第26話 幼なじみの本音と、まさかの。 ~うっわ、ご立派!~ 


「なあ。お兄ちゃん、こういうの良くないと思うのです。小さい頃とは違うよね? 年頃の女子がこうやって、幼なじみで勝手知ったるとはいえ、男子を脱がすなんてないんじゃないかな」


 しまった。初手から弱すぎる。


「これは、私達を差し置いてあのお姉さんと手をニギニギしたりいちゃラブ感を巻き散らしてたお兄ちゃんへのオシオキだよ?」

「いちゃラブしてないってば!」


 ほのかの囁きに全力で抵抗する僕。


「私達がいなかったら、『ほうら、僕のこの反り返ったごりごりバナナをお前のくるぶしこすりつけてやるぜ、ぐへへ』とか不埒な事をしようとしてたんでしょ、イヤらしい」

かずらは僕に対する認識を改めようか!」


 どんなプレイだよ!

 その囁きの方がイヤらしいわ!

 息、吹きかけないでぇ?!


 ……とか、言ってる場合じゃない。このまま、こんな感じのじゃれ合いを続けていったらどうなる?


 僕だって男だ。いつか、歯止めが効かなくなるかもしれない。しかも、こんなにも好きな二人とだぞ?


 家族でいたいなら。

 二人の幸せを見届けたいなら。


「あのさ」

「ぶっぶー!」

「何でえ?!」

「時間切れね」

「いつから始まってたの?!」


 アイマスクがかけられた。

 これはヤバい。

 夢と妄想の二の舞になる!


「ちょっと!」

「じれじれオシオキ、スタートデース」

「ほのか! 悪役令嬢でもダメだって!」

「覚悟しなさい? 今日のはですわよ?」

「葛はいつもとあまり区別がつかないよ?!」


 叫んだ僕の両頬に、サラリとした感触が纏わりついた。


 そして。


 ズレていく。

 左右の動きがズレて、いく。


「さてさて、今日も壱号弐号、参号が大活躍だよ☆でも」

「mark Ⅰ~Ⅲがねっとりと行くわよ? だけど」

「「夢じゃないからね?」」


 そんなハモリと共に。


 サラサラとした感触が。

 ぬめぬめとした感触が。


 爪を立てられたような感触が。

 嚙みつきのような感触が。

 

 念入りに僕の身体に絡みつく。


 絡み、つく。



「お兄ちゃん。ほのかの『大好き』は、いつも本気だよ? 好きって言ったら好きなの。小さい頃から、ずっと大好きなんだよ?お兄ちゃんがいいの。ほのかはお兄ちゃんじゃなきゃヤなの!」


 掠れた鼻声と、そんな言葉と共に。



 上から。


 首筋、鎖骨、肩、二の腕、手のひら、指先、胸板。


 下へ。


 腹筋、脇腹、股の付け根、膝、向こう脛、足の指全部。 



 僕の身体を、ほのかの温かさが進んでいく。敏感な所を避けながらゆっくりと丁寧に進む何かが、まるで儀式のように、僕を拭っていく。 


 ほのかの息遣いと、優しい声が。

 僕が求めてやまない言葉が。

 温もりと共に、降り注ぐ。


 涙が出そうなくらいに、僕に降り注ぐ。


 何度も何度も繰り返される、上下の動き。


「まだまだこれから、だよ☆気持ちが籠ったオシオキ、受け止めて?」


 ほのかの囁きが、右耳から心の底に入り込む。



「優ちゃんは、本当にお馬鹿さんね。自分が泣いても、怪我をしても、嫌な思いをしても、私達が困った時には必ず助けてくれた。困ってなくても大切に大切にしてくれた」


 葛のかすれた声と、言葉と共に。



 下から。


 足の指、ふくらはぎ、太もも、腰骨、脇腹、脇の下。


 上へ。


 二の腕、肩、鎖骨、首筋、耳たぶ、頬、小鼻、瞼。



 僕の身体を、葛の何かが進んでいく。これも敏感な所を避けながら進む何かが、僕を包んでいく。 


 何度も何度も繰り返される、上下。


「私の恋心は昔も今もこれからも。たった、一人にだけ」


 葛の囁きが、左耳から僕を支配しようとする。



 体を横向きにされた。

 熱く柔らかな感触が、前後上下に纏わりつく。


 トランクスの感触も無くなっている。そして、恐らく前と後ろから僕をオシオキしているほのかと葛からは、熱い温もりしか感じられない。


「お兄ちゃんの好き、したいなあ」

「よかったわね。私達が代わりばんこと二人掛かりよ?」

「で、できるわけないだろう!」


 イヤらしい夢を妄想を見過ぎた為か、もっと敏感な所を刺激されると期待してしまっている僕の身体は僕の意思とは裏腹に。


 痛い程に。

 ビクビクと。

 

 刺激を待ってしまっている。


「ほのかと葛を選べないからって言ってたよね?」

「そんな理由で離れる位なら、二人とも愛しなさいな」

「そ、そんな事……ああ!」


 声が出てしまった。

 腰が跳ねあがった。


 焦らされて、焦らされた後の。

 両胸の先っぽを甘噛されたような。

 舌で転がされるような、感覚。


 震える。


「ほのかは知ってるよ? お兄ちゃんを大好きな葛を」

「だから選ばなくていいわ。二人で全力で愛してあげる」

「そんな……! だ、ダメ……!!!」


 息が吹きかけられるの気持ちよさに、体が揺れる。また硬さが増していく。


「ほのか、葛と一緒にお兄ちゃんを幸せにしてあげる」

「毎日私達に尽くされて、突き放題のかけ放題ね」

「そんな、あああ?!」


 イヤらしい言葉に、深い所からパトスが迫り上がる。


 そして。


 僕に沿って、つう、と上がっていく何かに。

 胸の先っぽで激しく蠢き始めた何かに。


 生殺しだった僕が、激しく震えだす。


「いいよ、お兄ちゃん。ほのかが見ててあげる」

「優ちゃんほら、ここにいいわよ? あーん」


 夢ならまだしも、現実でそんなの見せられるか!

 葛、あーんするなよ!

 でも、お預け状態だったから……ヤバい!


 し、深呼吸!

 いや、ダメだ……!


 円周率!

 考古学ぅ!


 ああああ、頑張れ僕!



「あら?靴あるじゃん。優君いるー?ほのかと葛が入り浸ってるって、ごめんなさいねえ……うっわ!ご立派!」


 ……え?


「「お母さんっ?!」」

「佳奈子さん?!」


 嘘でしょおおおおおお?!

 あ、合鍵!


「スゴイわね!お腹にくっついちゃいそう! しかもこの反り、大きさ……眼福眼福♪どれどれ……おおお!」

「お母さん、あっち行ってよ! これは私達の!」

「顔近い! 舌舐めずりしてんじゃないわよ!」


 え?!

 今、手乗っけないで?!

 

「お母さんは見ないでよ!」

「優ちゃん早く小さくなさいよ! 隠してあげるから!」

「佳奈子さん、これはちが……あ! 今触らないで! そんなに触っちゃ、あああああ?!」

「いやアンタ達、全然隠せて……どっひゃあ?!」

 

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