第15話 穴の中
サモジのお二人が揃って笑っている。冗談でもこっちは笑えませんよ全く。カツ丼出なかったし。でも、あのアジア系外国人は現場に戻ってたって事か。
道路の修繕が始まるようで工事業者が下見に見ていました。どうやって塞ぐんだろう、こういうの?興味津々で聞き耳立てて話を聞いているとサモジの佐々木さんが寄って来て同じように聞き耳を立てています。刑事なんだから堂々と聞けばいいのにと思いましたが、そういえば何か背景があるようでしたっけ。警察も自由に動けない案件のようです。
「これは穴を土で埋めて慣らしてからじゃないとコンクリ張れない」
「でもこの穴、底が見えないぞ。どうなってるんだ。地下鉄工事なんかしてないだろう」
ここは一応都ではありますが県境に近い田舎の方なので地下鉄とは縁がありません。
「中の土はどこへ行ったんだ?地盤沈下しているようにも見えないし」
工事業者はサーチライトを準備しています。穴の中を確認するようです。それを見た祥太郎は、
「佐々木さん。警察は穴の中を調べたのですか?」
「それがな神宮寺君。普通調べると思うだろ?ところがこの穴については上の方から警察は手を引けと言われてな。でもここで起きた殺人事件からは手を引くわけにはいかない。警察にも意地があるからな」
「僕にも意地がありますよ。徳子ちゃん見つけないと。僕はあのアジア系外国人が穴の発生に絡んでいると思っています。さっき犯人は現場に戻るって言ってたじゃあないですか。きっとあの人達が何かしたんです」
「そうなんだろうな。上から捜査の邪魔が入るって事は政治がらみ、外国人が絡んでるとなると大使館とかからの横槍かもしれないし可能性はあるよ。でも警察は殺人事件の犯人を追っていたらその犯人が殺されていた。ではその犯人を殺したのは誰だ、そいつを追うだけなんだよ出来ることは。だから、手がかりを探しにここに来たんだ。現場100回っていうだろう」
やっぱ現場100回なんだ。てことはですよ、
「佐々木さん。あの穴の中は何としても調べないとですよね?絶対に何かありますよ!」
「そう思うだろう。実はな、内緒だぞ。昨日の夜中に誰かが穴の中から出てきたって目撃情報があってな。それまで穴を塞ぐ工事の話が出てなかったのに今朝急に工事するってなったみたいだ。だから工事業者もあたふたしてるだろ」
「へえ、そうなんですか。てことはですよ、もう証拠が残っていないとか?」
「よくわかったね。どうもトラックが来て夜中に何か積んでったらしいんだ。で、すぐに工事だろ。世の中は上手くできてる。でもな、何か手がかりが残ってるかもしれないだろ?佐久間さんが工事を見張ってれば何か出てくるってうるさいんだ」
それが聞こえたのか、佐久間さんが割り込んできた。
「おい、佐々木。余計な事を素人に話してんじゃねえよ。しかもそいつは犯人かもしれないんだぞ!」
「佐久間さん。ちょっと待って下さいよ。僕はアジア系外国人が死んだ時に警察にいたじゃないですか?ちゃんとアリバイがありますよ」
「わかってるよ、冗談だ。だが、もう首を突っ込まない方がいいぞ。捜査に介入できるやつが相手だ。警察は君の事は守れない、事件でもない限りはな」
佐久間さんはそう言って佐々木さんを連れて祥太郎から離れていった。サモジの2人は穴の中を照らすサーチライトが用意されたのを見て、工事業者が穴の中を見始めるのを待って近くへ寄って行く。祥太郎も近くへ行きたかったが佐久間が目で来るなと言っている。仕方なくその場を離れた。
コンビニで立ち読みして時間を潰す事にした。少ししてからまた穴を見に行くつもりだったが、外をちらっとみると、例の美女がいた。アジア系外国人美女だ。祥太郎は慌てて本棚に雑誌を戻してコンビニを出て、その美女を尾行しはじめた。ストーカーじゃないよ、ただの尾行だよ!
サモジの2人に声をかけたいところだったが、そんな事をしていたら見失ってしまいそうなので諦めた。美女は早歩きで駅の方へ向かっている。後ろ姿も美しい女性だ。年齢は20代半ば、身長160cm、体重47kg推定。くびれがはっきり、うん。これぞ大人の魅力!なんてもしかしたら殺人事件の犯人かもしれないのだから鼻の下伸ばしている場合では無いのです。尾行尾行、ひたすら尾行します。
美女は駅を通り越してなぜか何もない田んぼの方へ向かっています。そっちって南村山高校の方じゃん。もしかして学校の先生とか?なんてあるわけないじゃん。そのまま歩いていき、あるお店に入って行きました。
「ここは、駄菓子屋?」
美女が入っていったのは徳子ちゃん御用達の駄菓子屋、どんとこい東村山!というお店でした。
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