第3話 ダンジョン1階 初探索&コスプレ撮影

 そこは神社で見る鳥居の門みたいなものが入り口に設置されており、小さい小屋には警備員が待機しているみたいだ。


 俺達が近付くと小屋から出て軽く会釈をして

「ご苦労様です!カードを見せてください。」と元気に応対してくれる。

 俺達はさっき貰ったカードを見せると…


「はい、ではお気をつけてくださいね。」

 そう言うとまた小屋に戻って行く。


「いよいよダンジョンだね」


「はい…ワクワクしますね」

 杏さんはやる気だな!


 ダンジョンの入り口の階段を降りるとあまり暗くなかった…もっと暗くジメジメした湿気とか想像していたがまだ地上からそんなに離れてない為か気にならない。


 俺の格好はバンダナを外して革ジャンは車に置いてダークロードのブラインのコスプレのまま、刀は一応いつも持ってる自前の刀を…


 刀バックにはボロボロな刀を予備として…


 杏さんは棍棒を腰のベルトに刺していつもイベントでカメラマンする時の格好、バンダナして眼鏡かけてチェックのシャツを羽織、ジーンズを履き背中にはリュック、肩に動画用の小型カメラ、首からは一眼レフカメラを下げてフル装備…


 ん?防御力2人とも無いに等しいなあ〜


 まあ、あの小屋にあった防具はサイズが合わなかったし盾はあったが、俺は使わんし杏さんの細腕では持てないからな…


 どのみち危なくなったら逃げる予定だしな…


 とりあえず1階のマップをコピーして貰ってるので角のある所まで行く事にする。


 杏さんは動画を撮りながら俺をカシャカシャと写真を撮っている

「ん〜良いっすね…やはりダンジョンでブラインは似合いますよ!」

 かなりテンション高めになっている


 そう言う俺はと言うと…

(変だな…入り口入るまでちょっと緊張していたのにこうやって歩いてると、どんどん冷静になっていくのが分かる)


 そして…


【兆し】発動


(いるな…初接敵かこれは?)

「杏さん…角にいる」


「…え?!もうですか?ってか何で分かるんですか?」

(そうだ…何でわかるんだ?)


 俺は左手で鞘を握り右手で柄を掴む…

(師匠…俺おかしいのかな?怖さより何か…変だ…俺)

 どんどん冷静に頭が冷えていくのを感じる…


 角まで2メートルの距離に達すると小さな音が聞こえた…獣の持つ特有の臭いと言うか気配なのだろうか?


 俺はいつでも刀が抜ける様にここから摺足で近付く…


 ≪グワーオォ!≫

 叫びながら襲いかかってくる!!

(犬?狼?いや犬獣人≪コボルド≫だ)


 コボルド…ファンタジー世界の代表的なモンスターでこのダンジョン内では1番弱い存在である。


 俺は自然に刀を抜き、飛び掛かってくる存在を斬る!



 ザシュー!!!



 スローモーションの様に刀は相手の胴を薙ぎ斬り裂く!

 犬獣人は自分に何が起きたのか分かって無かったのか口を開けて俺の首、目がけて飛び掛かった…


 つもりだったが斬り裂かれた事すら認識せずに絶命する。


 どさり…


 そして身体は少しずつ煙も出ないのに消滅していく…最後には小さな石となっていった。

 俺はその石を拾った…


 ふう~初討伐だな!


 多分、これが魔石だな~まあこの小石程度だと100円いけばいいか?


「…おおお…すげーっす」と言いながらカメラをフルオートなのかバシャバシャとシャッターを切りながら目前の光景に目を奪われた杏さんだった。


「迫力が違うっすよ!」

 俺は血糊が付いて無いが刀を振りそのまま鞘に収めて一息つく…


 カチャリ


「ふうー」

(不思議だ…初めて生きた存在を斬ったというのに感触がおかしい…

 何でこんなに冷静に斬れた?

 相手がモンスターだから?)

 正直、一瞬混乱し始めたが…


「大丈夫ですか?カムイさん?」

 杏さんが俺の顔を覗き込んでくる。


「あ…あ〜大丈夫です…そう大丈夫なんですよね」

 (俺は冷静だ…平気だ!)


「そうですか!次、次行きましょ!次は…そうですね剣の結界を張ってる感じで構えてくださいね〜後でエフェクト付けて写真あげますので!」

(剣の結界か…確かブラインの剣技だよな…ん?何だ…【円展開】?)


 【円展開】はブラインの剣技の一つで、本人を中心に三メートルの範囲内で極限まで攻撃命中率と回避率を上昇させ、不可視となっていても存在を発見できる。

 ブラインのオリジナル剣技。


(あれ?何か…これはもしかして【円展開】なのか…)

 俺の目の前に円展開の気と言うか3メートルぐらいの辺りまで立ち昇って見える。


「どうしました?」


「あ〜大丈夫だよ」

(多分説明しても無理だよな…)


 また少し歩いて行くと…


【兆し】発動


 いた!


 また犬獣人だな…よし!

「構えますので、撮影よろしく!!」

 再び居合いで刀を抜く為に、柄と鞘に手を添えながら歩いて近付いていく。

 そしてこちらに気付いた犬獣人は獲物を見つけた猟犬の様にこちらに走ってくる…


 俺は腰を据えて迎え撃つ!


 円展開した結界に入った瞬間を待つ…


 そして、犬獣人の身体が結界に入った瞬間!


 俺の思い描いた技が発動する…


 剣技【雷光閃】

 稲光の様に刃が伸びて犬獣人の首筋へと消えていく…


 ≪ゴウゥゥー!≫

 と言う音と共に身体が弾けて消えていき、小さな石になって消滅する。

 


 秘剣【轟雷】

 絶対必中の【円展開】と神速の一刀【雷光閃】を併用し、対象の急所”頸部”を一刀両断する。

 対象が頸部を斬られて声にならない漏れる音が、雷が落ちた様な音となるので轟雷と名付けたとのこと。

(やはり使える…しかし何でブラインの剣技が使えるんだ?)

 

「ねえ…カムイくん…今のって、もしかしてブラインの技なの?」

 杏さんは恐る恐る聞いてくる。


「そうだね…ブラインの剣技の一つ、秘剣【轟雷】だね」


「もしかして今、覚えたの?」


「分からない…でももう一つ試したい剣技があるんだ〜杏さんもう少し付き合って欲しい」


「勿論よ!こんな凄いのまだまだ見たいもの!!」

 杏さんは興奮気味に答えてる…かなりハイテンションだな。


 俺も心が躍るぐらいハイテンションだけどね。


 そして1階の真ん中を辺りを過ぎたところで犬獣人では無い存在がいる事に気付く…


 あれは邪妖獣人ゴブリン

 いや、ゴブリンの上位種の大邪妖獣人ホブゴブリンだ…


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