第19話 私達の心には、『好き』が1個しかないの。 ~姉妹はいつだってお兄ちゃんだけ~①


「何でほぼ全裸なんだよ!さてはまた僕をからかうつもりだな!」

「さて、どうかしら。ゲームだから楽しまないとダメじゃない。無粋ね」

「僕がゲームを楽しむという選択肢を寄こしてから言ってくれ!」


 後ろ手に縛られたものが前に移動しただけじゃないか!

 目隠しだってされたままだし!


 ……そうか!

 目隠し取っちゃえばいいのか。

 縛られた両手を折り曲げ、顔に持っていく。


「お兄ちゃん、待って待って!見えたり見えなかったりの体育座りしてあげる!」

「……このこりっこり具合を見せるるだけでも粗相できそうね。ほ。上も取ったわよ?」


 は?

 何が見えたり見えなかったりするんだ?

 上取ったわよ?

 下はどうなって……あ!


 あああ!

 この目隠しを取って、二人があられもない姿をしていたら……!


 





『あら?優ちゃん。あらあら?優ちゃん。どうしたのかしら、この膨らみ。あら固い……まさかこれは!私達を見て欲情しているの?!ゲームなのに?!……最低ね、見損なったわよ』

『いつもみたいに三人でまったりしたかっただけなのに、お兄ちゃんはほのかと葛をそんなエッチな目で見てたんだね……大好きなお兄ちゃんがこんなケダモノだったなんて!』


 涙目でお互いをかばうように身体を寄せ合って、ズリズリと後退していく二人。


 ち、違うんだ!

 そ、そんな目で見ないでくれ!

 

 これは、男のさがなんだ!

 二人が可愛すぎるから!可愛すぎるからあ!


 そんな二人が薄着で目の前にいたら!

 僕だって男なんだ!多めに見てくれえ!

 決してほのかと葛をイヤらしい目で見てたという訳じゃないんだあ!







(ありゃりゃ。微妙にお兄ちゃんの、しょんぼりしちゃった。また物思いにふけってるね……さすさすしてみよっかな!さすさす☆さすさす☆)

(この動きと表情は、目隠しを取ろうとしたら何かに引っかかって外せなくなっちゃった感じね。夢オチ大作戦どころか、時間をかければかける程こっちが我慢できなくなりそう)




 まず、深呼吸をする。

 心頭滅却。

 心頭滅却ぅ!


 お、感触が無くなった。

 気を練ったようなものか!


 まだまだ!

 煩悩退散!

 煩悩退散んんん!




(お兄ちゃんは何でこんなに可愛いんだろうね。今日の公開告白もあったから、ほのか、ぐっちょぐっちょですよぉ~。奥までへいへい!ばっちこーい!チャレンジできそうですよ~?)

(『ぐっへっへ。葛の穴という穴は全部貪りつくして、かき回してやるぜえ!ぺろんちょ!ぺろんちょ!へっせんぶらっげ!』とか、いつになったらしてくれるのかしら)

(葛の言ってることがたまにわかんない……あ!今のうちに下、脱がしちゃおうよ!)

(あら、いいわね。そうしましょう)






 ずるり。


 はっ!しまった!

 また物思いにふけってしまった……って、え?!

 下半身が肌寒い。ぬ、脱がされたとか?!


「ちょ、ちょっと!何でスウェット脱がすんだよ!」


 こんなんで下手に煽られたら丸わかりになっちゃうじゃないか!


「あら、オシオキのうちよ?優ちゃんが興奮したら、私達で観察してあげる」

「うんうん!おく……グッズでお兄ちゃんの成長っぷりを確かめてあげるよ!」

「観察すんな!確かめんなぁ!そもそも、幼なじみがする事の範疇を遥かに超えてるぞ!」


 せっかく今まで、お兄ちゃんとして頑張ってきたのに……!

 幼なじみに興奮する僕を見られたら、これからどうやって接したらいいんだよ!


「もう、ホントにからかうのはやめてくれ!僕だって男なんだぞ!それに!恥ずかしい事をぶっちゃける!彼女いない歴がイコール年齢だ!もちろん女子とエッチした……経験もない!あああ!暴露してしまった!」

「そんなのわかってるわよ?」


 ……え?

 なんだとうっ?!

 能力者なのよ?とでもいうつもりなのか!


「え、だってお父さんお母さんが『あいつ、未だに彼女ができたことないんだよ』『ほのかちゃんと葛ちゃん、早めに優也貰ってくれない?DTごと』って」


 そんなバカな!

 僕の個人情報を何だと思ってるんだ!


 信じていたのに!

 僕の、かけがえのない家族だって思っていたのに!


「そもそも、優ちゃんでもしょっちゅう言ってるわよ?『彼女がいるってどんな感じなのかな』『僕は、そう言った経験が無いんだ!』って」

「うんうん!言ってる言ってる!」

「うっそぉ……」


 父さん、母さん。

 ごめんなさい。

 力の限り自爆してたよ。

 

 でも、少し話が早い。

 結局は、さ。

 

「ま、まあ。僕は知っての通り……女子と付き合った事がない。ほのかと葛にこうやってからかわれると僕だって男だ。度を越えると変な気分になってしまう事だってあるかもしれない。いつか、ほのかと葛に……そういった事を求めてしまうかもしれない。我慢をし続けられる自信がないんだよ」

「「……」」


 あ、黙って聞いてくれてる。

 いい傾向だ。


 いい加減、自分達がどれだけ可愛くて魅力的なのか、気付いてほしいよ。

 今だって二人は相当モテるって聞いてる。


 これからだって。

 大学に進学して、いつか社会に出て。


 僕なんかよりカッコよくてステキな男性に出会って、恋をしていくだろう。

 相手を盛り立てて、頑張って、幸せになっていくんだろう。




(お兄ちゃん、またお花畑に行っちゃったよ。むう)

(またどうせ、『僕はお兄ちゃんでいたいんだ!』とか思ってそうね。失礼しちゃうわね)

(ねえ、葛。お兄ちゃんにぴゅるっ!てさせて、『夢でした』ってするんでしょ?でも、夢オチじゃなくてもいい。お兄ちゃんにも、私達の気持ち、言っちゃわない?もうねっちょりと)

(……いいわね。あれだけ自分の気持ちを言っておいて、タダで済むと思ってるのかしら。ふふふ……楽しくなってきた)


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