第34話 組織の目的
「多分ここだな、さて何が出るか?」
その部屋は研究室のようだった。組織が片付けた後だったが、ところどころ物が残されている。恐らく片付けた人は何が重要かはわかっていなかったのだろう。ゴミと思って置き去りにされたものが実は重要だったのだ。
祥太郎は模型を見つけた。それは見たこともない機械の形をしていて何をするものなのかもわからなかった。ただ、祥太郎の勘がこれだと言っている。
「これは、一体?」
それは恐らく地震発生装置だ。恐らくというのは実際に地震が起きていたからで、今機械の模型を見てわかることでは無かった。徳子ちゃんはクルクル回っていたらしいけどそれもなぜかわからない。その模型はパズルのように見えた。
「地震を故意に発生させるとすると、爆弾を地下で爆発させるって考えるのが単純明快だけどそれだとクルクル回ったりはしない。竜巻発生装置?地下で起きた竜巻に巻き込まれて徳子ちゃんは空へと飛んで行った?面白いけど地面を竜巻が突き抜けるのかね?」
そういえば、地面が下から持ち上がるようにねじれていたっけ。そんな事あり得るのかってあり得たけど。そもそも組織は何の実験を地下でしようとしていたのか?それも東村山なんかで?
あの殺されたおじさんは、最初音がして外に出たら女の子が揺れていてそこだけ地震があったと言っていた。そしてその後女の子がクルクル回っていた、そしてその女の子は消えた、と。どこへ消えたかは見えなかったといっていたし、空へ舞ったのなら気付くだろう。つまり徳子ちゃんは本当にどこかへ消えたんだ。異世界なのか平行世界なのかどこでも何とかで海外にいるとか?祥太郎はその模型を持ち帰ることにした。絶対これにヒントがあるはずだ。
そして2年が過ぎた。祥太郎は大学を卒業して大学院に進んだ。研究内容は波だ。高周波、超音波、波が空気中を通ってできる事を研究している。これを選んだのは組織の指示だった。だが、祥太郎もこれを勉強したかったのでちょうど良かった。徳子ちゃんが消えた謎、それは波が関係していると考えていたのだ。徳子が異世界に消えたとしても何かの力が作用しているはずだ。それには何かが噛み合う事が必要だと考えたのです。そして可能性が高いのは波、なんの波かはわからないけど。手に入れた模型、それは地震発生装置には見えない、とすると?
ある日、組織の偉い人が日本にやってきて祥太郎に会いたいという。王国ホテルの会議室、一生縁がなさそうな高級感溢れるいかにも昔の財閥が作った雰囲気の部屋に祥太郎は通された。一応成人式で着たスーツを久し振りに出して着ていた。
「なんだ誰もいないじゃん。座ってていいのかな。でも僕が座ってはいけないようなソファーだねこれ。超場違い感」
結局座らず、部屋の備品をたっかそーだなこれ、と見ていると同じく高そうなスーツを着た老人と秘書らしき女性が部屋に入ってきました。老人が祥太郎を見て
「君が祥太郎君か、まあかけなさい」
と渋い声で言うとその後で祥太郎が座る仕草を吟味しているように見ている。秘書はピクリとも動かない。祥太郎が座るのを躊躇っていると、それを見て老人が先に腰かけた。それを見てから祥太郎が座ると、
「最初に言っておく。真弓に君を殺すように言ったのは私だ」
!!!!! いきなり来たぞ爆弾発言。ここは冷静にいかねば。
「そうなのですか、でも殺しませんでしたよね?」
「利用価値があると言うのでな。さて、その利用価値をいうのを形で示したもらいたい。我々には時間がないのだ」
時間がない?何のだろう?それにしてもあの時、あの電話の相手がこのおっさんだったって事か。組織の偉い人らしいけどどの位偉いのだろう。
「利用価値ですか。まだ僕は組織の目的というのを教えて頂いておりません。北条徳子を探せ、組織の指示はこれだけです。今まで知っている事、新しく知り得た事も全て報告しています。僕は徳子ちゃんはこの世界ではないどこかへ転移したと思っています。それを確実なものにするには情報が足りません。徳子ちゃんが持っていた物、あの猫のストラップに入っていた物は一体何なのですか?」
「そこまでは知っているのだな。我々は忙しくその北条徳子の捜索に力を割けなかった。だが、いよいよそうもいってられなくなってきたのだ。君以外にも捜索に人を割いているのだが、まだ成果が出ていない。君を生かしたのは気まぐれだったが、今となっては期待の星なのだ。あのストラップ、まさかあんなところに入れているとはあの山元という男にはしてやられた。それであれに入っていたものだが、ある装置の起動キーだ。それ以上は言う事が出来ない」
「組織の一員として学費の補助もいただいています。徳子ちゃんを探すのは僕の使命だとも思っています。そのある装置というのは、例の地面に穴を開けた物ですよね?あれは本来、何をするものなのでしょう?最初は地震発生装置かと思っていたのですが、違いますよね?」
「ほう、なぜ違うと思うのかね?」
祥太郎は一息ついてから、言ってしまうか、と
「組織が何のために地震発生装置を作るのか?そもそもなぜ地震を起こしたいのか?と考えた時に何も浮かばなかったのです。都市破壊なら相当のエネルギーが必要ですし、それが目的とも思えない」
「では何が目的だと思ったのかね?」
「核戦争の阻止」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます