第8話 再び地上へ
徳子は区域長に礼を言ってトンデレラ城を出ようとしました。色々と話は聞けましたが、それ以上の事は分かりませんでした。なぜ?と聞いてもそういうものだ、そう教わったとしか答えて貰えないのです。ところが出て行こうとすると区域長に呼び止められます。
「北条様は記憶を失われているのに色々と覚えておられる。やはりお名前持ちのお方は違う」
気付かれたかと思ったらそうではなく本当にそう思っているようです。そりゃ記憶失って無いからだわさ。矛盾してるって途中で気付いたけど、貫いてよかった。強気でいけば意外と怪しまれないものなのです。お名前持ちか、そういえばそれ聞くの忘れてた。北条が姓で徳子が名前ってこの人達すぐにわかるのに名前持ちが珍しいとか、なにそれ?
「どういう人がお名前持ちなのですか?」
「わかりません。お名前持ちの人間は創造主に連なる者と伝えられております。申し訳ありませんがこの区域ではそこまでしかわからないのです。それ以上の事をお知りになりたいのでしたら東村山市長のところへ行くと良いでしょう。この区域で一番の知識持ちです。先程の鈴木さんを案内に付けますので」
なんか勝手に話が進むぞ?そうか、きっと私が可愛い美少女だからだって思ったけど、この人達目が無かったんだった。待っていると鈴木さんが現れて案内しますというのでトンデレラ城を出ました。
あれ?なんかさっきどっかで聞いたような名前があったような。そうよ、東村山市長!今の市長って誰だっけ?そうだ、近藤さんだ!って違う違う、そこじゃあない。このエリアに近いところに東村山って場所があるって事だよね!という事はですよ。私が未来へ、えーとタイムスリップした場所は同じ東村山という事ですよ。
鈴木さんはそんな事を気にしている徳子を無視してどんどん階段を登って行きます。すぐに見えなくなってしまいました。
「ま、待ってえーー、鈴木さーーん!」
「ああ、すいません。いつもの調子で登ってしまいました。ここで待っていますから登って来てください」
「エレベーターとか無いのですか?」
「ここにはありません。どこか遠くの区域にはあるそうですが見た事はありません」
冷蔵庫があるのになんで階段しかないのか?区域長にエネルギー源の事を聞いてもわからなかったし、ホントに未来なのかね。
途中休み休み階段を登っていきます。登りの方がキツイのです。途中休憩の時に鈴木さんに、
「そういえば冷蔵庫の補給って定期的に行なっているのですか?」
「いえ、補給の合図が来た時だけです。今回は200年ぶりの補給でした」
マジか!あの赤ランプが合図になっていて地下でそれを受診してって事ですね。
「合図ってどういう?」
赤いランプは目が無いのだから見えないはずだ。
「音です。特有の波長なのでわかります。北条様のお声も変わった波長ですよね。この区域には無い波長です」
波長かあ。そういえば区域長も波長がどうとか言ってましたね。
「200年前はどなたが食料を消費したのでしょうか?」
「昔の事ですので正確ではないかもしれません。冷蔵庫の中身は半分まで減っていました。ところはそこには誰もいなかったのです。おそらく旅のお方が一時休憩されていたのだと思います」
旅のお方か、控えおろう、ってのは違うか。
「旅ですか?旅の目的って何なのでしょう?」
「わかりませんが、世の中を調査している人達がいます。あの冷蔵庫は旅のお方がひもじい思いをしないように置かれています」
「ここは管理区域A3でしたよね。他の管理区域も入口が同じようにあって冷蔵庫があるのですか?」
「A地区ではここだけです。各地区に一つはあると聞いていますが本当かどうかはわかりません。私は私の役目を果たすだけです」
鈴木さんと話しながら休みながら階段を登っていきます。どのくらい登ったのか、どのくらい時間が経ったのかわかりませんと思ったらスマホを持っている事に気付きました。時計あるじゃんね。
「もう6時間も登ってたのか。疲れるわけですわ。鈴木さん、あとどれくらいですか?」
「もうすぐです。目とかをお持ちの北条様ならお分かりになるのではないでしょうか?」
そう言われて上を見上げると確かに明るくなっている。もう少しだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます