第3話 見せてるのよ? 〜葛(かずら)、襲来〜
さて……どうしようか。
禁断の
●
最後のコマが休講になった後、サークルを休んでそのまま帰ってきてしまった。
今日は、女子をまともに見れなかった。
昨日の出来事が、僕にモヤモヤを植えつけている。
子供だと思っていたほのかの、甘くて深い薫り。
もよもよと動いて、耐久値を削っていたお尻(多分)。
耳元で囁いてきた甘い声、エロい声(罠)。
どれも、本当にヤバかった。
自分を落ち着かせる深呼吸を何度もしているが、少し時間が経つとぶり返してくる。
それでも、ほのか達を恋愛やもろもろを含めた対象として見た事は無かったし、今もそれは変わっていない。
モヤモヤも、二人からの軽蔑や悲しげな眼差しを思い浮かべれば、霧散する。
小さい頃からの大切な、可愛い妹分達なのだから。
だが、だが。
僕だって男だ。
こうなってしまっては、手立てを講じるしかあるまい。
昨日みたいに、ほのかのペースに巻き込まれる前に。
お兄ちゃんの余裕で跳ね返せるように。
二日連続であんな事やこんな事されたら、言い逃れのできない失態をさらけ出しそうで、恐い。
だが、この衝動を吐き出してしまえば!
何て事はない。
一度すれば、満足する。
そう、賢者モードだ。
まだ夕焼け空が残っている時間だが……一刻も早くモヤモヤを解消したい。
よし!
そうと決まれば。
御してやる!僕のパトスを!
……いや、御せてないからこうなってるんだけど。
●
PCを立ち上げて、
かなり切羽詰まっているからか、喉が鳴ってしまう。
落ち着け、落ち着け僕!
もう少しの辛抱だぞ!
久しぶりの、あられもない動画一覧に心臓が跳ねる。
当然、制服を着た女子が映っているタイトルから目を逸らしつつ、マウスを動かしていく。
(こ、この娘……ほのかに少し似て……バカ!やめろ!どうする……この大人びた感じの……こ、これか?)
スーツ姿の女性が、ブラウスの肩をはだけて白く綺麗な肌を見せている。
「よ、よし。もうこれで……あ!しまった!ティッ……」
「イヤらしい。こんな物を見て何をするつもりなの?」
「しょうがないだろ!僕だって男なんだか……ぎゃあああ!!か、
葛が僕の肩越しに動画サイトを見ていた。
慌てて体を反らした僕は、ゴロゴロと転がる。
「大学に行ったら、こんな事ばかりしてるのね。見損なったわ、優ちゃん」
「ち、ちが……というか、どうやって入ってきた!」
ジト目で僕を見ていた葛が、大袈裟に肩をすくめた。
「無くした時と何かあった時の為に鍵、お母さんに預けてたでしょう?それで黙って合鍵を作っただけよ」
「何だとぅ?!」
驚愕の事実に、声が裏返ってしまった。
「悔しいけど、ほのかも作ってるわよ?合鍵」
「嘘だろ?!僕のプライベートを何だと思ってるんだ!」
「毎日そんなモノ見るくらいなら、必要ないわよ。全く、イヤらしい……全くもう……しょうがないわね」
お嬢様風の見た目と言葉遣い、その美少女っぷりに磨きのかかった葛のジト目と言葉が痛い……!
葛は四つ足になって、PCの画面を近距離で見始めた。
な、何やってんの?!
慌ててPCに手を伸ばす。
「動かないで。邪魔したら、泣かすわよ?」
キツいジト目で振り返った葛に、とん、と肩を押される。こ、怖い!……あれ?
葛、僕と二人っきりの時ってこんなだったっけ?
もっと、こう……あ、大人びたから、か。
寂しいような、嬉しいような……だが、いい事だ。
甘えん坊、卒業だな。
中学までは凄かったもんなぁ……。
「んー……私の方が可愛いわね。そう、思わない?」
葛はそんな僕の気持ちをよそに、四つん這いになって、上半身を床に着けたり腰をユラユラと動かしている。
お、おい!
慌てて目を逸らし、手で顔を覆う。
「おい!葛……葛!パンツ!パンツ!見えてるから!」
「……何を言っているの?見せてるのよ?」
「はい?」
その言葉に、指の隙間から思わず見てしまう。
う、にゃーん。
ふり、ふりふり。
きょ!
凶悪すぎる!
あああ?!
そんな前屈みになったらダメだって!
か、葛って……着痩せするのか?
成長したのか?
意外と質感のある尻が、艶めかしい……!
スカートの裾からその尻を包む薄い水色の下着と、やや内股のスラリとした太ももが否応なしに見えている。
そして、その太ももの奥に見えているのは……!!
うわ!ガン見してしまった!
固く目を閉じて、必死に深呼吸をする。
ダメだ、全然収まってくれない。
本当にヤバい、ヤバいヤバいヤバいって!
……なら!
大切な妹分のほのかと葛に軽蔑される、嫌われる、愛想を尽かされる、避けられる、呆れられる……お、おお?!
おおおおお!いいぞ、収まっていく!
やっぱり、これが一番効く!
今だ!
「葛!やめろ!ふざけ過ぎだ!」
「……何よ。ほのかが嬉しそうに語って聞かせてくれたわよ?『いっぱいお兄ちゃんに愛されちゃった♡』とか。何よ、ほのかばっかりほのかばっかりほのかばっかり!」
「ほのか、マシマシの盛り盛りをしたな?!誤解だ!」
聞こえてくる葛の怒りの声に、必死に弁明する。
「本当、うるさいわね!ここまで手伝ってるんだから、早くたっぷりとシュワシュワのパチパチを出しなさいよ!」
「僕、炭酸水サーバーだったの?!」
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