第11話 鈴見華鈴と謎の美人さんがやってきた日

「ここか…いきなり来ちゃて不味かったかな?」

 私、鈴見華鈴はこの前、教えて貰った住所の家に来ている。


 ピンポーン!


 玄関でチャイムを鳴らすけど…


 一向に動きが無い〜お出かけしてるのだろうか?スマホを再び覗くけどさっき送ったメッセージを読まれてないようだ。

(まさかダンジョン行ってるのかな?失敗したかな…もうあと10分待ってこなかったら次の機会にしようかな)



 そんな事を考えてると…



「おはようございます」

 見た目普通では無い美人が突然、声をかけてきた…何故?


「あ、おおはようございます…」

 つい緊張し過ぎて声が上擦ってしまった。


「神宮寺さんの玄関先で待ってるということはお友達ですか?あ~失礼、私はこう言うものでして…」

 名刺を渡してくるので受け取りながら…


「友達と言うか〜以前ダンジョンで助けて貰って…って、え!?」

 名刺に書いてある職業と名前に驚く!


「…あの…神宮寺さんに何の御用ですか?」

 少し強張った顔で顔を覗く…


「その…この前ダンジョンで起こった事件の通報と救助に貢献して下さったのでその御礼を…」


「ぷっー!…あっ〜ごめんなさい!」


「いえ…どうかなさったんですか?」

 不思議そうに私の顔を覗く美人さん


「いえ〜神宮寺さんっていつも人助けしてるんだなと思ったら可笑しくて♪」


「そうですね…神宮寺さんみたいな方って珍しいと思います。」


「ですね〜」


 少し打ち解けたのかお互いに笑いあっていた時!



 ブロン!ブロン!キッキッイー!!



 1台のバイクが玄関先の前の道路に停まる。


 エンジンを止めて敷地内に入ろうとした時に気がついたようだ。


「あれ、鈴見さん?」

 彼はそう言ってヘルメットを脱ぐ顔は神宮寺彰人だった。


「よかったリハビリも終わって退院したんだね…ん?あなたは?」

 ヘルメットを腕に通してバイクを敷地内に入れながら鈴見さんともう1人の方(かなりの黒髪美人さん)が佇んでいるのに気がついた。


「はじめまして神宮寺さん…私、こういうものでして…」

 彼女から差し出された名刺を見てグローブを外して名刺を貰う。


「公安…菅生すごうアキラさん…」


「はい…」

 満面の笑みのそこには美人さんが立っていた。




 バイクを定位置に置いて玄関先で鍵を開けて、客間に2人通して…

「お待たせしました…粗茶ですが」

 お盆に載せたお茶を菅生さんと鈴見さんの前に静かに置く。


「ごめんなさいね~先にお話しさせていただきます。改めまして私は警察組織に所属する公安課の菅生アキラと申します。」

 鈴見さんに断って挨拶してくる菅生さん…鈴見さんもどうぞどうぞと言っている。


 名刺を渡されていたのでさっき見たのだが…


 公安課所属

  日本探索者犯罪取締局〈J-SCB〉

   菅生アキラ


 他には何も書いて無い…まあ公安の人の名前なんて実名か分からんしな…

 にしても綺麗な方だな、とてもあんな荒事をしている感じのタイプでは無いロングの黒髪にポニーテールで結び姿勢も良くモデルと勘違いしてしまう程、そんなスタイルの方なのに黒スーツですらりと佇む姿は…いかん〜ボーとしてしまった。


「スゴウさんですね」

「はい、この度は田上を救っていただきありがとうございます」

「タガミ…あ~田上ってこの前、助けた方ですね…え?何故、公安の菅生さんがお礼を?」

「勿論、人命救助として公務に対してのお礼と私の部下を救ってくれたお礼でもあります」


 ん?


「部下ですか?」

「はい…田上は私の部下で密偵として働いてもらってますから…」

「密偵…と言うと、もしかしてこの前の犯罪者達の?」


(何でそんな聞いてもいない事を彼女は教える?)


 一瞬、警戒レベルを上げそうになるが…まあこんなまだまだレベルも低い探索者が何ができると俺は考えを改めて彼女の話を聞く。


「何の事件に関わっていたかは、まだ捜査中の案件でして守秘義務があるので話せませんが…肯定とは言っておきます」

「なるほど分かりました」



「それと一つ私的な事ですが…田上の探索者カードに田上と共に何かをした形跡があるのですが、エラー表示がされていて認識できませんでした。

 …もし神宮寺さんに問題が無ければ教えていただければと」


(あ…そうか職業を非公式にしてるからか)


 俺は少し考えたが…

「分かりました…

 実は自分の職業やスキルが特殊で協会には非公式にしてもらってまして…何をしたかは簡単に言うと転移です」


「なるほどそれなら納得です…なかなかのレアなスキルをお持ちなんですね」

 鈴見さんはそれを聞いて驚いている…まああの時はまだ取得してなかったしな…


 にしても…

「レアですか?」

「最近の話だと、転移系のスキル持ちは世界でも10人もいないかと…」

「そんなに少ないんですか?」

「はい、ですから非公式にしてあったのは正解かもしれませんね〜そんな能力が知れると、色々面倒な事もありますからね」


(気軽に俺は使ってたけど結構ヤバい能力なんだな転移は…)


「神宮寺さん、この事は勿論ここだけの話としておきます」

「ありがとうございます」

 鈴見さんは…凄い目で俺を見ている~俺は少し目を反らし、さて後で何て言われるやら…


「それで…もしなんですが」


「はい?」

「もし宜しければ、今すぐと言いませんが仕事の依頼するのでお手伝いをお願いしたいと願っておりまして…」


「お手伝いですか?」

「先程も言う通りレアなスキルなので、勿論報酬の方も正式に払わせていただきますのでご連絡先の交換をしていただければ…」


(うむ~まあ公安に伝手があるのは悪い事でも無いかな…)

「はい!分かりました」

 俺達はこうしてお互いに連絡先の交換を行なった。


「あと、こちらは田上に使用した薬代としてと心ばかりの謝意も込めて少ないですがお納めください」

 そう言うと厚い紙袋を渡してくる。


「それでは長々、申し訳ありませんでした…それでは失礼します…では…」

(まあここで受け取らないのも悪いかな)


「分かりました、ありがとうございます」

 俺は素直に受け取る…

 菅生さんは立ち上がって鈴見さんに挨拶してから玄関口で、それではと会釈して去っていく…


 その後ろ姿を見て仕事を誠実にこなす彼女に好感を持つ…

(俺とそんな年齢違わないのに立派だな)



 ちなみに後で見たんだが…

 菅生さんから貰った紙袋の中はお金だったんだが…300万程入っていた。

 薬代で200万計算かな?

 相場としては多いのか少ないのか?

 何にしても銀行に預けるかな。




 ********************************



 止まっている黒い車の後部座席に乗り込むと…

「本部に戻って」

「はい」

 運転席にいる部下が返事をしながら車を走らせる。


「例の探索者は如何でしたか?」

「そうね…私の部下として1番欲しい人材ね」

「それほどに優秀な人材ですか?」

「まあね~でも本人が嫌がっても困るから暫くは様子見ね…大学生だし、でもまだ伸びるわねタイプは…早いうちに手伝って貰って縁を結ぶのも悪くない」

「そこまで…ですか?」

 その質問に答えずに

「あなたが驚く案件ではないわ…次の仕事もハードなんだから余計な事は考えないの」

「はい」


(神宮司彰人…そう遠くないうちにまた会えそうね)

 そんな事を考える菅生アキラだった。

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