第3話. 8000 年後の未来

 いやあ驚いた。異世界転生だと思ったらまさかの未来転生って生まれ変わってないからただのタイムマシンに乗っただけねっておい。どこにただのタイムマシンがあるのよ。


 しばらく途方に暮れた後、気を取直して考え始める。

 *なぜ未来へ飛ばされたのか?

 *放射能って事は核戦争でもあったのか?

 *人間はどうなった?


 考えてもわからない。お腹もすいてきたし喉も渇いてきた。周りに人はいないしコンビニも見当たらない。考えたらコンビニもラーメン屋も牛丼屋もない、そんなの生活できないじゃん。寿司屋なんて贅沢言わないからせめておにぎりの1つでも恵んでくだされや。育ち盛りのJKには食べ物が必要なのです。


 と思っても誰も恵んでくれる人どころか誰一人いない。ん?そうだ!TOKUTOKUさんに聞いてみよう。


「えーと、なんで使えるかは考えない事にするね。なんせ1万年と22年、八千年も経ってる。ん?なんかで聞いたことあるような気が、ま、いいか。さてさて、人間ってどこかにいるのかな?」


 TOKUTOKUが直ぐに答えてきます。


『います。ここにも1人』


ガク!やるなお主!


「おい、そりゃそうでしょ。でもそういう表現という事はですよ、他にもどこかにいるってことだね。私以外の人間ってどこにいるのかわかる?」


『地下500mの町にいます』


 地下!地下に町ときましたか。シェルターかなんかかな?核戦争でもあったのですかね。それも聞いてみましょう。


「放射能で植物が変異したみたいだけど、核戦争でもあったのですか?」


『……………… 』


「あれ?もしもーーし、どうなってんの?」


 この質問には答えられないようです。AIだよねこれって。なんでだろう。質問を変えてみます。


「人間のいる地下にはどうやっていくの?」


『100m先の入り口から長い階段を降りれば行けます』


 階段かよ!




 徳子は携帯の検索機能と思ってたら実はAI だったTOKUTOKUの言う通りに100m歩いてみた。目の前には崩れたビルに例の如くグルグルローザニウムがあちこちに巻きついている。よく見ると1箇所グルグルローザニウムが無いところがあった。近づいて見ると、


「扉だ。いかにもって感じだわさ。開けてビックリなんとか箱」


 徳子が扉を引いてみると簡単に開いた。その奥にはまさしくいかにもって感じのマンホールのような入り口があり鉄梯子が下に向かって伸びている。下の方は真っ暗で見えない。


「ムロ無理無理無理、最初がムロになるくらい無理。暗いの怖いしこんなんで500mってあんた、そりゃ無理ゲーですよ」


 と、どうしたものかと周りを見渡すとなぜか冷蔵庫がある。


「WHY?」


 突然英語が出る徳子、知ってる数少ない英語の1つです。周囲を見るとコンセントが無い。何年放置されているのだろう。とりあえずダメ元で開けてみる事にした。


「驚きっぱなしで何が出ても驚かないぞ。腐ったピザが出ようがミイラが出ようがどんとこい東村山だ!」


 どんとこい東村山というのは東村山高校の学生御用達の駄菓子屋さんである。この物語とは関係は、実はありますがそれは後程。徳子が叫んだのは偶然か必然か?


 勢いよく冷蔵庫を開けるとなぜか灯りがつきました。中には食料が保存されていました。


「うわあ!って驚いちゃった。なんで普通の冷蔵庫なのさ!電源どうなってるの?そうか、ここはやっぱり異世界で魔石かなんかで動いてるんだ」


『違います』


「TOKUTOKUに聞いてないってーの、なんで勝手に答えるの。もうわけわかんないじゃん!」


 そもそも徳子のスマホが使えるのも、スマホ内蔵なのか通信なのかわからないTOKUTOKU という謎のAIもどうやって動いているのかわかりません。スマホはバッテリーが絶えず満タン状態です。


「ま、まさか、放射能で動いてる?」


『……………………』


「今度は答えないんかい!」


 一人には違いありませんが、TOKUTOKU のおかげで寂しさを感じていない徳子でした。胃の中は寂しいですが。お腹が鳴ってその事に気づきます。


「腹が減ってはって本当にこの事よね。さて、これはなんだ?」


 徳子は冷蔵庫の中を漁り始めます。まず、手前にあったカップ麺のような器を取り出しました。


「なになに、説明書は日本語だ。やっぱここは日本なんだ。ええと、紐を引っ張って3分間放置してから蓋を開けてかき回す、とな」


 徳子は紐を引っ張ってみました。昔、駅弁でこういうのがあり、紐を引っ張ると熱が出て湯気が出てくるお弁当で、満員の車内でやったら大顰蹙でしたが、ここには徳子しかいません。


「蒸気でも出てくるのか?ん?何も起きてない?」


 紐を引っ張った後、何かあると怖いので少し下がって観察していますが何も起きません。とはいえ近づくのも怖いのでそのまま3分間待ちます。


「こういうのって大体3分だけど誰が決めたんだろう。某ヒーローの活動限界もそうだったような。よし、3分になるぞ。えっ!」


 3分経ったところで急に器が宙に浮き、回転し始めました。空中一回転してそのまま着地します。


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