第24話 小平への道

 小平市までは距離にして5kmほど。徳子はみんなに連れられて新青海街道を進みます。


「この道って新青海街道っていうの?マジで?本当に?」


 徳子は鈴木さんに興奮しながら聞いています。昔とおんなじ名前じゃん。新青海街道は新宿と山多摩を結ぶ街道で山の方にある青海市まで通じています。そしてなぜか、本当に何故か都会の埋め立て地、湾岸エリアと呼ばれるとってもオサレな地域に後から青梅というエリアができてしまいました。駅までできちゃってそこには有名なライブハウスが出来てしまいます。そこでタレントさんが色々なイベントなんかやるものだから、間違えて山の方の青海に行ってしまい途方にくれる人が絶えない。タレントさんも間違えて山の方へ行ったりしてもう大騒ぎ。本当になんで似た名前にしたのだろう。付けた人は気にしていなかったのでしょうが、間違えた人は絶対に恨んでいると思う。


 そんな事を思い出しながら徳子ははしゃいでいます。小平市、徳子の家があったところです。ととさまもかかさまも生きてる訳はないですし、家が残っているわけもありませんが、生まれ育った町なのでなんかワクワクします。


 新青海街道は、でこぼこ道でした。街道は徳子が知っている道幅でした。つまり徳子サイズの人達が活用していたのでしょう。道幅は徳子の体型では昔の大通りですが、鈴木さん達から見たら広くは見えないでしょう。考えたらこの新人類の人達って乗り物に乗るのかしらね?


 徳子が質問した道路名について鈴木さんが確認を取ります。


「北条様、この道はまっすぐ新宿まで続いているそうです。名称は新青海街道で間違いありません。大塚さん、そうですよね?」


「はい、そうです。私は田無までしか行ったことはありませんが、新宿まで続いていると聞いています。名称も新青海街道と小平市長が呼んでいました」


「小平市長?小平市も地下にあるの?」


「はい。人間は地上には住みません」


「なんで?」


「そういう決まりですので」


「それも祥太郎とかいうAIの教え?」


「祥太郎様は祥太郎様です」


 なんだかなあ。徳子達ご一行は町を抜けました。東村山市から出たようです。ビルが無くなり道路の周りは草むらになっています。ところどころ木もありますが草も木も見たことのない、表面にボコボコがある歪な形をしています。徳子は久し振りにTOKUTOKUに聞いてみました。


「あの草って何?」


『あれは田んぼ棒という草です』


「まさか、元はタンポポとか?」


『正解!』


 どうやったら可愛いタンポポがあんなボコボコになるのよ!やっぱり放射能なのかしら?徳子は前を歩く鈴木さんに聞いてみました。


「鈴木さん、放射能って知ってる?」


「わかりません。わかりませんが、近藤市長が北条様の知りたいことは各市長に聞けばわかると言っていましたので、小平市長に聞くのがいいと思います」


 そういえば各市長はあたいが来る事を待っていたって言ってただわさ。行けばわかるってことね。



 徳子達が歩いていると前方の道路をなにかが横切ります。軽トラックのような大きさで、色が黒い。熊かと思いましたがどう見ても巨大な犬もどきです。犬もどきは草むらに入った後、こちらを振り返り徳子達を見ています。


 犬もどきにはよく見るとツノが生えていて目が真っ赤です。黒いボディに真っ赤な目、どこかで聞いたような気もしますが気のせいでしょうか。徳子は慌ててTOKUTOKUに聞きます。


「あれって犬?」


『元は犬です。今は鬼犬と呼ばれている魔獣です』


 あれが魔獣。しかし田んぼ棒といいネーミングセンスないね。


「北条様、お下がりください。あれは魔獣です。群れを成すこともありますので要注意です。大石さん、高木さん、お願いします」


 魔獣を定期的に狩って食料にしているという大石さんと高木さんが前に出た。手には槍のような武器を持っている。8000年も経ってるのに武器が槍?鉄砲とかミサイルとかないのかね?せめて光線銃とか。


 大石さんが槍を構えて鬼犬に向かって投げつけます。投げるのかよ!外れたらどうするの?と思ったらやっぱり外れます。


「あかんじゃん」


 ところが、鬼犬が槍を避けたその方向に高木さんが回りこんで槍で一突き、一瞬で倒してしまいました。どうやらコンビネーション技だったようです。


「大石さんはわざと外したの?」


「鬼犬は癖がありまして、右に槍を投げると左へ逃げるのです。すばしっこいので投げても当たりませんから、高木さんの方へ逃げるようにしました」


 ふーん、頭は悪くはないんだ。話はなかなか通じない事多いけど。


「他に武器はないの?槍だけだと不便じゃない?」


「はい。ですが、槍で戦える魔獣としか戦わないので」


 ん?てことはですよ徳子さん。槍では戦えない魔獣もいるという意味ですよね徳子さん。とそこに空から音がしたような気がして咄嗟に座りこむと、なにかが通過していった。


「あれは鳩ポポではないか?人間を襲わないはずでは?」


 鈴木さんが慌てて徳子を庇います。鳩ポポってやっぱり鳩?


『その通り!』


 TOKUTOKUがまた勝手に答えます。鳩ポポは空へと消えていきました。

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