第22話 なあ、友達の話なんだが ~お兄ちゃんはここでも鈍感さん~
うーん……落ち着かない。
こんな小洒落たカフェ。
オーガニックカフェ、というらしい。
という事は、出るのだろうか。
オーガ。
出ないか。
柔らかな照明が目に優しい。
全面ガラス張りのショーウインドウからは、道行く人が丸見えである。
当然、外からも僕の姿は丸見えだろう。
居心地わるっ。
近くでノートPCに指を走らせる優秀そうなお姉さんとまた目が合う。
ううう……顔を赤らめて、速攻で目を逸らされるとは。
こんなお洒落な場所に来るから……!
とん、とん。
誰かの腰が僕に当たる。
幸田が呆れ顔で僕を見下ろしていた。
「お待たせ、はいコーヒー。アンタ、そんな顔して他の女を見つめるのやめなよ。さっきからあの女、有本と目が合う度にモジモジしてたよ?」
「……?何でだ?」
「あーあ、ったくもう。私といるんだから、わ、私を見なさいよ」
幸田、お前何を言ってるんだ?
先程目が合った女性を見ると、ため息をついている。
「あの女性は僕を見て、何やら残念な人間を見る目をしているんだが」
「はあ、もういいわ。ほんっと調子狂うな……」
「こら。何で僕の前髪を触る。自分の髪をクルクルしろ」
部室を出てから、やたらと体に触れてくる。
まさかお前もオシオキを狙ってんじゃないよな……。
「けちー。こうした方がカッコいいのに」
「お前熱でもあるのか?顔真っ赤で言動がおかしいぞ?」
「……いつもと雰囲気違うからっていい気になんな!有本のクセして!」
そんな訳あるか。
と、いうか。
「この間はすまなかった。僕が上手く断れなかったせいで嫌な気分にさせてしまった。この通りだ」
「ん?……まあいいよ。強引に誘おうとした私達も悪いんだし」
「……そうか。そう言ってもらえると助かる。もし機会があったらの話だが、昼飯くらいは奢らせてくれ」
ん?何で驚いた顔をしているんだ?
「今日はほんと、別人みたい!有本、そのままでいたらモテるよ!」
「……からかう為に来たのなら、帰っていいか?」
「ええ?!待ってよ違うよ!ほんとなのに……。有本、何か悩んでるんじゃないの?私、恋愛経験豊富だから相談に乗ってあげれるよ!」
「む、そうか?それはとてもありがたい」
自分をびし!びし!と指さして、アピールしてる。
正に今聞いてみたい事があるんだけども……ん?
「なあ、ちょっと聞いていいか?」
「はい!はい!なになに?私に何でも聞いてよ!」
「それって言っちゃ悪いが、今までの恋愛失敗しまくりって事じゃ……」
「!!!」
いってえ!
●
「…………」
「悪かった。この通りだ。涙目でハムスターみたいにならないでくれ」
「手」
「はい?」
「手、貸して」
何だ?
あ、手を握るなや。
カップルみたいじゃないか。
「は、話が終わるまでこのままね」
「えー!」
ニギニギすんなってば!
「ヤだって言ったら、『無理やり中出しするから、赤ちゃんがっ……』って泣いてやるから!」
「おい幸田!」
「できないと思ってるんでしょ。み!な……もがあ!」
「わかった!わかったからやめてくれ!」
「やたー☆」
口押さえてなかったら叫んでたぞコイツ!
ああ、もう帰ればよかった……。
だが。
僕は、どうしても聞いてみたい事がある。
女子の立場からの話を聞いてみたいんだ。
その為なら手を握られるのも、どうという事はない。
この悩みを解決する方が大事な事。
それに、女子に手を握られても意外と平気な僕がいる。
ほのかと
あんなにドキドキしたり安心できるのに。
ははは……。
胸が痛いわ。
●
「ふーん……ずっと妹だと思っていた、年が三つほど離れた近所の幼なじみ姉妹が実は恋人になってほしいくらい好きだったとわかった友達がいる、と」
「そうだ」
よし、うまく説明できたようだ。
流石に僕の事とは言いづらいので、友達の話としたが。
幸田は神妙な顔をして僕の言葉を反芻してくれている。
何か他に伝える要素はあったかな。
「二人を同じくらい好きなその友達はどちらかを選べないから諦めようとしているが今までのように家族みたいな関係でいたいから、どうしたらいいか悩んでいる、と」
「そのとおりだ。そいつは随分と悩んでいてな。女子の側から見たアドバイスをしてやってくれないか」
ガッ!!!
ひう?!
痛い痛い!
アイアンクロー?!
額に青筋を立てたまま笑っている?!
ラノベの世界ではテンプレの……いたたた?!ギブ!幸田ギブ!
「友達ってくっつけりゃ誤魔化せるとでも思ったら大間違いだこの野郎!土曜日のあいつらの話なんだろ?キリキリ吐けやボケえ!!この鈍感ニブちん見掛け倒し野郎が!あーつまんない!」
何ガン切れしてるんだコイツ!
それに、何故だ!
何故バレたぁ!
幸田!
お前は異世界帰りなんだな?!
ズルいぞ!
僕だって行きたいのに!
あああ!とりあえず頭メキメキいってるから!
やめてえええええ!
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