第36話 戦争とワクチン
翌年、C国がT国に攻め入るという大事件が起きた。戦争が始まったのだ。同民族だから統合すべきというC国と考え方が違うから独立したT国の間では長年確執があったのだが、ついに武力行使に出たのです。周辺諸国は非難はするもののそれだけしか行動を起こしません。お互いが勝ったら得をする方に食料や武器の援助はするものの直接介入はしないのだ。戦火を広げたくないという思いはあるが、勝って欲しくない相手もいるという事だ。折り合いをうまくつけてくれる事を考えつつ自国が少しでも有利になるように陰で動いている。金、エネルギー資源、戦争の裏で様々な欲望が渦巻いているのです。
そして世界中を新ウィルスが襲いました。このウィルスに感染すると高熱、咳、下痢と風邪に似た症状が出るが、重症化しやすく老人や持病がある人達はウィルスに勝てず続々と命を落としていった。大国は率先してワクチンや特効薬を開発し、それを他国へ売りつける事で利益を得ている。政府が費用を負担するといい国民はワクチンを打つが効果は数ヶ月しか持続しないため、何度も何度もワクチンを打つことになる。それは無料という名の税金使用、つまり国民の金が他国へ流れているのだ。
「戦争も新ウィルスも誰かが得をしている。そしてそれにはうちの組織とライバル組織の、ZAGPが絡んでいる」
祥太郎は鈴木と会っていた。半年に一度の定例会と呼ばれる会合で研究結果の報告をしている。
「ライバル組織の名前は初めて聞きました。戦争を起こしているのですか?」
「そうだ。奴らは核戦争を起こして人口を減らそうとしているんだ。我々とは違う」
「じゃあ、あのウィルスは?」
「あれは偶然だよ。ただ、ワクチンができるまでが早すぎただろう。あのワクチンは組織が開発していたものだ。製薬会社へ情報を流している」
「???、おかしな事を言いますね。今、ウィルスが流行る前からワクチンを開発していたって言いましたよね?」
「そうだ。世の中はそういうものだという事だ。出来事には人の意志があるのだよ。天災以外の事件には人が絡んでいる」
政治と金、国益と国防。色々な欲望が絡まりながらバランスを取りつつ世の中は回っている。そしてその裏で国を越えて活動をしている組織があるのだ。その組織は各国の要人、政治家と繋がり世界を導こうとしている。
「神にでもなったつもりですか?」
「誰かがやらねばならない。人口が増えすぎた事によって、地球のバランスが大きく崩れてしまった。食料もエネルギーも人口を賄うだけの量は存在しないのだ。栄華を誇った恐竜が滅びたように、地球は何かをしてくる。このままでは人類が少ない資源を取りあって滅亡を迎えるだけだ。形だけの平和主義を語る国民、自分すら良ければという政治家、そんな奴らには何もできない。何かが起きれば責任をなすりつけ合うだけだ」
確かに政治家に何かができるとは思えない。鈴木の言うことも理解できる。といっても核戦争やらウィルスやらで人口を減らすってやりすぎではないのか?
「他に方法はないのですか?」
「君ならどうする?どうやって増え続ける人口を10年で10億まで減らす?」
そう言われてみると確かに困る。男だけとか女だけになればすぐだけど、それじゃあ滅亡しちゃうか。
「わかりません。ですが賛同はできません。直ぐにはわからないけど何かあるような気もします」
「そんな曖昧な事を言っている余裕はない。すでにZAGPは戦争を始めたのだ。キッカケがあれば直ぐにでも核戦争は起きる。それでは環境が破壊されてしまい生物が生き残れないかもしれない。我々の組織が先に成果を上げなければ世界が大変な事になるのだ」
「核戦争は止めなければ。それに僕の研究が必要なんですね」
「そうだ。北条徳子が持っていった物、君にはもう想像がついているのではないかと思っている」
「核ミサイル発射装置の無効化ですよね。特殊な波長で電子機器を動かなくする。徳子ちゃんが持っていったのはその装置の起動に関する物」
「やはり君は素晴らしい。その装置の起動スイッチだが、開発者はすでにこの世にいない。東村山での実験は成功していた。すでに装置も各国の核発射装置の近くの地下に配置済みだ。ただ、起動スイッチがないために動かす事が出来ない」
「特殊な電磁波発生装置だと思っています。ですが、そのスイッチというのが何なのか?それが徳子ちゃんを異世界に飛ばしたのだとすると一体どんな力なのか?」
「異世界?あのスイッチにそんな力はないだろう。電磁波を出すのは本体の装置であれは装置を起動させるための電波を飛ばすものだ。少し複雑だがあのスイッチは核ミサイル発射装置のボタンが押された時に出る特殊な波長をキャッチして起動する仕組みだ。あの起動スイッチがないと核戦争を止めることはできない」
異世界でなければどこなのか?それはともかくでは何で僕に波の研究をさせているんだ?
「装置が完成していて設置済みならば、いざという時に稼働ができればいいのですよね?それならば起動装置を丸ごと作り直した方がいいのではないですか?」
「その通りだ。だが、核ミサイル発射装置との連携がある以上、この仕組みしかないというのが組織の結論だ。起動スイッチはキーになっている。電波キーと我々は呼んでいるが装置にメスの3Dボックスという鍵箱が入っている。起動スイッチ側から電波飛ばしてその鍵箱の隙間を埋める方式だ。君にはそれを作ってもらいたい。君だけでは難しいだろうから、組織からAIを提供する。AIと協力して起動スイッチを複製するんだ。北条徳子を見つけるか、君が起動スイッチを複製するか、どちらかが間に合わなければ核戦争は起きる」
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