした詩応の最初の反応だった。

 すぐ近くのハンモックに寝そべって、空を眺めることだってできる。ただ一方通行の回廊を下りながら景色を眺めるだけのミッドランドプロムナードより、断然面白い。

 「景色もすごいし、思い入れも強くて……あたし、この場所が大好きで」

と言って微笑んだ澪は、ふと空いていたジオコンパスに立つ。

 渋谷を中心に正距方位図法で描かれた世界地図で、枠外には主要都市までの距離が刻まれている。

 パリまでは330度の方向に9700キロほどだから、レンヌまでは約1万キロ。その方向に、室堂澪にとっての最愛の少年がいる。

 ……あの日この場所で、パリの方角を見つめながら夜空に手を伸ばしていた流雫。何を掴みたかったのかは、今でも判らない。

 ただ、微かに滲んだオッドアイの瞳を見つめた澪は、その手に触れ

「あたしは、流雫といっしょだよ」

と囁いた。それが一線を超える引き金だった。

 ……あの日の恋人と同じ方向に向いて立つ少女は、不意に少しだけ切なさを感じる。あれから1年、早過ぎると思えるのは色々なことが起き過ぎたからか。

「澪……?」

とその下で自分の名を呼んだ少女に振り向き

「……だから思うんです。この景色をまた眺めるためにも、テロなんかで死ぬワケにはいかない、と」

と言った。

 その言葉の陰に、流雫の存在が隠れていることは詩応には判っていた。同時に、その表情は頼もしげで……しかし悲壮感を色濃く滲ませていた。

 流雫も澪もそうだ。名古屋で共闘したから判るが、絶対に犯人に屈しないと云う気概の裏に、小さくない悲壮感を隠している。あの強さは諸刃の剣……。ただ、2人をバカにする気など、詩応には毛頭無い。

 銃を持つのに必須となる資格講習では、扱い方はごく基本的なことしか学ばない。それなのに、いざ求められる戦い方は宛らアクション映画のヒーローのそれだ。少し判断を間違えただけで自分が殺される、と云う悲壮感を持たない方が、寧ろどうかしている。

 「この景色を、流雫と眺めるために?」

と、詩応が隣で言うと、澪は瞬間的に顔を紅くした。

 澪は、自分から流雫への愛などを口にするのはどうってことないのだが、他人から言われることには耐性が無い。何度も、結奈や彩花、時には流雫にさえ不意打ちされ、撃沈してきた。そしてたった今、4人目のスナイパーが生まれた。

 澪は黙ったまま頷いたが、その判りやすい反応に詩応は苦笑いを浮かべた。

 ……澪は正義のヒロインになりたいワケじゃない。ただ、刑事の娘と云う立場が生来の正義感に拍車を掛けている。全ては最愛の少年と2人で生き延びるため。

 何度も遭遇したテロとの戦いを武勇伝にしようとしない、それだけで詩応は澪に親近感が持てた。

「澪のそう云うとこ、好きだな」

と詩応は言い、微笑む。澪もそれに笑って返した。

 ……ソレイエドールの導き。そう思えば、今日澪と偶然再会したこと、それも導きによるもの。あの名古屋の2日間は異常でしかなかったから、女神が平和な1日を授けようとした……詩応はそう思っていた。


 一度渋谷を後にした2人は、秋葉原に行くことにした。サブカルチャーの街として有名だが、乗換に便利と云う土地を活かしてかビジネス街としても知られている。その一角、パンケーキが有名な店に2人は入る。澪は何度か立ち寄ったことが有り、流雫にとっても好きな店だった。  

 ランチタイムに最適なようにアレンジされた、ダッチベイビーと云うタイプのパンケーキと、甘めのカフェラテを口にすると、澪は感嘆の溜め息をついた。今度は流雫と、と思いながらも、少女はここぞとばかりに話を切り出した。

 「そう云えば、あの手帳のこと……」

「……そうくると思った」

と返した詩応は、一度目を細めて言った。

「アネキは、旭鷲教会が怪しいと辿り着いていた。ただ、澪が言ったことが合ってると思ってる」

「何故内部調査に乗り出さなかったのか、先手を打たなかったのか。……そうしてはいけない理由が有ったからか」

そう続けた詩応に

「サイレント・インベージョンが既に進んでいるから……ですか?」

と問うた澪は、先刻の年頃の少女らしさを消し、大きな……大き過ぎる謎に挑む戦士のような眼差しをしていた。そして、やはり味方に付ければ頼もしいが、敵に回すと想像以上に厄介だろう……詩応はそう思った。

「だとすると厄介だ……」

と言った詩応に、澪は続いた。

「……太陽騎士団の崩壊が目的、でもそのためだけに……ここまでするものなの……?」

 ……流雫は、詩応の姉の手帳の件を知らない。しかし、このことは流雫に話すワケにはいかない。第三者のプライバシーにも関わる、と澪は思っている。

「他に、何か理由が有る……とでも?」

と問う詩応に、澪は

「……有りそうな気がします……」

と答え、少しずつ冷めていくラテの水面を見つめた。

 その理由は、これから少しずつ明らかになっていくだろう。それが何だとしても驚かない……、刑事の娘はその覚悟を求められている気がした。


 流雫は父、宇奈月正徳のロードバイクを借りてレンヌの中心部に出ていた。日本で起きていることに関連した資料を探して、図書館に行こうと決めていた。

 その途中、小さな教会がアンバーとライトブルーのオッドアイの瞳に映った。ドアに飾られた紋様は八芒星……太陽騎士団のそれだった。

「……此処にも……」

と流雫は呟いたが、そもそもフランスで生まれた宗教団体だ、その各地に小規模ながらも教会が有ったって不思議ではない。

 「……此処が気になるのかい?」

と、誰かが流雫に向かって言った。

「え?」

と、流雫はその少年に顔を向ける。

 「……此処は太陽騎士団の教会だ。小さいながらも立派だろ?」

と言ったブロンドヘアの少年が、その信者だと流雫はすぐに判った。

 ブロンドのショートヘア、ブルーの瞳。ブラウンのフランネルシャツにオリーブ色のジャケットとネイビーのデニム。流雫のように目立ちはしない。

「……太陽騎士団がどんなものかは、一通りながら……」

と流雫が言うと、少年は

「……だが、信者ではないのか?」

と問う。流雫は

「……僕は無宗教だから」

と答えた。

 その間を逃さなかった少年は

「何も信じていないのか」

と更に問う。それが悪いと云うような問い詰めにも聞こえかねないが、流雫は

「……神だの何だの、よく判らないから……」

と答え、ブルーの瞳から目を逸らし、鉄製の紋様を再度見上げる。

 ……それが、特に敬虔な信者に対して最も当たり障り無い答えだと、ルナは思っていた。

 「……少し話さないか?勧誘したりはしないから」

と少年は言う。

 ……彼は単なる信者だと思う。しかし、こう云うのも功徳を積むための小さな社会活動の一環だと思っていても不思議ではない。

 ……だとするなら、少し話してみても悪くない。図書館では手に入らない知識が得られる……かもしれない。

 流雫は頷いた。


 市内を流れるヴィレーヌ川に架かるブルターニュ橋、その欄干に肘を突く2人。

「……宗教迫害か」

フランス人の少年は、そう言いながら少し濁った水面を見つめる。

 流雫は流れから、自分の過去と今日本で何が起きているのか、簡単に説明した。それに対する彼の最初の答えがそれだった。

 「……俺はアルス。君は?」

アルスと名乗った少年に、日本から帰ってきた少年は

「ルナ」

と名乗り返した。

 アルス・プリュヴィオーズ。流雫と同い年だが、11日彼の方が早く生まれた。

 しかし、その7月14日はバスティーユ襲撃の日。彼がフランス革命を機に生まれた教団の信者であることが、偶然とは云えそれが恐ろしいと流雫に思わせる。尤も、アルスにとっては偶然テネイベールと同じオッドアイの持ち主と云う部分で、ルナの方が恐ろしかったが。

 「……ところで」

と流雫が話を変える。

「何だい?」

「血の旅団……何者なんだ?」

流雫が問うた瞬間、アルスの眉間に皺が寄るのが判った。

「……害悪だ」

とだけ、フランス人は吐き捨てるように答える。

 それが太陽騎士団の信者にとって、至極自然の反応だと思った流雫が

「やはり、太陽騎士団の信者にとっては……」

と言うと、アルスは

「……誰が太陽騎士団だと言った」

と言う。

 ……初めて顔を合わせて十数分、確かに今までの会話で彼が、自分がそうだと言ったことは無い。しかし、それはつまり……。

 目を見開いた流雫は

「まさか……」

と小さな声を上げ、無意識に気を張った。

「……血の旅団だ」

ブロンドヘアの少年の告白に、流雫は脳が痺れる感覚に襲われる。動揺を禁じ得ないまま

「……ただ、今害悪と……」

と言ったハーフの少年に、アルスは

「全ての信者が同じワケじゃない」

と諭すように言った。信者と言えど人間だから、それこそ十人十色。それは流雫も判っている。

 しかし、あまりにも予想外のことで、頭の整理が追いついていないのが現実だった。

「……ノエル・ド・アンフェル……パリの同時多発テロ。それ以降、血の旅団は一部の国で活動を禁じられた。だが、フランスでは健在だ」

とアルスは言った。


 2020年、感染症のパンデミックを機に、一部の司祭が太陽騎士団への態度を懐柔させようと云う動きが出た。

 教団内の過激派が、破門を機に戦女神ルージェエールに対する独自解釈をベースに独立と云う形で結成したのが、血の旅団だった。それ故、太陽騎士団は源流でありながら敵だ。

 しかし、パンデミックは文字通り世界を混乱に陥れた。その克服のためには、敵対視を中断して緊急的に手を組むべきだとする意見が出た。そして、懐柔への賛否を巡って血の旅団の内部が紛糾する事態に陥った。

 金曜夜の虐殺、と呼ばれる懐柔派の司祭全員の辞任と脱退を経た血の旅団は、しかし教団の継続性を鑑みた結果、手を組まないまでも攻撃を避ける方向に転換せざるを得なかった。

 政教分離原則ライシテは中東の宗教を意識しているが、その脅威にも目を向けなければならない中で、太陽騎士団も血の旅団も、或る意味では転換期を迎えようとしている……。


 「君の国の宗教……旭鷲教会と云うんだっけ?あれは、血の旅団が最も過激な頃の路線を継承しているようだな」

とアルスは最後に言った。フランス人の口から出てきた名前に、流雫は再度目を見開き、問う。

「旭鷲……どうしてその名前を?」

「フランスでも今年に入って、ニュースで耳にするようになった。連中は、太陽騎士団を狙ってるんだろう?それも、血の旅団より過激だ」

とアルスは答え、続けた。

「だが、一見して何が目的なのか判らない」

その言葉に、流雫は

「……それは僕が知りたいぐらい……」

と答える。

 そして、オッドアイの瞳でブロンドヘアの少年を見つめる少年は言った。

「そもそも、旭鷲教会が何者か……」

「クレイガドルアを崇める過激派」

そう答えたアルスに、流雫は

「ゲーエイグルじゃないのか……?」

と呟く。その声は彼には聞こえていたらしく、すかさず

「ドイツ語読みだ」

と答える。

 太陽騎士団の経典上の悪魔ゲーエイグル、そのドイツ語読みがクレイガドルア。しかし。

「何故わざわざドイツ語にしたのか……」

とシルバーヘアの少年は零した。

「さあな。俺にも判らん」

とブロンドヘアの少年が返すと同時に、オリーブ色のジャケットのポケットからスマートフォンの通知音が鳴った。

「……彼女が待ってる、行かないと」

と言ったアルスに、流雫は

「……サンキュ、アルス」

と答える。彼はオッドアイの瞳を見ながら

「……折角だし、連絡先教えろよ」

と言った。

 澪と連絡しているメッセンジャーアプリは日本国内のユーザーに限定されている。だから流雫は、登録だけして見るだけ……所謂ROM専になっているSNSアカウントを教えた。一応それでも音声通話に似たことはできる。

「……これも、ルージェエールの導きだったりしてな」

と言ったアルスに、流雫は

「……そうかもね」

と言って笑った。


 テネイベールに似た目のミステリアスな少年。それが、アルス・プリュヴィオーズにとってルナ・クラージュのファーストインプレッションだった。

 ミドルネームが禁止されている日本ではルナ・ウナヅキが正式。しかしフランスへの愛国心が強いからか、海外で公的でない場合はルナ・クラージュ・ウナヅキを使いたがる。そしてそう名乗ったハズだったが、アルスはクラージュで覚えていた。

 ……フランス語で勇敢を意味する言葉。その名の通り、テロに遭遇しても勇敢に立ち向かっている……フランス人の少年にはそう思えた。

「アルス!」

そう呼んだ赤毛の少女は

「1分遅れ」

と言った。アルスは

「ちょっと珍しい奴と出逢って、話し込んでた」

と待ち合わせに僅かに遅れた理由を答える。

 元々、あの通知は彼女との待ち合わせ時間を予告するアラームだった。デートと云うか、少し会う約束をしていた。

「多分、アリシアも聞けば珍しいと思うほどだ」

とアルスが言うと、アリシアと呼ばれた少女は

「珍しい?」

と問う。

 アリシア・ヴァンデミエール。アルスと同学年で彼の恋人。幼馴染みから発展した関係だ。

「……日本人で、旭鷲教会のテロに遭遇してる。本人は、無宗教と言ってるがな」

とアルスは答えた。

「日本人……?……本当に無宗教なの?」

とアリシアはブルーの瞳を見ながら返す。気になることが多い。

「……そう言ってるからな。それにしたって、太陽騎士団や血の旅団について、少なからず知っていた」

「血の旅団まで……」

「ただ、教団を貶めるような言葉は無かった。それだけで、少なからず好感は持てる」

と言ったアルスに、アリシアは

 「……疑うワケじゃないけど、話を鵜呑みにはできないわね」

と、遠回しに彼に釘を刺した。


 流雫は当初の予定だった図書館に寄った。探したい資料は簡単に見つかって、それに目を通す。

 ……確かに、突然知り合った少年アルスが言っていた通りだった。太陽騎士団に対し、血の旅団は少しだけ態度を懐柔させている。

 しかしそれは、旭鷲教会に関する疑問を更に深めていく。流雫は1時間書物と格闘した後で、昼過ぎにアラームをセットした。

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