第20話 大会1日目後編

 本番1日目の後半。ついに、零さん率いるBチームとの対戦だ。

 僕たちの作戦は、敵が少ないところを素早く攻撃する。また、できるだけ零さんがいない方を攻めたい。


「なんとか3本目取れたけど厳しいね」

「一本しか武器ない」

「これは攻めるの難しいね」

「ん、ゆっくりやろう」

「そうだね」


「うわ、Aメイン零さん詰めてきた」

「ならみんなで戦おう」

「あ、40削った」

「ごめんー」

「二人持ってかれたし、このまま静かに出よう」

「うん」

「頑張れ!ルート君、花蓮ちゃん」


 1マップ4ラウンド目、僕たちの装備が弱いため敵に押されている。人数も2対4で、残った僕と花蓮もHPが少し削れている。状況はあまりよくない。だが、まだ諦めるわけにはならない。


「CTに一人足音。これ下がってそう」

「時間少ないし、このまま設置」

「このまま、CT抜けよう」

「3、2、1」

「よし、僕ヘブンまで行く。あと武器あげる」

「うん」

「あ、そこにスナイパー落ちてる」

「うん」


 3対2。人数、HP差では負けているが、花蓮に武器を渡せたから、まだ勝てる。いわゆる、鬼に金棒ならぬ花蓮に武器だ。

 僕は、HPがほとんどないので、一人でも倒せるようにスナイパーを持った。一番得意な武器でもあるからね。


 5秒の沈黙。その後、敵は一気にサイトに入ってきた。だが、僕はその一瞬を見逃さない。一発、ヘッドショット。僕が撃った弾は敵の頭に命中した。

 そして敵が崩れたところに、花蓮が奇襲する。


「ラスト、奥」

「落ち着いて」

「顔出さないよ」

「うん」

「時間切れかな」

「ん」

「ナイスー!」

「ルートのスナイパーかっこよかった」

「ね。きれいなヘッショだった」

「ナイス、一本」


 ラウンド、2対2で同点。どちらも一歩も引かない、接戦だ。まだまだ、負けられない。


 __________


 ふう、と僕は息を吐いた。配信を終え、ゆっくりしていた。


「負けちゃったなあ」


 僕たちはBチームに1対2で負けてしまった。三試合とも、接戦だった。しかし、やはり相手の対応力に負けてしまった。一度行った作戦は、しっかり弱点を突かれてしまう。やはり、零さんの指示がいいだろう。

 しかし、接戦なったことから、僕たちもまだまだ勝てると考えられる。現在、全勝しているのはBチームのため、暫定1位、僕たちCチームは1勝1敗での同率2位となっている。まだまだ、決勝に挑める暫定順位だ。

 とりあえず、明日の最後の試合を勝って、2位に入れることを頑張ろう。


「それはさておき、ご飯でも食べてこよ」


 そう思い、リビングに移動すると、おじさんがいた。


「お疲れ。かっこよかったぞー」

「あー見てたんだ。てか、今日早いね」

「今日は花金だからなっと。ほい、ご飯できたぞ」

「お、珍しい。おじさんの料理って思ったけど、冷凍食品多くない?」

「だって俺がそこまで料理できないからな。あと、智樹の料理の方がおいしいからな。まあ、さすがに今日は大変そうだから最低限作ったよ」

「ありがとうー。いただきます」

「はいはい」


「それで、どうだった?」

「うーん、すごかったぞー。見ているだけで熱くなったよ」

「そう、ならよかったよ」

「……ルート君のかっこいい顔とマッチしていた」

「なんで!本配信見ていたじゃないの?!」

「いやー、もちろんルート君の配信だよ!」

「最悪、もうなんでこっちを見ているの……」

「そっちの方が面白そうだったから」

「僕はあまり嬉しくないよ」

「てか、もう登録者一万人ぐらいなのか。普通にすごいな」

「あー。それはキラトさん、氷谷キラトというVtuberの先輩のおかげだよ。キラトさんの配信から僕に流れてくれた人がたくさんいるからね」

「ふーん。まあ、よかったな。てか収益化した?」

「うんうん、とりあえず忙しかったからやってない」

「そっか。俺の同意とかいるよな?」

「うん。確かいるけど、別に__」

「了解。したいときに言ってくれ。あと、智樹のお金だから自由に使っていいぞ」

「え、いいの?」

「まあ、お金の無駄遣いとかしなさそうだし。あ、でも税金とかは払わないといけないからな」

「まあ、税金払うまで稼げないと思うけどね」

「……今だけだよな~」

「何が?」

「何でも」

「??」


「あと、この大会が終わった後……」

「うん?なに?」

「やっぱり、なんでもない」

「その言い方、結構気になるけど」

「まあまあ、そのうちわかるさ」

「そう」


 そうして、僕は夕食を食べ終わった。その後、風呂に入り、昨日より早く寝た。おじさんが最後なんと言おうとしていたか、気になるが。

 今日は、昨日より落ち着いて寝れた。でも、この心にある熱いものはまだここにある。まずは2位を目指してやり切ろう。

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