1-12 Selfish Bystanders
「どうして、ホログラムが……」
その言葉に、男は怪訝な表情を浮かべる。貼っていないことがバレたような焦燥感は見られない。開き直っているようにも見えない。そして、問うた。
「何を言ってる?」
その瞬間、流雫の視界の端で、残る人質に自動小銃を向けていた男の顔色が変わるのが見えた。
……銃を持つための資格を得る講習でも強調される基礎知識、弾倉のホログラムについて知らない。それは、持つための講習を受けていないことを意味する。つまり、資格を持っていないから、銃を入手することはできない。
自分で入手できないなら、あれは自分の銃ではない?誰かが違法銃を与えた?……誰が?旭鷲教会か……?
「そう云うワケか……」
と流雫は言った。
「……何?」
「名古屋の事件も、ホログラムが無い違法銃が使われた。そして今も……。……銃の流通元は同じ……?」
その言葉を遮ろうと、
「黙れ!」
と、自動小銃を握った男は叫び、思わず少年に銃口を向ける。
「旭鷲教会の仕業だと云うのか!名誉毀損だぞ!!」
……掠っている程度だが、外したワケじゃない。その手応えを掴んだ流雫は、叫びにも銃口にも怯まず言った。
「翠と碧の戦女神を殺めた破壊の女神は、経典上の女神で誰よりも憎まれ忌まれるべき存在……。しかし、裏切り者呼ばわりするのは、裏切られた悪魔ゲーエイグルだけだ。奴を崇拝する連中でなければ、テネイベールを裏切り者だとは言わない」
……辛うじて正気を保っている2人の人質は、しかし犯人が蔑む少年から目を離すことができない。目の前の惨劇から目を逸らすにはそれしかない、それも有る。しかし、次から次へと溢れさせる太陽騎士団にまつわる知識量に、軽く圧倒されていた。
……宗教オタク、最早その領域ではない。この男は何者だ……?
その謎が、この教会を支配する。そして、再度訪れた数秒間の沈黙を破るべく
「……お前……まさか太陽騎士団の……!」
と声を上げた中年の痩せた男は、人質だった。銃を持った2人が、声の主に振り向く。
「……え?」
その様子に、流雫は小さな声を上げ、そして思い出した。1年前に爆破され、そして建て直されたこの地味過ぎる河月の教会の基本的なことを。突然銃を突き付けられたことで忘れていたことを。
「……此処、平日は大体無人だったハズじゃ……」
できるものなら、学校を飛び出してでも河月へ行きたい。……後で誰から何を言われても、知ったことじゃない。
流雫のことだから、絶対何が起きても生き延びる。そう信じている。しかし、この目で安否を確かめなければ、安心できない。
「……行きたい」
そう呟いた澪のスマートフォンには、運行情報の通知は届いていない。……今なら間に合う。泣いてる場合じゃない。
澪は踵を返し、担任教師が教壇に立つ教室に戻る。列の真ん中、一番後ろの席に戻った女子生徒に担任が問う。
「室堂、どうした?」
「ちょっと具合が……帰りたいんです……」
俯いて小さめの声で言った女子生徒は、同級生2人の目線に気付き、僅かに一瞥した。不安そうな表情に、澪はどう返せばいいのか見つけられない。
「……そうか。気を付けろよ」
とだけ言った担任に無言で頭を下げて、コートと鞄を手に教室を出る澪。それと同時にスマートフォンが震えた。靴を履いて開いた画面には
「河月の教会で立て篭もり」
とニュース速報の見出しが表示されていた。見出しだけを一瞥した少女は
「流雫……」
とだけ呟き、学校を後にした。
山梨方面の特急列車は午前中から運休を決めていたが、快速列車については何の情報も入っていない。……行ける。そう思った澪は、乗換駅の新宿で停まっていた快速列車に飛び乗った。
10分遅れの快速河月行、そのロングシートの端に座った澪の耳に、雪の影響でこの列車が運転見合わせ前の最終列車になるとの放送が入る。澪が安堵の溜め息をつくと同時にドアが閉まる。後は、遅れても河月まで走れることを願う。
……褒められないことぐらい、判っている。結奈や彩花も呆れているだろうか。ただ、あのまま学校にいても授業なんて上の空なのは判りきっていた。
澪は、鞄に忍ばせていたブレスレットを着けた。それだけで、流雫の存在を感じていられる。
「生きてて……」
とだけ、誰にも聞こえないように呟いた少女は、レールの繋ぎ目を踏む鉄道特有の走行音をBGMに、目を閉じた。
「……此処、平日は大体無人だったハズじゃ……」
そう言った日本人らしからぬ見た目の少年に、人質と犯人が揃って怪訝な表情を向ける。
1年近く前の、あの教会爆破事件の時も教会自体は日頃から無人だったと報道されていた。だから、流雫の懸念に反して犯人以外の死者はゼロだった。
「時々、教徒らしき集団が教会に入っていくのを見掛ける。ただ、普段は人の気配は無いし、照明も点いていない」
と流雫は言った。
自転車通学の場合は、駐輪場に直結した別の出入口を使う。それでも、通学時には教会前を通る。それが流雫にとっての最短ルートだからだ。
ただ、その登下校の時間帯に教会に人が出入りしているのを見たことは殆ど無い。見たことが有るのも、昼休みや午後の授業中に外を眺めている時に偶然、と云う程度だ。午前中に見たことは無い。
こう云う、午前中に教会が開かれる時も偶には有るだろう。ただ、流雫が今まで見掛けることが無かっただけだ。……だが、それで説明が付かない事が有る。
「……お前……まさか太陽騎士団の……!」
と人質が上げた言葉。
こう云う言い方をするのは、自称宗教オタクが太陽騎士団の信者であっては困る存在だから。この連中にとって不都合だからだ。僕が信者であることが不都合、つまり信者ではなく……。
「人質じゃない……!?」
そう呟いた流雫は目を見開く。
そして、気になる事がもう一つ。今此処にいるのは、死体になっているのも合わせて流雫以外に6人。……授業中に窓から見たのは10人ほど。この6人が全員そこに混ざっていたとして、残りは……?
「くそっ!」
と声を上げた男は自動小銃を人質に構えた。いや、人質に見えるグル……か?
リズミカルな銃声が壁に反響し、その余韻を残す。それと同時に、痩せた男の身体に十数もの穴が開き、その全てから血が噴き出す。
「おぉ……っ……!」
と小さな呻き声を上げて、前のめりに倒れた。既に事切れたのか、微塵も動く気配は無い。
「使えん奴だ……」
と言いながら血塗れの遺体を見下す男は、すぐに流雫に目を向け、銃口を突き付けて続ける。
「……射殺ごときで気絶するわ、ボロを出すわ……ロクな奴はいないのか……」
「まさか、此処にいるの全員……!」
そう反応して身構えた流雫に、男は
「そこで転がっている奴以外はな」
と、最初に射殺された男を銃で指しながら答える。
……その言葉が正しければ、5人はグルだった。そして1人は粛清され、1人は気絶している。残りは3人。
強襲したような音は無かったから、恐らく最初に殺されたのは教会管理者。そして、教団関係者を装い中に入り、そしてあの銃声が響いた。恐らくは、それなりに防音処理がされている礼拝堂ではなく、階上のオフィスでの威嚇発砲。
しかし、ボロを出したのはもう1人の銃を握った男も同じだった。ホログラムの存在を知らなかったことで、流雫に付け入る隙を与えた。しかし、粛清されていない。粛清と云う名の同士討ちで、駒が減っては困るのか……?
「こうなりゃ……!」
男は自動小銃を流雫に向けて近寄る。その瞬間、礼拝堂の外から小さな爆発音と何かが倒れる音が続けて聞こえた。
特殊武装隊が、教会のドア前に固まる。非常口は無く、窓も2Fに数枚有るだけだが、火災の時に煙を外に逃がす役割を果たすための小窓。人が入れるほどではない。……正面から突入するしかなく、その準備が始まっていた。
「宇奈月……」
と呟いた黒薙に、バリケードになっていた中年の警察官が反応した。
「……人質の名前か?」
その問いに、笹平は
「知ってるんですか?」
と隣から口を挟む。
1年前の教会爆破テロ、その直後のホールセールストア襲撃で流雫の取調に立ち会い、そして7月のショッピングモール自爆テロや11月のアウトレット襲撃の調書でもその名前を見た。その2件の取調を行ったのは、警視庁から駆け付けた室堂常願と云う刑事だった。
「……君たちは同級生か?」
と問い返すと、少女は即答した。
「はい」
その言葉に、中年の警察官は言った。
「……宇奈月、流雫と云ったか。確か北部の湖畔のペンションに住む。珍しい名前だ。……高校生なのに何度も銃を撃って、正当防衛のためとは云え可哀想だよ」
……可哀想。その単語に、黒薙は眉間に皺を寄せた。
美桜と云う同級生が死に、隣にいる笹平がPTSDを起こしたあのトーキョーアタックが無ければ、流雫も銃と云うものを持つこと無く、今日まで平和に過ごせたハズだ。恐らくは今日、美桜からのバレンタインチョコに赤面していただろう。
しかし、恋人を失って銃を手にした。今は新しい恋人のために必死だが、自分と彼女の命のために、恐怖を押し殺して何度も戦ってきた。
流雫は一度だけ、黒薙に語ったことが有る。
「……死なない、殺されないためなら……、……撃つしかないんだ。何度でも、何度でもそうするしか……」
と。彼の悲壮感に満ちた表情に、黒薙は言葉を失った。
可哀想……とは思わなかった。その程度の言葉で形容できるとは思わない。しかし、適切な言葉を見つけられない。
「……それがまさか人質だとは……」
と言った警察官の言葉に、黒薙は
「宇奈月は……死なない……」
と、笹平にだけ聞こえるように呟き、彼女はそれに頷いた。
……流雫が唯一頼れる存在に、黒薙は二度だけ会ったことが有る。そのどれも、彼女が流雫と2人でいた時だ。
初対面は、夜の河月湖で。成り行きで流雫に悪態をついたことで、思いっきり引っ叩かれた。成り行きとは云え、自業自得だった。そして二度目は、あの渋谷で。膝から崩れて泣き叫ぶ流雫を、強く抱き締めるのを遠目に見た。
名前を知らないあの少女は、流雫のためにと必死だった。そして流雫も、あの少女を拠り所にしながら、トーキョーアタックに向き合うべく必死になっている……黒薙にはそう見えた。
だから、あの少女のためにも宇奈月は死なない。絶対に生き延びる。
他の同級生には、口が裂けても言えない本音。全てを知る隣の同級生にだけは言える。警察にとっては邪魔だろうが、流雫の安否を見守りたかった。
その直後、
「発破!」
と1人が声を上げた。5人の特殊武装隊員はドアより外側にいる。2人は反射的に耳に指を入れ、目を閉じる。
「っ!!」
その瞬間、鋭い爆発音が周囲に響き、6箇所有るドアの蝶番が全て吹き飛ぶ。観音開きのドアは、真ん中で鍵が掛かって繋がったまま手前に倒れ、礼拝堂のドアが遠目に見える。
あのドアの奥に、犯人と人質が……。2人はその様子を見守る。そして、シルバーヘアの同級生が無事であってほしい、との願いを強めた。
外から聞こえた音に
「何だ!?」
と声を上げた男は、慌てて銃をドアに向ける。木製のドアを破られるのは時間の問題……。
「くそっ!!」
自動小銃を手に、男はドア前に立つ。そしてオートマチック銃の男は、流雫の後頭部に銃を突き付けた。何かの時には、流雫を盾にする気だ。
「……どうすれば……」
と、流雫は誰にも聞こえないように呟いた。
この焦りよう……恐らくは警察が突入してきたか。しかし、流雫を挟む連中がどう動くか、全く読めない。いくら銃で武装しているとは云え、銃撃戦だけは避けたい。いや、その場合流雫を盾にするだろう。人質を盾にされては、特殊武装隊と云えど迂闊に手を出すことはできない。後は、解放の条件に何を要求するのか。
「開けてやれ。人質は何時でも殺せるようにしろ」
と、低めの声が響いた。今まで一言も口を開かなかった男が、ついに落ち着いた口調で言った。眼鏡を掛け、やや老け顔の男……これがこの事件のリーダー格か。ジャケットを脱ぎ、白いワイシャツ1枚になる。確かに、冬だが暖房が強く地味に汗ばむ。
自動小銃の男は流雫を自分の隣に立たせ、ドアの鍵を開け、そして一気に蹴った。鈍い音と同時に血の臭いがほのかに漂う礼拝堂の全貌が露わになる。深いネイビーのジャケットを着た集団が銃を構え、しかし一斉に目を見開く。
銃を人質に向けた男と、その盾にされている少年。隊員は銃を構えたまま、しかし動けない。
「目的は何だ?」
そう声を上げた隊員の背後では、警察官とヤジ馬が揉み合いになっていた。
警察官のバリケードを突破し、教会のエントランスまで踏み入りたい連中と、阻止しなければならない警察官。しかし、カメラアプリを起動させたスマートフォン片手に、知る権利を濫用したい連中は後ろから容赦無く押し続ける。
「笹平!!」
黒薙は同級生の名を呼ぶと咄嗟に腕を掴んで引っ張り、後ろから押してくるヤジ馬の大波から強引に逃れた。
「はぁっはぁっ……!」
息を切らせる同級生に、黒薙は
「バカが……!!」
と、苛立ちと怒りに満ちた声を出す。
事件は見世物じゃない……自分も或る意味同罪ではあるが、此処に屯する連中の中では誰より……否、唯一同級生の安否が気懸かりでいると思いたい。
「宇奈月くん……!」
と、笹平は人質になった少年の名を呼ぶ。黒薙は
「……宇奈月は死なない。奴を信じろ」
とだけ言って、寒そうな笹平の肩を抱く。
「寒いだろ?」
その問いに
「でも、宇奈月くんが心配だから」
と答えた笹平。そう云うところが、黒薙は好きだった。そして、だから誰よりもトーキョーアタックと向き合えている……そう思っていた。
笹平志織、こいつにだけは頭が上がらない。
リーダー格の男は
「太陽騎士団は見ての通り、危険な宗教だ。1年前のこの教会の爆破も、先日の名古屋の事件も、社会活動に熱心だと油断させ、然るべきタイミングで大事件を起こすテロ集団だ!こう云う輩を日本から排除しろ!俺も殺される!!」
と叫び、自動小銃を眼鏡の男に向けた男は
「……俺らを撃てば、人質も死ぬ。非難囂々だろうな」
と落ち着いて、しかし挑発するように言った。
人質の死は、理由を問わず警察の不手際。その風潮は、昔も今も変わらない。
銃撃戦は避けなければならないが、連中が大人しく投降するとは思えない。事態は膠着状態、それが引き起こす精神消耗戦に突入した。
そして厄介なのは、特殊武装隊の奥に見える連中だった。ほぼ全員が、スマートフォンを向けていた。
……一度も話したことは無いが、自分をよく思っていないことは判る。そして、1年ぶりに遭遇する学校前の惨劇に遭遇したと云う特別な体験に、内心浸っているに違いない。
しかし、だから厄介だった。ズボンのポケットに入れた銃で反撃しようにも
「撃つぞ!」
などと言ってバラされてはどうしようもない。しかし、同時に華麗に犯人を撃つことを期待している。流雫が好きなアクション映画のヒーローのように。
……逃げること無く勇敢に戦う、じゃない。逃げられないから、逃げ切るために戦わざるを得ない。それだけの話だ。そもそも、人の生き死にが関わる事態は見世物じゃない。
流雫はドアの上に有る時計を見た。既に最初の銃声から1時間半近く経っている。
……あとどれぐらい、続くのか。流雫はそう思いながらも、何より東京にいる澪を心配させていないかが気懸かりだった。突然のことに証拠を残せてはいないものの、この1時間ほどで耳にした話が土産……だと云っても、反応は目に見えている。
ただ、逆に云えば澪のことだけを思い浮かべていればいい。それだけで、流雫はあと1時間でも2時間でも、耐えられる。
そう思った流雫は、場違いな程に冷静に見える。ただ、それはヤジ馬にとっては面白くないらしい。
「お前、銃を持ってんだろ!」
と、突然声が上がる。その声に先に反応したのは流雫の背後にいる犯人だった。
「何!?……出せ」
と男は言い、更に後頭部に銃口を押し付けた。引き金に掛かる指があと3センチ動いただけで、流雫の後頭部に大口径の銃弾が刺さり、その瞬間少年の命は終わる。
「っ!!」
流雫は痛みに顔を歪め、自動小銃の男が
「出せ!!」
と急かす。
流雫はズボンの右ポケットに入れた銃を、取り出して投げる。ガンメタリックの銃身は、タイルに落ちると鋭い音を立てて軽く跳ね、特殊武装隊の足下より手前に転がった。
犯人は思わず舌打ちし、大声を上げた。
「てめぇ!!」
「こう云う時、普通は捨てると思ったから……」
と、悪びれる様子も無く言った流雫に怒りを向けても、どうなるワケでもない。
理想は、流雫の銃も欲しかったのだろう。しかし、小口径で威力が弱く、しかも銃弾は6発のみ。この場で銃撃戦になっても、至近距離に特化した銃は大した戦力にはならない。
ただ、それでも流雫にとっては大きな戦力だった。……その銃が無い以上、このまま事態が動くのを待つしか無い。
今まで、どんな目に遭っても詰んだとは思わなかった。しかし、今度こそは詰んだ……とは、やはり思わなかった。1年前なら、そう思っていただろう。ただ、もう一度生きて澪と会うために……それだけで、流雫は希望を捨てること無くいられる。
銃が無いのは痛いが、それ以外は数分前と同じ。また膠着状態に戻るだけだ。
しかし、同級生が犯人を撃つ光景を見世物として期待したヤジ馬にとっては、狙いが外れた。突然訪れた非日常の事態を目の当たりにした特別感に浸るどころか、更なる刺激を求めているのか、どっちにしろヤジ馬にとって、流雫の生き死には既に半分どうでもよかった。
快速列車は15分遅れで終点に着いた。2ヶ月ぶりの河月駅、その改札を出た澪は目的地の高校を目指す。
雪は相変わらず降っていて、バスは運休。スマートフォンの地図で場所だけは把握しているが、雪が積もる歩道を走るしか無い。
「こっちだったハズ……」
澪は呟いた。
人通りが少なく、踏み固められていない。僅かに埋まるが、下がシャーベット状になっていないだけマシだ。
「流雫……!」
澪は最愛の少年の名を呼びながら、雪に苦戦しながら歩いていく。
セーラー服の上に羽織るコートは自由で、澪は何時ものケープ型コートを羽織っているが、冷たい空気が内側に入ってくる。それが笹平からの連絡は無い。流雫からの連絡も、言わずもがな。流雫は死なない、そう何度も言い聞かせて澪は歩き続ける。
30分ほど経ったか。警察車両の赤い警告灯が周囲の壁に反射し、人集りができている。
「着いた……」
澪は呟き、残り僅かな距離を歩く。その手前に1組の男女がいた。そのうちの女子には見覚えが有る。澪は息を切らしながら、大声で呼んだ。
「志織さん!!」
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