第10話 E級昇級試験…D級へ

 F級からE級へ昇級するには…

『ゴブリン種、10体を退治する事』らしい


 今やオーガとも渡り合えるから問題ないのだが…


 ピクコロさんのスキル上げはゴブリン程度では上がらないので、レベルが一番低いエルリ―で探索~2階層を【兆し】【気配広域】を発動しながらの移動。何人かの探索者とすれ違う事もあるのであくまでも飛んでるように見せない様に、足は浮かせつつ地面スレスレを【武空術】で移動中~



 いた!


 おお、6匹か~ゴブリン4体、ホブゴブリン2体か…


 まだ気付いてないな…


 【爆力】発動!

 攻撃力を圧倒的に上げるが防御力が下がる技な為、使用は気を付けて~


 更に【炎王拳】!!

 凱王拳と戦闘力を上げる効果は同じで、炎の効果で次に放つ技の熱さを上げる効果も加味して…


【不意打ち】!!!

 これで相手の虚を付ければダメージは倍々…


 そして…


めんー」


めつー」


「――あああ!!!!」


【火面破滅波】!!!!


 溜めて範囲を広くした熱線がゴブリンの群れに放たれていく!!!!


 ゴオオオオオオー!!!


 ダンジョンの半分の通路を塞ぎつつ白い熱線は直撃する!




 …やりすぎかな?


 魔石しか落ちてない~


 普通に狩るか~



【キャラインストール】エルリ―



 まずは見つけた群れに…

 

 1匹目

【牙斬】!

 ≪ゴバシュー≫

 斬撃が油断しているゴブリンにヒット!


 そして~

【縮地】!!

 群れの中に入って!


【牙圓斬】!!!

 ≪ガハー!グホー!!ウグッー!!!アガアー!!!!グオ!!!!!≫

 この刀技は基本的に接近し過ぎた敵を迎撃するカウンター技だが…

 無理矢理、群れの中に入って刀を全周囲に振りぬいて不可視の斬撃が敵5体を襲う!


 …まあ6匹いたけど…2体多いけどこれで10体達成したな~

 魔石を拾い…




【瞬間移動】発動…鈴木先生へ



 着いたのは医務室~


 (あ…)


 鈴木先生が……眠ってる…起こさないように出て行こうっと~


 そう、ここは探索者事務所の1階医務室。


 この前、事件の際に知り合った医務室の鈴木先生に頼んで転移のマーカーの対象者にして良いかと尋ねたら、了承を得たのでこれからは安心して転移できるというもの。

 安藤さんは女性だからね~何かあったら困るし、先生も自分が居る時は全然OK…との事。


 まあ今は眠ってるから気付かれないように…ソーっと出ていく


 そのまま2階に上がりクエストの報告を~



「おかえりなさい…ってもう終わったんですか?まだ1時間もかかってないですよ」

 安藤さんは驚いた顔で対応してくれる。


「ええ~群れがいたんで…早く終わりましたね。」

 苦笑いすると安藤さんも慣れたものなのか?

「カード預かりますね…カード検索っと…はい10体確かに確認しました…これでE級昇格です…まだ時間も早いしD級も受けますか?」

 そんなあっさりと昇級って良いのか?


「え?いいんですか?」

「はい~次はホブゴブリン10体ですね~あ…2体もう倒してますからあと8体で如何っすか?」

「はい~では行ってきます!」





 そして今度は3階層…


【兆し】【気配広域】発動


 …


 …


 …


 いた~


 …ってこれは…不味いかな?


 俺は【武空術】で急ぐ!






 現場に着くと…


 うわ!…これは…


「おい!これはどうなってるんだ?」

 今の惨状を壁に項垂れて座ってる人に聞く。


「…あ…あ、助けて…みんながみんなが…」

 俺に気が付くと身体が動かないのか…倒れながら助けを求めている声が…


 広い部屋に30体か?

 恐ろしい数のゴブリンとホブゴブリン、ゴブリンシャーマンやゴブリン…ロードまでいるのか?


 見たところ首のカードプレートがE級パーティの2組10人以上の探索者がゴブリンの群れに囲まれて前衛が押し負けようとしていた。


「くそ!もう抑えきれないぞ」

「ふんばれ!」

 2人のリーダーらしい戦士達が盾で抑えながら叫ぶ!


「助けてくれ…このま…までは…」

 アタッカーらしい戦士が倒れて後衛が何とか回復しようとしてるが近付けない。


 俺は…




【キャラインストール】孫空冴

 エルリ―から孫空冴に変わった。


【不意打ち】発動!

 そして!

【凱王拳】《がいおうけん》3倍だあああ!!!

 赤いオーラが身体から吹き上がる。


【魔弾】連続発射!!!

 武空術で空中に浮かんで両手から魔弾をゴブリンの群れの上へ広範囲に放つ…30発…


 30発程撃った魔弾は空中で静止した状態で次の指令を待つかのように浮かんでいる。何匹かのゴブリン達は俺に気付いたがもう遅い!


 いくぞ!


【魔弾包囲陣】!!!!

 「いけー!!!」


 俺の指示の元、空中に静止していた無数の魔弾が群れの中に突っ込んでいく。


 ≪fkdjaosppslldisjfpjpemel;fml;;mflmasmlf;saofjospjifopfjop≫


 群れに着弾した魔弾は不意の攻撃で大混乱に陥ってるのか…声にならない叫びを上げている。しかしまだだ!


【拡散双気弾】《かくさんそうきだん》!!!

 今度は両手から大きな光弾を上に放つと…


「いけえええー!!!」

 群れの上から大きな光弾が無数に分散して落ちていく…


 ≪aivkdpsdmgl;smlgml:dmsla;jdion;amf:絵gsvんふぁ;slmf:l」≫


 またも声にならない叫びでさっきまで劣勢だったのが噓になるぐらいに混乱に陥ってゴブリン達が倒れていく。



 しかし…


 ≪オオオオオオオオー≫

 さっきのゴブリンロードらしき奴が叫ぶ!!


(やはりロード種は凄いな…一瞬で混乱を抑えやがった)


 30体いた敵も10体程にまで減っていたが残ってるのが…


 ゴブリンロード、シャーマン、ホブゴブリン8体…

 しかもシャーマンが怪我しているロードを回復している。


 こちらも前衛が警戒しながら後衛が回復に努めてる。

 パーティの連中は俺に気がついてるが、敵を警戒しているのか?油断せずに敵の出方を見ている。



 俺は【天地玉】で自分の生命力と精神力を回復に回す…

 劇中本来は敵への攻撃しか使えないがこのスキルの場合、身体の消耗した力の回復ができる。


 結構、消耗が激しい…

 まさかこんな事態になるとは考えて無いから計算外だったと言える。




 どうやら向こうの方が回復が早かったみたいだな…しかし警戒してるけど一向に攻めてこない。

 もしかして逃げようとしてる?

 そしてこっちも回復を終えてはいるが似たような感じか〜

 

 ん?


 あれ?



 もしかして俺にお互い警戒してるのか?


 まあ俺は空に浮かびながら変な事してるように見えるだろうな…


 回復してるだけだけどな…



 キ――ン!



 1分程だけど、何とか回復したか…全快では無いけど、残りの殲滅できるぐらいはいける。


 俺は地上に降りるとリーダーらしい人物に話しかける。

「そっちのパーティの現状はどうなんだ?」


 俺の格好を見て怪訝そうな顔だが…

「あ…ああ、そのありがとうな、助けてくれて…こっちは半分がもう戦闘不能だ、さっきの回復でもう打ち止めだから撤退したいんだがな」

 辛うじて動ける人もいるが3人ばかりは完全に意識が無い…


「それはあちらも似たような事を考えてると思うよ…こっちの出方を見定めてるからな…俺がここで奴等を牽制してるから撤退してくれないか?」

 驚いた顔で、しかし心配そうに

「…しかし、それでは君が…」


「大丈夫…俺にはとっておきがあるから心配しなくても良いぜ!」

 俺は目だけ敵を見て答える。


「分かった…えっと名前は孫空冴で良いのか?それコスプ…」


 ?!


 動く!


「どうやら向こうはこっちに仕掛けるようだな〜ここは任せて早く下がれ!」

 俺は叫びながら前に出て彼等を後方へやる。

「すまん…」

 無念そうな顔で通路に進むパーティのリーダーらしき男性が通路へ下がっていく…



 ≪≪≪ゴオオオオオオー!!!≫≫≫


 3体ほどのホブゴブリンが追撃しようとしている~


「おっと~ここから先は行かせないよ」

 俺はホブゴブリンの行く手を遮って手を広げ邪魔をする。


 ≪≪≪ガゴオオオオオオー!!!≫≫≫


 完全に俺にターゲットしてきた~

 後ろのロードとシャーマンは…動かない?

 何故?


 ≪≪≪ガアーー!≫≫≫

 棍棒を振り降ろすホブゴブリン達…


「へ!そんな緩慢な動きには当たらないぜ!」

 振り降ろしてきた棍棒を避けて…

 その棍棒の上に乗って!

「おかえしだ!」


 真正面に顔に右のハイキックを直撃!

 その反動で左のヤツに回転しながら上段回し蹴りで首にヒット!!

 更に回転して右側のヤツに回し後ろ蹴りを当てる!!!


 ≪≪≪グ!ガオ!!グボ!!!≫≫≫

 3体のホブゴブリンは…まあ大してダメージ入ってない…が牽制にはなったな。

 俺は少し下がって~


【キャラインストール】ブライン


 すぐさま鞘と柄を握り、更に後方へ下がる。


【円展開】発動!


 既に3m以内…


 いくぞ


 剣技【雷火4連】!!!

 絶対命中にして超高速の同時四連斬撃が3体のホブゴブリンへ収束していく…


 派生技【円展開】【雷光閃】【雷火4連】にて


 最強秘剣【神雷】完遂!

 ズバー!ズババー!ズバー!!!


 ≪≪≪…≫≫≫

 一瞬にして3体のホブゴブリンは3つの魔石となって転がる。


 やはり慣れない格闘より刀で斬る方が安定感が違うな~


 あれ?


 さっきから動こうとしない残りの連中…

 何か罠でもあるのか?


 あ…ジリジリと下がっていく…

(どうしよう…追撃するか?)


 走って逃げていく…


 まあ、いいか~追撃できるけど撤退したパーティが気になるからな。


 とりあえず落ちてる魔石を【魔手】で回収して…


 コスプレを解除して彼らを追う…



 ********************************


 2階層に上がる階段途中で一時的に休憩を取る2組のパーティ


「大丈夫だろうか…さっきの…空冴のコスプレの人は…」

「気にはなるが…大丈夫って言葉を信じるしかないな。」


 スマホを持ちつつ…


「救援の連絡はもうしたから待つしかない…下手に動いてモンスターと接敵したら…だからここで待機だ」

 そう言うと自然に身体が足から力が抜けてその場で座り込む。


 2階層程度の敵なら…


 大丈夫だろう…


 だが既にリーダー2人は思考が停止していた。


 彼らもまた動けてはいたが限界だった…


 ちなみに転移門は5階層、10階層、15階層まであるが2階層にはない。


 30分程度、無言で座ってると~

 『おおおおーいー大丈夫かああ~』

 2階の上から声をかけてくる集団があった。


「あ…救援隊だ…」

 助かると思うと、ようやく精神的に張り詰めた気持ちが和らいでいく…



 ************************************


「神宮司さん…無事、合流できたみたいですよ~」

 無線機で返答しながら笑顔で安藤さんは答えてくれた。

「そうか良かった…」


 俺は彼らと合流して助けようとしたが、救援を呼んだ事が分かった。

【完全遮断】で近くに待機していたから…


 だから、救援隊が来るまで彼らには気が付かれないよう様子を見ていた…

(空冴で行けば分かるが突然知らんヤツに話しかけられても困るだろうし)

 そして救援隊が来たのが分かったので、俺は一足先に転移で戻っていた。



「はい…ホブゴブリン10体確認…D級昇級試験完了ですね〜カード更新しますので、おめでとう神宮寺さん」

「はいありがとうございます」

 どうやら俺も疲れたらしい〜久しぶりにこんな時間から眠くなっているのを感じる。

 本当、長い1日だった。


 F→E→D級へと昇格した…そんな1日の話…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る