第32話 那岐救出へ
転移直後…ここがどの階層かは分からないが…今は特に関係無い…
ただ目の前にある物体に目を奪われていた。
かろうじて人の形に見えるが欠損した手足の損傷が激しく生きている者には見えない。
しかしすぐ様、思い出す…死んだ人間の元には転移はできないと…
胸に手を置くと微かだが心臓の鼓動が感じるし微かだが息もしている。
生命力の強さに驚くが…しかしそれも時間の問題だろう事は身体の損傷を見れば分かる。
俺は迷う事無くそして考え無しに
【完全回復】
スキルを行使する…しかし頭がフラフラし始めて魔力の枯渇を感じ始めた。
みるみる内に損傷した部分が修復され那岐の身体は、元の状態に戻ったようで心臓も息も力強く感じてホッとした…
多分、ダンジョンで気を抜いたのは、これが初めてだったのかもしれない
ザクシュー!
「ぐっっがー!」
衝撃を受けたが体勢を整えようとして気がつく…
左手が痛い!では無く左腕が無くなっていた?!
「ぎぃー痛えー」
そして俺の左腕を口に咥えて持っていった相手はサーベルタイガーのようだ。
「テメェーこの牙虎野郎が!」
俺の左腕をバキバキ言わせながら咀嚼してるのを見て嫌悪感か、頭に血が昇っていたからか、普段は絶対言わない荒い言葉を発していた。
しかし【漢の倍返し】が発動しなかった?
あのスキルは素手、無手で発動するカウンター技で俺は杖を持ってるのを忘れていた…
だが左腕を喰われてる時点でプツリと記憶が曖昧ではあるがキレタようだった。
後に那岐から話を聞いた顛末は…
「テメェーこの…」
頭痛えー何だこの大声は…え?!兄貴?
「牙虎野郎が!」
中学の頃、荒れてた当時の兄貴を思い出し目が覚める。
その姿は異形…いや昔観たドラゴンオーブに出てくる神様そっくりの格好をした人物から兄貴の声が聞こえていて気持ち悪かったらしい。
「だあああああ【再生】はあー!」
バシャー!!と強烈な音と共に左腕が生えたそうだ…リアルに体液も飛び散ってグロいとか思ったらしい…
まるで失ってた左手の具合を確かめる様に手をグウパー、グウパーして具合を確かめてる姿は神様と言うより悪魔に見えたらしい
【再生】はピクコロ大魔王が使う技で身体や手、足などが欠損した際に元の状態に戻す…この技はスキルで使う技には珍しく魔力の消費では無く生命力が消費される。
しかも原作本編でもかなりの苦痛らしいのは痛さが半端ない、魔力があれば神様の【完全回復】が使うだろうから普通は使わないスキル
つまり魔力が枯渇し始めているから無意識に使ったか?
俺の記憶は曖昧な為、不明
【護神刀】召喚!
刀が突然現れて左手で掴むと
「待たせたなイヌッコロ!」と呼ぶ(ネコ科だから犬扱いは違うだろう)
サーベルタイガーは見た感じ攻め難く見えたと…
まあ食いちぎった腕が再び生えたりすれば戸惑うだろうか?…真相は果たしてどうだろうか?
シャッキンー!
しかしイヌッコロと言った瞬間…サーベルタイガーの口にある大きな牙が2本、音を立てて落ちる。カランコロンと…
無双一刀流刀術
剣技【音無し】
鞘から発する音以外は、音無しで斬る居合斬りの技…達人ともなれば鞘走りの音さえ聞こえないとか…
ガオー!!
流石にサーベルタイガーは怒りを振るわせ襲いかかるが…
シャキーン!!
兄貴の居合からの抜刀が下から上へ斬り上げた瞬間…
サーベルタイガーの顔が十字に切り裂かれ絶命してる様に見えたと…
しかも速過ぎて2段に斬ってるのが見え無かったらしい…
無双一刀流刀術
剣技【逆十字】
うちの流派での師匠が得意な技だった思い出…俺は結局、習得出来なかった筈だが…いつの間にか使える様になったのか?
そこから約30秒経ってようやく目覚めてように見えたと後で那岐から教えてもらった。
「そうか…軽く飛んでたんだな…ああ悪い悪い」
那岐からの説明でこの意識を失っていた時の話を聞いて色々驚くばかりだが…
【キャラインストール】解除
神様から普段の自分に戻る。
「それが兄貴のスキルなのか?」
「まあな…ってこんなところで雑談するのもマズイからな〜さっさと帰るぞ」
「うん」
随分と昔みたいな接しかったになったな…良かった。
もう魔力が底をついてるのでアイテムボックスから魔石を出して左手で持ち、魔力の代替品として利用する。
普段、ここまで魔力が枯渇するまでスキルを使った事がなかったから仕方がない。
「ほら手を貸せ」
「え、あ,うん」
那岐の手を取り
【転移】探索者事務所転移門(豆レプ)
転移門に転移する
「えー?!転移も使えるってスゲーよ!!!」
「あ〜また説明するからな」
那岐を宥めながら2階に上がると…
安藤さんが出迎えてくれた。
「神宮寺さん!良かった〜心配しましたよ」
「ごめん!ちょっと野暮用でね〜とりあえず、神宮寺と甲斐道那岐の帰還なんで…よろしく!」
「え?!あ、はい甲斐道さんと言えば…死亡届が出てますので生還として処理しておきますね」
「え?あ、はい!!」
那岐は生きて戻って来た事を実感しているようだった。
にしても死亡届?.あ〜アイツか…後で調べないと…にしてももう限界だな
「じゃあ安藤さん,お先ね〜身体が限界なんで…」
「はい次回にでも…お疲れ様でした!」
「行くぞ」
「うん」
階段を降りながら…
一度落ち着いて話がしたいと那岐からの提案を承諾して明日の昼前に会いにいく事に…
「じゃあな〜また明日」
「うんお疲れ…兄貴!また明日」
那岐は歩いて、俺は転移でそれぞれ帰宅していった。
風呂に入ろうかと思ったが気がつけば泥の様にベッドで寝ていた俺だった。
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