第2話 コスプレ×ダンジョン×撮影の誘い

「ダンジョン…」


 そうダンジョンとはこの世界にとって架空の物語に出てくる存在だった


 しかし1999年…


 

 世は世紀末の只中で、人類が滅びると予言された年


 もうすぐゴールデンウィークが間近の春に事件は起こった。


 夜0時頃に都心で謎の爆発が起こり当初、ガス爆発やテロなど疑われたが火災も小規模で夜中と言う事で、人的被害も少なく原因不明であったが爆発の中心地であった小さな公園に謎の穴が発見された。


 最初、爆発でできた穴で陥没したと思われたが中に入って調査に赴いた者が中にこの世のモノとは思えない存在がいると報告後、警察が赴き後に自衛隊派遣となり…正式にその穴が新宿ダンジョンと呼称された


 あれからもうすぐ20年になろうとしていた

 ダンジョンはその間、日本各地に広がり世界各地に出現した。


 そして…



「そうダンジョンです!」

 杏さんはテンション高めに答える。


「ダンジョンか…」

 俺には縁の無い存在と思っていた…

 まあ単に近くに無かっただけとも言うけどな。


「あれ?最近この近くにダンジョンが出現したの知りません?」


「そうか!確かここから車で30分くらいのところに現れたって聞いた事があるな」

 まだ半年前に出現して攻略されてる斑鳩ダンジョンって名前だったか?


 そう言えば日々の生活の中で、そんな話を聞いていたけど…

 いつしか忘却の彼方になっていたか…


「もしかしてカムイさんって、アスリート関係でダメなんですか?」

 実は…新宿ダンジョンが出現してから半年近く経った後に、民間の一部の者や関係者が入る事が可能になると、ある情報が流れる。


 それはダンジョンに入ると身体能力が上がると言う話…


 それを嗅ぎつけたプロアマ問わず沢山のアスリートがダンジョンに入り能力を向上させ大会で、それまでの世界記録を簡単に塗り替えるといった出来事が多発した。


 当然、反発が日本内、問わず世界各国の非難が殺到した…そしてダンジョンに入った事が判明した多くの才能ある選手達が永久追放や処分を受けて消えた事件がある。


「そんな事無いよ…単に近くに無かったし特に関心も無かったからね」

 以前は、東京等の関東方面にしかダンジョンは無く、わざわざダンジョンに潜りに行く事も考えた事は無い。


「なら大丈夫ですよね?」

 杏さんはホッとした顔で答えてくる。


「でもそんな簡単に入れるの?」


「確か1階だけなら仮登録すれば入れるはずですよ」

 杏さんにそう言われて少し考えてみたが考えるまでもないか~


「…分かったよ、行ってみようか?」


「とりあえず昼休憩してから行きましょうよ」

 俺達はカオルさんに、挨拶してから杏さんの車に俺は便乗してとりあえずファミレスで昼食食べてからとなりました。

 勿論、コスプレのまま移動も困るので革ジャン羽織ってウィッグも外さないでバンダナを巻いて行く事に…


 ファミレスで遅い昼食を食べながら、さっき撮ったライブ動画を確認したり感想を眺めたり…


 探索者の動画でコスプレがあるか?と思い検索するが服だけ着た、何ちゃってコスプレばかりで女装がやたらと目立っていた。


 魔法少女とは名ばかりで、どうみてもオッサンが服着てる感じで…


 他にはファンタジー系コスプレと銘打って動画が掲載されてるが…


 単に探索者用の鎧を着てオリジナルコスプレと銘打ってるが、あんまし面白みのない動画となってる。


 探索者でコスプレってのは、やはり命の危険がある空間では難しいのであろうか?


 一応、剣技などの探索者のスキルなどの動画は沢山、見られるが…俺が見たい日本刀による剣技は無く、西洋剣ばかりで日本刀で活躍してる探索者の動画は皆無だった。


 一応、刀を使う探索者もネット検索すると出てくるが動画とかは上げてないらしい…


 ファミレスを出ると早速、斑鳩ダンジョンへ向かう。


 30分程かけて車で移動して目的地に着く…駐車場もあるし大きなプレハブだが2階建てで、その2階が受付らしい…


 2階の事務所らしき扉を開けて中に入ると数人の事務員らしき女性が仕事をしていて、受付と書かれたカウンターへ…


 すぐにこちらに笑顔で女性が挨拶してきた。

「いらっしゃいませ〜探索者協会へようこそ!今日はどの様なご要望でしょうか?」


「すいません、ダンジョン初めてで入りたいんですが…大丈夫ですか?」

 杏さんも慣れてないのか緊張気味に受付した事務員さんに聞く。


「お2人とも初めてでしょうか?ではまずこちらのパッチシール貼って下さいね…適性があるか判断しますね」

 そう言うと俺と杏さんの腕にシールを貼る。


 このパッチシールはある物質がダンジョンにあるので、アレルギーが無いかチェックするものだ。


 1分程してシールを剥がすと特に炎症痕も無く2人は問題無いと判断されたらしい


「では、こちらの書類に記載していただき、判子をお持ちでないなら母印で大丈夫ですので…」

 俺達は書類を貰うと空いてるフリーデスクで名前、住所、電話番号、職業などの基本的な個人情報を書く…

 最後にダンジョン内での事故などは、自己責任でダンジョン管理会社へ請求しないと言う誓約書の記載がある。


 今回は仮登録になる為、この様な待遇になるが本登録した場合、登録料を払いさえすればダンジョン内のトラブルに対して対応(救助)してくれるらしい…


 俺達は記載した書類を事務員さんに渡してチェックしてもらい最後に…

「受理致しました…こちら仮登録カードなので、首に下げるか鞄の中に入れて置いてくださいね。

 紛失すると再登録は有料となりますので注意してくださいね。

 あと仮登録なので1階だけですが、もっと下に行きたい場合は有料で護衛を付けられますが…どう致しますか?」

 護衛は後払いで1時間1万円らしいが…


 1階でも深くは立ち入る気はない為、杏さんと事前に話し合っており

「護衛はいいです。」と断る。


「分かりました…時間制限などは無いので、ごゆっくり楽しんで下さい。」


 事務所から離れた小屋に行きながら…

「楽しむって…楽しめるのかな?」

 と俺は杏さんに聞くが…


「楽しみましょう!」

 杏さんはやる気充分らしい


 少し離れた小屋に入ると…

 そこはこれまでダンジョン探索の際に使わなくなった武具が置いてある。

 売っても二束三文にもならない…がダンジョンに入る際の武器として棍棒代わりとして保管してある。

 錆びてたり折れてたり刃がボロボロだったり廃棄用の武具の反対側にまだ使えそうな武具が少なく無いが置いてあり無料で貸し出してる。

 杏さんは元々戦う気はない為かそんなに重くない片手の棍棒を…

 俺は真剣の刀がある為、西洋の片手剣でも持っていこうと考えていたが…


(ん?この武器は…)

 それはどう見ても日本刀だった。

 見た目はボロいが鞘から抜くと…やはりボロボロな刃でどう見ても切り付けたら折れる可能性が高い

(しかし何故だろう…こんなにボロボロなのに握るとしっくりくるのは?もしかして業物か?)

 とりあえず持って行く事にする…


 いよいよダンジョン撮影会の始まりだ!

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