第14話 優也のピンチ ~ほのかと葛でお兄ちゃんを癒します③~

 


「じゃあ、お兄ちゃん!ちょっとウチ戻ってから買い物してくるね!ほのか達がいない間に、ぴゅるりん!ってしたらオシオキだからね!」

「しないってば!僕だって出かけるし!」


 だいたい、オシオキとか二人の言いがかりだろ……。

 目いっぱい盛って、オシオキ無限ループじゃないか。


「ほのか、帰ってきたら匂いと味を二人でチェックすればいいだけよ」

「そっか!えっちぃ画像見ていいよ!れろーんしてあげる!」

かずらは何言ってんだよ!ほのかも、そっか!じゃないから!」


 れろーん、て響きがイヤらしい!何をするつもりだよ!

 それに、ウソみたいにモヤモヤがとれてるし、今は見る気もない。


 あんまり。

 そう、あんまり、ね。


 可愛い妹分の前ではお兄ちゃんはできる子なのだ。


楽しんだのなら、後はゆっくりしましょう、ふふ」

「そうそう!のんびりしようね!行ってきまーす!」

「優ちゃん、後でね」

「はいはい」



 さて、僕ももう少し湯船に浸かったら買い物に出かけるかな。


 ……

 …………

 ………………少しだけ。


 そう、後学の為に、少しだけ見てみよう。

 

 ……これ、やっぱりおかしくない?!

 お尻丸見えじゃないか!

 オープンしすぎでしょ!

 前から見たらどんな風になっちゃってるのか怖すぎる!


 これは、下着を付けながらえっちな事をするプレイ用なのでは?! 


 あ、まず!

 少し変な気持ちになってしまった。

 落ち着いて僕!

 はい、どうどうどう。


 ん?でも……そんなムラムラ来ないか。

 それに、今日はパトス出しちゃダメだろ! 

 二人に釘を刺されてるし、匂いと味チェックとか言ってたし。


 あ、収まった。

 想像するだけで怖いわ!


” ぴゅっぴゅしたでしょ!不思議な味、する! ”

” あら?優ちゃん、生々しい匂いがするんだけれど?どういう事? ”


 正座してうなだれる僕が見える。

 そして目隠しと拘束されて、グッズでオシオキだろう。

 だ、ダメダメ!


 あ、でも。グッズを使ったなんちゃってプレイと夢のお陰で、結構解消されたかも。


 正直、グッズも夢も気持ちよかったし、エロ過ぎた。

 だから、逆に平静でいられるのかもしれない。


 ほのかと葛は本気で煽ってくるし。

 本当にしているようにあの手この手で僕をからかうし。

 

 ほのかの大きいおっぱいを見たとか。

 風呂場で白い肌を晒していた、だとか。


 葛が僕のものを足で弄ったとか。

 何もつけてない下半身を大きく広げていたとか。


 まだある。


 ほのかが僕のものを動画で見るよりもイヤらしく含んで、とか。

 葛が見せつけるように下着をずらし、興奮のあまり粗相するとか。


 ははは。

 流石に、ここまで考えてみると。

 ないない。


 どんだけパトスが溜まってたんだよ。

 あの二人でこんなエロい欲望を妄想するなんて。

 

 でも、そんな自分をほんの少しだけ理解できてしまう。

 成長する度に更に可愛く、美しくなる二人。


 その美少女二人が昔と同じ距離感で普段からくっついてくる。

 懐いてくれる。


 そりゃあ、嬉しいに決まってる。

 僕の事をお兄ちゃん、優ちゃんって今でも大切にしてくれるんだから。


 でも、僕はそれを絶対に勘違いしちゃいけないんだ。

 近所の幼なじみの優しいお兄ちゃん。

 昔から優しくしてくれる年上の幼なじみという立場を壊したくない。


 だから。


 いつの間にか、自分に大きな歯止めをかけていたのかも。


 そして、反動であんな夢を見てしまって。

 ほのかや葛の仕掛ける遊びにも過剰に反応しているのかもしれなくて。


 もちろん、お遊びで僕からパトスを絞り出すのはどうかと思う。

 女子二人がグッズを揃えて僕にオシオキとか意味が分からないし。


 はあ。


 ほのかや葛の未来の彼氏も大変そうだね。

 でも、魅力たっぷりの自慢の妹達だから、いっぱい幸せにしてほしい。


 泣かしたら許さん。

 ごめんな、お兄ちゃん馬鹿で。

 

 さて、もうそろそろ僕も買い物に行くか。


 ●


 葛に夕飯のデザートは何がいいかチャットしたら、『優ちゃんがいるからいいわよ』と謎の答えが返ってきた。


 困ってほのかにも聞いたら、『私達がいるからいらないじゃん』って何なの?


 絶対二人でクスクス笑ってそう。

 お兄ちゃんは弄られまくりです。


 仕方がないので駅ビルの和洋の菓子店を回ってみる。

 二人の好きそうなものはわかってるし。


 あ、映画を見ながら食べるお菓子も買ってくか。

 ポテチとかは食べなかったらそのまま保管しといてもいいしね。


「わ!しょっぼい冴えない男がケーキなんて見てる!似合わない!」

「げ!幸田……!」


 洋菓子を物色している僕を覗き込んできた幸田。

 コイツ、この駅使ってたのか?!


「げ!はこっちの台詞よ!あーあ、休みの日までラノベオタに……」

「……だったら声かけなきゃいいだろうに」

「ねー知佳!私に紹介してよ!イケてるじゃん!」


 幸田の後ろからひょい!と別の女子が顔を出してきた。

 普段なら用事の無い限り話す事のないゆるふわ茶髪女子二人に、思わず一歩下がってしまう。


「あー……コイツ、こんな顔してるけど中身はただの本オタクで人付き合いも悪いしクッソまじめで話もつまんないし、サークルでももくもくとテニスしてめちゃめちゃ浮いてるむっつりスケベ男だから、映里はゆりの趣味じゃないと思うよ」

「え!そうなんだ!」


 おい。

 結構な紹介をしてくれたな、ありがとう。


 ほとんどは事実だ。

 が、サークルの女子をそんな目で見た事なんて……あ!

 き、昨日………!あ、あれ?やばそうだから僕サークルサボったし。(※三話)

 それとも、いつもそんなにガン見してた?!


「でも、そんな真面目君を骨抜きにしてみたいかも♪」

「ちょっと!私のサークルの人間まで食い散らかそうとしないでよね!」

「何よ!知佳、ウチのサークルの合宿に乱入してたじゃん!」

「それとこれとは別!」


 こっわ!

 これが肉食系女子!

 ……というか、僕もうそろそろ移動していいですか?

 そろそろ、と後ずさりをしながら声を掛ける。


「じゃ、僕はこの辺で……」

「ちょっと待ちなさいよ!どうせ暇してるんでしょ?そんな高そうなケーキを買って帰るくらいなら、私達に美味しいご飯奢りなさいよ!」


 いや、暇じゃないよ?

 それに、おとといタクシー代全部出したよね?

 僕は君のお財布じゃありません。


「あ!いいね!よかったね、両手に花だよ君!」

「いや、夕ご飯は用意してもらえるし、遠慮するよ」

「何よ!実家でご飯なんて、いつでも食べられるでしょ!こんなに可愛い女子と普通の女子と一緒にご飯を食べれるなんて最高でしょ!あ、ありがたく思いなよ!どうせ彼女なんている訳ないんだから、嬉しいでしょ!」

「ねえ知佳。普通の女子ってもちろんアンタの事よね?」

「違うわよ!」


 ……何を言ってるんだ?

 流石に自分勝手な事を言ってばかりいる幸田に、腹が立ってきた。


 ふと、ほのかと葛の顔が浮かんだ。



” お兄ちゃん辛い?悲し?ほのかがよしよし、してあげるからね ”

” 悲しい時は、分かち合いましょう。絶対に受け止めてあげる ”


 

 ほのか、葛。


 僕は守っているつもりで、どれだけ守られていたのか。

 どれだけ、支えてくれてるのか。


 愛しさ。

 大切さ。


 笑顔。

 気持ち。


 やっぱり、僕は二人の理想のお兄ちゃんでありたくて。

 あんな素敵な妹分達の笑顔を見ていたくって。


 目の前で好き勝手言ってる幸田とその友達と過ごす時間が勿体ない。


 逢いたい。

 二人に、無性に逢いたい。

 情けないくらいに、逢いたい。


「何うつ向いてんのよ!……な、何よ!何でそんな泣きそうな顔してんの?ば、ばっかみたい!そんなに嫌なら……そんなつもりじゃ!と、とにかく行くよ!」

「何か可愛い!よしよし、お姉さんが……」


 左右から二人が伸ばしてきた手に硬直する。


 びしぃ!

 ぱしっ!

 

「いたい!」

「きゃ!」

「……えっ」


 左右同時に振り払われた手。

 

お兄ちゃん、怖がってるね。どうしてなのかな?」

「あら優ちゃん。嫁を差し置いて浮気なんて許さないわよ?」

「な、何よアンタ達!」

「せ、制服?高校生?」


 笑いを貼り付けたような顔で、左右から僕を抱えるほのかと葛。


「ほのか!葛!」

「嫁って先に!かくなる上はっ!……ほのかは彼女兼専用のお肉です」

「卑猥ね、その言い方。なら……私は嫁で妹で専用の袋ね」


 ちょっと待ってえええええええええええ?!




 




 

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