第9話 優兄ちゃんっ!夢だからぁ! 〜葛、絡め取ります〜


 グーがいる。


 大人しくて、人なつっこくて、いっつもグーグー寝ていた、花帆かほ叔母さんちのゴールデンレトリバー。


 あ、これ夢だ。

 何となくわかる。


 僕の身体も、グーが元気だった頃の大きさっぽい。

 小学校高学年くらいかな?

 

 グー!


 僕の声に反応して、グーがトテトテ歩いてきた。

 すぐに目の前に寝そべって、んふー、と鼻息を鳴らす。


 頭を撫でると気持ち良さそうに目を閉じる。

 あの頃と全然変わらない。



 いつも僕やほのか、かずらとみんなで遊びに行く度に、誰がリードを持つかで大騒ぎして。


 結局は葛、ほのか、僕の順番だったっけ。

 

 まだ僕等が小さい頃に散歩についていった時は、花帆母さんをグイグイ引っ張って力強い足取りで散歩するのに、ほのかや葛の番になるとゆっくりと歩いてくれた。


 優しいやつだったよな、本当に。


 すれ違う散歩中の犬が勢いよくじゃれつこうとしたり唸った時には、かばう様に僕等の前に出ていた。


 そのグーが、あの頃の姿で目の前にいる。


『夢でも嬉しいよ!会いに来てくれて、ありがとう!』


 夢だからリードなんてなくても一緒に駆け回り、公園のフカフカの芝の上でじゃれ合う。


 そのまま頭を撫でまわし頬ずりをすると、グーが顔を近づけて僕の顔を舐め回した。


 僕の顔が涎でべちょべちょになるが、止まらない。


 負けじとグーの顔に、首筋に頭をこすりつける僕。


『あはは!涎スゴすぎ!ちょっと待って!顔拭かせて』


 あまりのくすぐったさに懇願してみるが、そこはお約束のようにスリスリされる。


『もー!顔がー!……でも今日はいっか!グーと一緒にいたい!もっともっと!』


 僕も負けじとグーの顔にぐりぐりと頬を擦りつけた。

 仕返しにグーの鼻やオデコ、顔を舐めてみる。

 ぶるぶると震えながら嬉しそうなグーを舐め回す。


 ぐりぐり、ぐりぐり。

 ぺろぺろ、ぺろぺろ。


 あはは!

 あははは!


 グー!

 あ!乗っかってきて舐めるの、ズルいぞ!

 お返しだあ!


 あはは!

 ……

 …………



「う、うう……」


 夢の中でグーにどすん!と体当たりされて目が覚めた。

 

 寂しい。

 何で、見たい夢はずっと見させてくれないのか。


 すごく楽しい夢や、片想いだった娘がもう少しでブラウスを脱ぎ……んん!ドキドキの夢を見ていた時に目が覚めて、『もう一度!』と枕に突っ伏しても、そこからまた同じ夢を見れた試しがない。


 まあ、望んだ夢を毎日見続けるなんて、それはそれで恐ろしい気がするし、仕方ないのかも。


 だが。

 今はもう会えないグーに夢でいっぱい遊び続けたい、夢の続きをみたい、と思うくらい……いいじゃないか。


 そして。

 もしかしたら、今。


 その大チャンスかもしれない。


 今、胸にさっき夢で見ていたような重みがある。


 モゾモゾと重みが動き、グーが顔を舐め回しているような感覚が続いている。

 もしかしたらまだ、夢の中なのかもしれない。


 今日は土曜日だ。

 もう少し、もう少しだけこのまま夢を見て、幸せな目覚めを迎えたい。


 そのまま、グーの動きを堪能してみる。


 たまに足を滑らせて、股の上で足踏みをするのはご愛嬌のうちだろう。

 

 おっとっと。

 そこにお手はちょっと待って。

 朝の男子は敏感なんだから……えっ?!


 トランクス脱げた?!

 寒さが吹き抜ける。


 グーの続きじゃなくて、エッチな夢になっちゃったの?


 ドキドキだけど、意外な結末にしょんぼりしながら目を開けた。

 

 お尻。


 女子の真っ白なお尻が、顔すれすれにあった。

 そして、顔を持ち上げたら鼻を擦りつけられそうな女子の秘密の部分が眼前にある。


 あまりの衝撃に、目を閉じる。


(ど、どういう事だどういう事だ!い、一気にエロい夢になっちゃった!そういえば昨日、動画でパトスを出せなかったんだ!ほのかのいじりに、気が抜けちゃったんだっけ……ゆ、夢だとどこまでできるのかな……なんか興奮して、股間が……)


 昨日ほどではないが、股間辺りも絶好調である。


 この波に乗っかってパトスを放出しちゃってもいいか!何か、すっごい気持ちよさそうな気がする!


 そう割り切ると同時に、絶妙なタイミングで股間に刺激が纏わりついた。

 

 ぬるぬる、ぬるぬると上から下へ、下から上へ加わる快感に、声が出る。


 これは、手でされてる……口でされてるイメージ?

 いっそ、口でされてると思う事にしよう!


 腰を気持ちよさに合わせて、少しずつ動かしてみる。

 纏わりつく感触が強くなった。

 腰に合わせて、激しい快感を呼び起こす。


 微かな水音が、イヤらしく響いている。


 目の前でゆらゆらと揺れるレースの青い下着からはみ出そうな、つるつるの柔らかそうなモノを見て脳天からつま先まで電流が走る。


 ゆ、夢!最高すぎるっ!


 どこもかしこも臨場感たっぷり!

 時折ビクリ、と動きを止めてはまたふるふる動き出すお尻も、ツヤツヤのスベスベで興奮を倍化させる。


 この下着を、ペロリとめくって、男子の誰もが夢見る、ロマンがいっぱい詰まっているであろう女子の大切な所を見てみたい!


 見た事がないし、モザイクがかかっているにしても文句などない。ないのだ。

 

 だが、残念な事に両腕は太腿で二の腕をガッチリとガードされて動かせない。


 夢なのに、融通が利かない。

 この女子の腰か太もも辺りまでしか動かせない。

 

 こ、このもどかしさ!

 ドキドキを募らせながら、じっくりと鼻先の秘密の場所を観察する。


 ご丁寧に湿り気を帯びて、喰い込んで盛り上がっている生々しさに、気持ちよさに声が漏れる。


 こ、このまま。

 もし中途半端で夢が終わっちゃったら……。

 それはもったいない話だ!


 気持ちよさを高める為にそっと太ももを両手でさすってみると、艶めかしいお尻がびくり、と揺れて『んふ……!』という声が聞こえた。

 

 声の感じからいくと、かずらだ。


 やっぱり、夢なんだなと思う。

 葛は僕と二人でいる時は、色々と言葉で煽ってくる。

 僕をからかって弄り倒すのが大好きなのだ。

 無言でいる事自体が、無いに等しい。


 とは思ったのだが、同時に。


 夢の中の葛に興奮する事に、不安になった。


 夢だとはいえ葛に、このままパトスを放出して。

 次に葛が冗談で煽ってきた時に、自分からエロい事を求めてしまわないだろうか。




 僕の部屋から、泣いて飛び出していく葛。

 街中で、夕凪家で。

 僕と目を合わさない葛。

 夕凪家の、自分の家の、みんなに殴られて。

 

 血の気が引いた。

 目覚めないと。

 僕は、お兄ちゃんだ!




「か、葛!やっぱり夢でもダメだ!ストップ!」


 どうしたらこの状態から目覚める事が出来るのがわからないが、声を上げる。


 意思が快感に勝ち、腰のモノも力を無くしていく。


 が。


 擦り上げ、絡め取り、包み込む。

 そのスピードが、一気に上がった。


 ん、とか、ふ、という声と水っぽい音が増して、僕のモノも一気に力を取り戻してしまう。


「か、葛!葛っ!あああ!」


 必死に腰をずらすが、重みで思う様に動けない。

 ずらしてもずらしても、声も音もやまない。


「葛!このままだと!ダメだぁ!お兄ちゃんなんだ!」


 そう叫んだ瞬間。


 目の前のお尻に、指が伸びてきた。

 大事な所をかろうじて隠す青い下着に、指がかかる。


「優ちゃ……優兄ちゃんっ!夢だからぁ!夢っ……!」


 鼻先で、横にずらされた下着。



 

 頭に腰に、直接響くような、濃厚な薫り。

 真っ赤な。

 腫れ上がって。

 大きく咲いて。

 見えそうで見えない、奥。



 

 それが鼻先から顔に落ちてきて、興奮と気持ちよさに、一気にせり上がっていく。


 膨れ上がったものが口に触れた瞬間。

 僕と葛のくぐもった声が叫びが、大きく重なった。




 絡め取られ、口先を伸ばし、悶え続ける僕ら。

 

(き、気持ち良すぎる……それに……こんな願望まであったのか……。恥ずかしくて葛の顔、見られなく……)


 鼻や頬、顎にかかる何かを感じつつ、真っ暗な世界に飲み込まれていく。


(まだ……夢で、よかった……)



「……ちゃん。起きなさいよ。優ちゃん」


 ユサユサと揺さぶられる感覚に、目を覚ます。

 瞼が開いてくれない。

 

「う、ん……かず、ら……?」

「そうよ。いつまで寝てるつもりなの?私をこんなに放ったらかしにして。泣かすわよ?」

「あ、ごめ……あああっ!」


 一気に覚醒して、身体を起こす。

 

 パジャマ、着てる!

 トランクス!……濡れてない!濡れてない!

 顔!カピカピしてない!

 よかったぁ……ホントに夢だったんだ。


「か、葛!いつから来てたんだ?!」

「……?さっきよ」

「あ、そ、そう……あ!僕、何か寝言を言ってた?!」


 葛が眉をひそめて、ジト目をした。

 こわっ!


「確かに言ってたわよ。『葛の脇の下は最高だぜ。ほうら、ほらほら、打ち止めの玉が出る迄ぶちまけてやらぁ』とか。変態。ケダモノ。恥を知りなさい」

「打ち止めの玉ってあるんですか?!」


 葛は、当然!と言わんばかりに頷いた。


「尻子玉、とも言うわよ?こんな美少女に何を言わせるのかしら。不潔ね」

「それ、魂抜けるやつだよ!しかも自分で美少女って言った?!……あれ?葛、何で僕のパーカー着てるの?」

「粗相をしたからお風呂と洗濯機、借りたわ。優ちゃん、私が汁まみれだと喜ぶでしょう?はしたない」

「ごめん、一つも理解できない……」


 ん?

 僕、黒いTシャツで寝たっけ?

 

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