第49話 まるで世紀末
祥太郎は舘山寺を国会議事堂まで送っていく途中だ。途中で話しながら聞いた情報だと核ミサイルは日本に落ちた後、もう一度日本を除く世界中で火を噴いたそうだ。世界のどの国とも連絡が取れず、日本国内も通信網は遮断している。静岡ではテレビ曲に有志が集まってなんとか報道をと頑張っているそうだ。
そうなるとZAGP の計画通りに人口が減った事になる。地球資源の枯渇は防げるだろうけど、核が残した影響は計り知れない。ここから人類は何ができるのだろう。
「そうなんですね。日本でも核の影響がない地域もあるから」
「だがな、神宮寺君。戦国時代ならまだしも、現代人は地方や他国との物資交流がないと生活ができないんだ。インフラが整備されてない世界、電気もガスもテレビもスマホも宅急便もない世の中で生活すると何が起きると思う?」
「無い物はないですからね。無いなりに工夫するのが人だと思います」
「君は善人なんだね。若いのに苦労してきたんだろう。俺は見てきた。群れを作る人達を。そして群れ同士で争い、少ない物資を略奪する人達を。こういう時、漫画で見たけど不思議と強者と弱者に分かれて強者がいい思いをしようとするんだ。警察は機能していない、法律もあるようでない。その群れの中の強者が作った、都合のいいルールが法になっていき逆らう者は殺される」
「そんな!民主主義の平和主義のお気楽な日本でですか?」
「少ない食料を取り合う、奪い合う、殺しあう。まだそこまで行ってない地域もあるが、時間の問題だろう。俺はそれを一時的なものにしたいんだ。日本はいい国だった。俺はそれを取り戻したい。それには仲間が必要なんだ、手伝ってくれないか、神宮寺君」
舘山寺の目は力強かった。でも祥太郎は知っていた。この男が放射能を浴びすぎていることを。そしてそれが意味する事も。
自転車で新宿を一度通り過ぎてそのまま国会議事堂のあった霞ヶ関方面へ向かっていきます。どこまで行っても生存者はいません。祥太郎は首相とかどうしてるのだろう?と思いました。国会議事堂の地下とか、首相官邸の地下とかなら核シェルターとかあっても良さそうです。それを舘山寺に聞いてみると、
「首相官邸の地下には核シェルターがあったはずだ。そこに避難できた人がいると信じている。日本の状況を伝えて元の日本に戻すんだ」
舘山寺は熱く語りますがかなり疲れているようです。自転車で静岡から東京まで、それもこの放射能の中をどんどん放射能が強くなる方へ移動してきたのです。平塚を過ぎてからは生存者は祥太郎以外は見かけなかったそうなので、祥太郎に会えて興奮しているようです。
国会議事堂は崩壊していましたがなんとなく国会議事堂だったなとわかる程度の原型は留めていました。祥太郎達が中に入ると、死体だらけです。もしかしたらテレビで観たことのある人なのかも知れませんがわかりません。顔が識別できる状態ではありませんでした。舘山寺は首を横に振りました。ここにいても仕方がないという事でしょう。そして本命の首相官邸へ向かいます。
首相官邸、祥太郎は何処にあるか知りませんでした。舘山寺もうろ覚えだったようで右往左往しながらやっとたどり着きました。というのも道路はそのままですがビルは崩壊していて景色が違うのです。交差点を曲がるといきなり雰囲気の違うエリアがありました。
「建物はないですね。地下への入り口がどこかにあるのですか?」
祥太郎はどんとこい東村山!のシェルターを思い出しながら聞きました。舘山寺は、
「さすがに中に入った事はないからわからない。だが、何かあったら直ぐに逃げれるようにはなってるはずだから、ちょっとそこらを探してみよう」
椅子をどけて、机をどけて、なんせ家の中なのに物が多い事。窓ガラスが割れて外のゴミ?も部屋の中で散乱しています。祥太郎はシェルター作るならこの辺かとあたりをつけて床を探ります。昔、どんとこい東村山!の地下室を見つけられなかったのは今でも悔しくてたまに真弓に弄られるのです。
「全くあの嫁は。歳上女房ってのはホントに。でも僕には合ってるかも、なんてね。おっとこれだ、これ。舘山寺さん、見つけました」
祥太郎は入り口を見つけました。ところが入り口が開きません。周辺のビルが倒壊した時に地面が衝撃で歪んでしまい、開かなくなってしまっています。人力では到底無理でした。祥太郎は組織の人間に重機を扱える人がいる事を思い出し、
「これは無理ですね。機械を使いましょう。新宿まで戻れば知り合いが重機に乗れますから、そこまで行きましょう」
「君の他にも生き残りがいるのか。不思議には思ってはいたが、君は一体?」
「はい。新宿のシェルターで生き延びました。仲間と一緒に」
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