第9話 好物

 初めて花蓮さんと喋ったが、話しやすい人でよかった。

 何気に、おじさん以外喋ることが久しく、うまく喋れるか不安だった。実際、配信は初コラボとして過去一盛り上がり、ほっとした。また、半年前言ってたコラボが実現でき、とてもうれしい。


「初コラボ記念になんか美味しいものつくろう」


 そう思い、僕はキッチンに立つ。立つといっても、料理しやすい台の上に座るだけだけどね。

 作るのは肉じゃが。自分が料理するもので一番美味しいと思っているのが、肉じゃがだ。地方によって入っている具材が異なるらしいが、僕は豚肉とにんじん、玉ねぎ、じゃがいもだけで作ることが多い。味付けも出汁とか醤油だけにして、たくさん煮込む。そんな肉じゃがが、俺は好きだ。


「ただいまー」


 ちょうど肉じゃがができた時に、おじさんが帰ってきた。珍しく、今日は帰りが早かった。


「おかえりー、今日早いね」

「うん、仕事がひと段落したからね。今日は肉じゃがかー。なんかいいことあった?」

「うん、そうだよー。よし、できたよ」


『いただきます』


「今日も美味しい。いつもありがとう」

「うんうん、大丈夫だよ」

「で、いいこととは?」

「それはねー、今日初めてコラボの配信したんだ」

「おー、すごい。なんかもう配信者ぽいね」

「もともと僕はもう配信者だよ?確かにコラボはすごいけどさ……」

「ごめんって。いやー、もうそこまでいったのか。すごい、おめでとう」

「ありがとう。と言っても、まだまだこれからだよ」

「そうだな。あ、配信について聞きたいことがあって」

「名前以外ならいいけど」


 なんだろう。僕に関係あるのかな。


「いやそうじゃなくて。今度うちの会社でVtuber事務所作ることになってさ。具体的に何がいるのか、聞きたくって」

「あれ、おじさんの会社ってシステム業じゃないの?」

「ああ。システムから全部一社でやる事務所を作ると社長がね。需要とかはあるけど……死にそう。」

「あはは……。でいるものね。そうだね、おじさんのところではPCとかの機材はいけるでしょ。なら次はVの体だけどシステムは作るでしょ、ならイラストの方は?」

「機材、Vのシステム、イラスト……。やっぱ、イラストのところだな」

「イラストないと始まらないし。あとは、配信ソフトとかも作るの?」

「まあ作る予定ではあるが、多分Vのシステムと同期させるからな……」

「それはすごい。俺は別々で使っているから一回外部のソフトで同期させているから大変」


「あとはいい感じの中の人でいけるじゃないかな」

「タレントの方もね。ありがとう、なんとなく必要なものがわかったわ」

「てか、いいな。おじさんが作るソフト。絶対便利だし」

「うーん、まだ一般販売しないらしいからな」

「そうなのか……。まあ、無理なく頑張ってね」


 談笑しながら夕飯を楽しんだ。


 明日から、コーチングだ。僕自身もValを上手くなりたいと思っていた。花蓮からたくさん技術を吸収しよう。

 そういえば、なんで僕がコーチング受けるのだろう。普通にコラボするだけでも、十分な気がする。まあ、コーチングってことにすれば長い期間をかけるからかな。

 どちらにしても、明日が楽しみだなあ。


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