第46話 生き残り
A国の核ミサイルがY国に向けて発射されたのとほぼ同時に、核保有国で核を落とされた諸国からも核ミサイルが発射された。Y国とC国からも反撃のミサイルが飛んだ。どこの国も祥太郎と組織が設置した装置の存在にきづき装置を解除したのだ。そして最初の核攻撃から4日後、過去最大級の核爆弾が世界中で炸裂した。
日本へは攻撃が無かったが、世界中で起きた核爆発により日本は完全に孤立した。世界のどこの国とも連絡が取れない。
祥太郎が最初に地上に出た時、世界中で2回目の核攻撃が行われた後だったという事になる。だがその情報はその時には得られなかった。日本では国民の多くが都心に住む家族と連絡が取れなくなり、大騒ぎになっている。ネット回線も一部の区域を除き使えなくなっている。一部AM ラジオや地方局のなんとか映るテレビが情報源だった。地方報道局もヘリコプターを飛ばして情報収集に必死だったが、2回目の世界中で起こった大規模の核爆発により、地上の大気に異常が現れていた。電子機器が異常動作を起こすようになったのだ。それは爆心地に近いほど酷く、報道のため飛んでいたヘリコプターは操縦不能となり各地で墜落した。テレビやラジオも途絶え、情報が完全に遮断された。地方では最初影響が少なかったが、徐々に悪化し、食料の争奪戦が始まっている。
最新式の自動車はエンジンがかからない。電子制御が動かないのだ。旧式の自動車や自転車が大活躍だ。物流が止まっているため、デパートやコンビニの食料が尽きると自給自足していた農家が多い地域へと人が移動し始める。治安が悪くなり、暴力、盗みが横行するが警察も機能していない。
そんな中、不思議と集団ができリーダーが現れる。生き残るためになんとかしようとするサガなのかもしれない。
地方の国会議員は最初、なんとかしようともがいたのだが殆どの人達は自分の生き残りを優先し始め、各地の集団の中に入ってリーダー気取りを始めた。その中で、志が高い人がテレビ局に集まっていた。
衆議院議員の舘山寺勇太は、静岡第三テレビの建屋に入った。そこには逃げずになんとか報道をしようと頑張って残っている人達がいた。
「君達はなんでここに?」
「貴方のことをテレビで見たことあります。舘山寺さんですよね。局長始めお偉いさんはもうどっかへ行っちゃいました。僕たちは何かできる事がないかと思って局に来たらみんながいて、ってところです」
「私も同じ考えだ。情報交換をしないか?わかっていることを共有しよう」
「今まで入った情報です。日本に落ちた核は五ヶ所、東京、札幌、名古屋、大阪、博多です。海外にも落ちたようですがはっきりしません。どこの国とも連絡が取れていません」
「例の戦争がきっかけで核を使ってその報復ミサイルが飛んだのか?」
「僕の推測ですが、途中から環境悪化が加速した感じを受けています。何回かミサイルが飛んだと思っています。ただそうなると世界は壊滅ですよね。僕らが生き残ってるのが奇跡なのかもしれません」
「ガイガーカウンターだっけ?放射能を計測するやつ、どっかにあるのか?」
「はい。局の所持しているのがあったので計測を始めたのですが、日に日に放射能が増してきています。それと感じませんか?なんか空気が電気っぽいっていうか?」
「ああ、静電気が飛びやすくなった気がするな。しかも火花が目に見えるくらい強い」
「それが、電子機器が使えなくなっている理由じゃないかと。もしかしたら地上にいたら危ないのかもしれません」
「とは言っても逃げるところなどないな。住民は食料を求めて田舎の方へ移動したようだけどすぐに限界がくる。それよりも都心付近で崩れてない建物の中の方が食料はあるんじゃないのかな?」
「停電してますから。カンズメとかなら。それを考えると海の近くで魚を捕るとかの方が現実的じゃありません?」
「テレビで見た無人島サバイバルみたいだな。冗談はさておき、我々人類はこの危機を乗り越えて未来へ繋げなくてはならない。それには指導者が必要だ」
「だったら、舘山寺さんが適任ではないですか?逃げ出した連中なんかあてにならないし」
「各地に同じ考えの人達がいるはずだ。その人達と連絡が取れる日がきっと来る。君達はまずは生き延びる事を優先して欲しい。報道も大事だが今は誰も受信できる状況にない」
「そうですね。舘山寺さんはどうするのですか?」
「東京へ行ってみる」
「それは危険です。放射能だって!」
「自転車で行くから、到着する頃には薄まってるよ。それにどこにいても同じだとは思わないか?ここにいたって放射能は日に日に増えているんだろ?海沿いを釣りでもしながらのんびり行くよ」
「わかりました。僕らはここで出来る事をやります。お気をつけて」
舘山寺は自転車で東京へ向かった。途中、グループ同士の抗争を何回か見たが無視した。食料の取り合いに巻き込まれてもいいことはない。三島を過ぎて箱根を越えて小田原に着いた。そこでは漁船が活躍していたが燃料が切れそうだという。それとレーダーが使えないそうだ。食料が調達できる地域では暴動は起きていなかったが、舘山寺は時間の問題だなと思っていた。
平塚辺りから景色が変わった。火事が起きたのか住宅地が所々無くなっている。横浜は別世界だった。廃墟だ。人の死骸がゴロゴロしていている。普通ならカラスとかがきそうだが鳥の姿すらない。コンビニには食料がそのまま残っていた。放射能を浴びた食料は食べても平気なのだろうか?舘山寺には判断がつかなかったが、空腹には勝てず久しぶりに腹一杯食事が取れた。バックにもたくさん詰めて、東京へと向かった。目指すは爆心地だ。
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