第34話 秋葉原ダンジョン

 転移を終えるとそこには…


「カムイさん、お疲れ様!」

 相変わらずの格好の杏が立っていた。(リュックを背負って、ミリタリー帽子に伊達メガネ、チェック柄のシャツにジーパン履いてる~いわゆるオタクルック)


「ありがとうな、杏〜」

「いえいえ秋葉原ダンジョンへの登録もしておきましたから、そのまま入って行っても構いませんよ」

 那美の為に登録した仮カードを受け取る。


「あ〜お二人ともこんにちわ〜杏と呼んでくださいね」

「はい!俺、甲斐道那岐です」

「姉の那美です」

 オドオドしていた2人だったが杏が声をかけてくれたおかげか、挨拶する甲斐道姉弟


「杏~暫く斑鳩ダンジョンは例の事故で潜れないから予定変更、暫くはこっちで遊び惚けても大丈夫だぞ」

「了解!じゃあ私行くね」

「ああ、何かあったら連絡よろしく」

 杏は俺達3人に手を振って秋葉原の街に消えていった。


「転移って凄いのね~ここ秋葉原なの?」

「そうみたいだね~実感湧かないけど…」

 那美は初めての転移で驚き、那岐も2回目だがまだ不慣れなようだ。

「さて2人共、いくぞ」

「「うん」」

 2人は戸惑いながら、こうして秋葉原ダンジョンへ


 そして目の前に秋葉原ダンジョンとデカい文字で書かれて、秋葉原と言うだけで萌えなイラストが沢山書かれている。

「斑鳩ダンジョンと大違いだな〜」

「本当ですね…」

「可愛い〜」

 那美はイラストに反応して喜んでる。


「さあいくぞ」

「「おお!」」


 まあ実は東京自体、俺も初めてだし秋葉原なんて、いつかは行きたいと考えてたから…

 まあ今日は那美の件があるからまた時間がある時に遊びに来よう…


 入り口を降りるとさっきの秋葉原の街中を凝縮したような風景が広がった。

 秋葉原探索者現場事務所が1番最初に建物として設置してあって、その後はメイド喫茶などやアニフレンドって言うアニメ,漫画の専門店がある。


 ただほぼ一直線上に左右に店があってそのまま真っ直ぐに進むと

【この下からダンジョン1階】と看板がある。

 小さい小屋に守衛室と書かれていて中年の男性が見張っている様で、俺と那岐は探索者カードを見せて、那美は仮カードを見せていよいよダンジョンへ…


 しかし下に降りてもダンジョンと言うよりは空があって遠くに森林地帯が見える…

「え?ここってダンジョンじゃないの?」

「ダンジョンって別の場所にあるのを階段が別の次元に繋がって行けるって話もあるけどまだ判明してないらしいな」

「兄貴!斑鳩ダンジョンでも森林地帯があるのは知ってるけど同じような感じなのか?」

「微妙に違う気がするな…」

 まあ同じ風景なら繋がってる可能性もある…訳ないか…

 と言うか…ダンジョンなのに何で店があるんだ?

 流石にメイド喫茶では無いようだが…

「兄貴〜あそこ何の店なんだろ?」

「入ってみるか」


 店に入るとショッピングセンターにあるフードコートみたいな雰囲気となっていてそれこそ麺類、バーガー系、和食、洋食と様々な種類が…しかし店員さんは見当たらない。


 気になって2人を先に座ってるように言いカウンターへ行くと店内の扉から、メイド服を着た女性…あれ?男?女装?の人が近付いてきて…

「いらしゃいませ〜ご注文を承りますますわ!」

 咄嗟に3人分のバーガーセットと炭酸飲料を頼み

「承りました〜お席でお待ちください〜」

 元気よく準備し始めてる…


 5分程待ってると先程の方が3人分のトレイを豪快に両掌にトレイを持ち、トレイとトレイの間にもう一つのトレイを置いて持ってくる。

「お待たせしました〜料金はお帰りの際にお願いします〜」

 ささっと去っていく…

 扉の前に二体の機械人形と清算する為の機械が設置してあるのに気付く。



 久しぶりにこうやって3人でフードコートで食べてると懐かしく…

「昔はよく師匠と4人で食べてたな~」

「…そうだね~いつも奢らされて嫌だなって言う割には顔は喜んでたよね」

「だな~」


「でもなんか信じられないわ…身体がこんなに楽に動かせるなんて〜本当久しぶりな気分よ」

「元の身体もダンジョンに潜ってれば、すぐ回復する」

「そうそう~それってどう言う事なんだ?兄貴〜」


「一度もダンジョンに入った事のない人が潜ると、m粒子とD-SEEDが同時に身体に入って、スキルが定着して使えるようになるのが少し時間がかかる…だがD-SEEDだけ身体に取り入れた人がダンジョンでm粒子を身体に入れると、身体に馴染むまで最速で15分程〜30分かまあ人それぞれらしいけど、しかし那美は1分とか3分とか言ってたから、馴染む前にダンジョンを出た可能性が高い〜その為、D-SEEDがm粒子を求めて暴れたり暴走したりするそうだ…それが身体の不調の原因だな」

「え?姉貴の身体にそのDの何とかって種?が悪さしているって事?」

「ああ〜身体の免疫機能が働いてアレルギー反応に近い状態を引き起こすらしい〜だから簡単に言うとm粒子を求めて…魔力欠乏症になったって事だ」


「…」

 2人はその話に呆然と聞き驚いてる。


「問題はその種をいつ貰ったのか?だな…実は俺もいつの間にか、その種を身体に宿していたらしく…俺の場合は15分ぐらいで馴染んだのかもしれないな…変な違和感と言うかな…すぐにスキルが発現したらしい…普通の人は同時に取り入れて早くて1日、遅くても1週間迄にはスキルが発現するんだよ」


「えーじゃあ俺もスキル発現してるのかな?」


「後で秋葉原にある探索者事務所で見ればいいよ」

「分かった」

「…」

「大丈夫か那美?」

「あ、うん大丈夫だよ」


 バ―ガーも食べ終わり一息つくと…


「那美、トリッカーOFFって言えば解除されるよ」

「うん分かったわトリッカーOFF」

 黒スーツから普段着へ戻る。


「姉貴…大丈夫か?」

「うん…さっきと同じくらいか…凄く気分が良いわ」

 俺は【スカウンター】を再び付けてスキャンする。


「正常になったみたいだな~良かったな那美」

「ありがとう…アキ…那岐も心配かけてゴメンね」

 那美の久しぶりの泣き顔を見て安心する。


「姉貴…良かった」

 那岐も…嬉し泣きだな

 俺も泣く…


 こうして那美の身体は正常になった…


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る