第20話 私達の心には、『好き』が1個しかないの。 ~姉妹はいつだってお兄ちゃんだけ~②



 お兄ちゃんとして、二人の力になりたいんだ。

 見守っていきたいんだ。


 二人が幸せになる為にできる事は何でもしてあげたい。

 幸せになってほしいんだ。

 僕だって幸せにんだ。


 ……幸せに、してあげたい?


 え?

 僕、何言ってんの?

 僕が、幸せに?

  

 どさどさっ!


 ん?両側に暖かいのがし掛かってきた。

 し、しまった!

 また自分の世界に入ってしまった!

 くう。


 二人の息遣いが聞こえてくる。

 甘い吐息が、吹きかかってくる。

 

 近い!

 近いよ!


「ほのか、かずら!僕の話を聞いてたか?!」


 体を押しのけようと手を動かす。

 

 むにゅ。


「……は?」

「あやっ!お胸さんだよ、そこ!ブラ取っちゃった☆」

「な、何で服着てないんだよ?!」


 慌てて腕を動かす。


 さらり。

 少し柔らかみを帯びた肌の感触。


「優ちゃん、そこは私のお腹よ?ぬっちょぬちょは後20センチ下ね、いいわよ触って」

「な、何言ってるんだよ!」




 ほのかの胸だという、その柔らかさ。

 葛の肌の感触。

 甘やかな髪の薫り。

 湿り気を帯びる、少し荒い息遣い。

 僕の服の下をまさぐっている、左右からの手。




「お兄ちゃん、大好きだよ。世界にいっこしかない、ほのかの『好き』を貰って?」

「?!」


 ほのかの声と共に、柔らかいものが口をふさいだ。

 何度も吸い付かれて、ゆっくりと離れていったその感触に震える。


「優ちゃん、これは私の気持ち。これからも、を幸せにして?」

「か、かずっ?!」


 また柔らかいものに唇を塞がれた。


 ゆっくりと確実に口の中に侵入してきたソレと、胸の先に移った別の柔らかい感触と、地肌に触れてくる手の感触で、意識がボンヤリとし始める。


 また、ゆっくりと柔らかいものが離れていく。


「ほのか、葛……僕はお兄ちゃんなんだ!こんな事……」

「昼間、二人を幸せにしたいって言ってたよ?公開プロポーズのオシオキ☆」

「人前で『俺の女達』宣言されたから、たっぷりとオシオキしてあげるわね」

「だ、ダメ……!」


 





 柔らかいものが。

 ぬめった感触が。

 触れるか触れないかの感触が。




 唇を。

 頬を。

 首筋を。


 鎖骨を。

 胸を。

 お腹を。


 腰骨を。

 脇腹を。

 背中を。


 足首を。

 太ももを。


 そして。

 痛いくらいに腫れ上がる、そこを。

 裏側を。

 後ろ側を。

 

 まるで。

 まるで、儀式の様に。


 何かを確かめるように。

 僕の体中を浅く深く、ついばんでいく。



「今日は、もう我慢できません!ぴゅるっぽさせて!っていうまでこんな感じだよ☆」

「最後は、言葉だけでぴゅっぴゅしてもらおうかしら」

「うう……!」


 答える余裕など、もうない。

 もう、十分すぎる程に理解してしまったから。


 二人に、好きだって言われて。

 丹念に丹念にイヤらしい事をされて。


 気持ち良くない訳がない。

 

 ほのかと葛の唇が、舌が、指が。

 そんな妄想が、僕の体中を痺れさせる。


 これがグッズで、あおりりだとしても。

 からかいだって言われたとしても。


 こんなに好きだったんだってわかってしまった。


 気持ちよさが、止まらない。

 ほのかと葛が、止まらない。


 いつしか。

 ほどかれた手の拘束は、形を変え。


 ほのかと葛の片方の手との、恋人繋ぎに変わっていた。


「えへへ☆お兄ちゃんの、すっごくビクビクしてる!もうすぐかな?いっぱい気持ちくなってね!」


 ん、あー。

 ん。


「うあ?!」


 包み込まれた僕。

 余りの気持ち良さに、腰が跳ね上がった。


「あら、優ちゃん可愛い顔して。もっと声も聞かせて?」

「あああっ!」


 何かが、上下して。

 何かが、付け根の裏側を。


「ぷはっ。次からは、ほのかと葛のかわりばんこだよ!10秒交代するから、気持ちーほうでぴゅぴゅってしてね!」

「私の、に決まってるでしょ?ね、優ちゃん」

「お兄ちゃんラブぱわーなら負けないよっ!」

「私が負けるわけないでしょう?優ちゃん、一緒にね」


 あーん。

 んふ。


 2か所それぞれの感触が変わった。

 そして、10秒ごとにまた変わる。


 これは、ほのかのグッズなのか。

 それとも、本当にしているのか。

 あの可愛い顔と長い舌で。


 今は、葛のグッズなのか。

 それとも。

 あの美しい顔を上下させて。


 見えない光景が。

 妄想が。

 気持ちよさに追い打ちをかけていく。


 荒い息遣いと。

 くぐもった声と。

 響き渡る、別々の水っぽい音が、絡み合って。


「はあ、はあ、はあ……あ、ほのか!葛!もう、あ!」


 悲鳴の様な声が出る。


 もう、ダメだ。

 おへその下あたりから、せり上がってきて。


「あ!あ!お兄ちゃん、ほのか!もう……!これ以上こりこりしたらっ……やあっ?!」

「んふぅ!……んん!はぁ!優兄ちゃ!はや、くぅ!もう触らなくても、無理なのぉ!」

「お兄ちゃん好き!好き!好き!」

「ん!ん!ん!ん、ん、ん、んんっんんっんんっ!」


 激しさを増した声と動きと、快感に、叫ぶ。


「ほのか、葛!お兄ちゃんも大好きだ!……あ!ああ!!」

「はあはあはあ……はえっ?うそっ!あああああ?!」

「?!……んんんんんんんんんーーーーー!!!」



 同時に、震えて。

 叫んで。

 汗ばんだ体を絡み合わせながら。


 僕らは動きを止めた。


 



 真っ暗な闇の中。

 ゆっくりと星が流れて、消えていった。

 








 もそり。

 もぞ、もぞ。


 自分の横で寝ているほのかと葛の動きに、目を覚ます。

 二人も僕も、しっかりと服を着ている。

 が、ゲームの時の服とは別のものだ。


 また、夢だったのかな。


 ちくり、と痛む胸をスルーして、二人の肩まで布団をかけてやる。


「……かくなる、うえはぁ……お兄ちゃんのぉ……ぐう」

「泣かすわ、よ……優ちゃん……すぴー」


 寝言を言いながら、僕の胸に顔や体を擦りつけてくる二人に苦笑いをしてしまう。


 全部夢、かあ。

 ほのかと葛が、僕を好きだって言うのも、夢かぁ。


 はあ。

 とほほ。

 この気持ち、どうしよ……。


 深呼吸、深呼吸。

 すううううう……はあああああ。


 あ、こりゃダメだ。

 布団から出るか……。


 あ!ほのか!

 しがみつくな!ちゅっちゅっすんなぁ!


 葛!

 鷲掴わしづかみしていいとこじゃないぞぉ!


 潰れちゃう!

 ニギニギしちゃダメぇ!!


 

 

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