第19話 大会1日目前編

「さあ、始まりました。Val公式主催ヴァルカップバージョン1」


 実況の人の声と共に、大会がスタートした。

 僕は緊張で少し手が震えて、喉が渇き、声が掠れる。でも、やるべきことはやってきた。そんな自信もあった。そんなことを考えていたら、もうルール確認になっていた。


「さて、ここでルール紹介に参りましょう。Val公式主催ヴァルカップバージョン1では、Valというゲームで全四チーム戦います。Valとは、LIDが開発・運営している基本プレイ無料のFPSゲーム、タクティカルシュターゲームです。また、キャラクターのスキルの使い方や各チームでの戦術が鍵となるeスポーツでもあります。___」


 実況者と解説者の人が、今日の大会の概要を説明してくれた。簡潔に書くと、


・チーム全四チーム(僕たちのチームはCチーム)

・BO2の総当たりをしたのち、上位2チームでBO3し勝ったチームが優勝

・キャラやマップの選択は試合開始前に提出するようになっている

・チートなど違反行為は絶対できないようになっている

・タイムアウトあり


 という感じだ。今日明日で全部のチームと戦い、総合成績の上位2チームが明後日の決勝戦で戦う。つまり、僕たちはまずこの総当たり戦で、上位2チームにならなくてはならない。


 そんなこんなで、もう初戦が始まる。


 __________


「初戦、どうします?見ます?」

「うーん。まだ時間あるし、練習しててもいいじゃない?」

「んー。どちらでも」

「私は少し見てから練習したいかな」

「俺もレナと同じ」

「そうするか」


「おー、コメント欄すごいな」

「同接1万越えか、すごい」

「盛り上がってるね」

「やっぱうまいね。Bチーム」

「練度が違うね。頭一個抜けているね」

「俺は昨日のやつでいけると思うけどな」

「私もいけると思っているけど……。やっぱり難しそう?」

「んー?多分最初はいけると思う。けど相手対応が早そうだからね」

「そうですね。まあ、対応されたら対応し返せばいいですよ。……できるかどうか別として」

「うーん、そこは僕がなんとかしますからとかじゃない?w」

「絶妙にダサいなあ」

「いや、さすがにそこまで調子乗れませんよ!」

「案外、ルート君ならなんとかしてくれそう」

「わかる。俺もそんな気がする」

「そんなに期待しないでくださいよ……」


「あ、そろそろアップ行きますか」

「そうだね。せっかくだし、みんなでいく?」

「……破壊されそうだけど、行きますか」

「よし、俺も頑張る」

「私も花蓮ちゃんに勝つ」

「ふふ、勝てるかな?」


 今度はみんなと仲良くエイム練習した。もちろん、花蓮にボコボコにされ、負けました。


 __________


 そして、僕たちの初陣が始まる。


「よし、攻めスタートだね」

「頑張ろうー」

「ラッシュしよ」

「はーい」

「うん」


「一人やった」

「ナイスワン」

「あ、裏プッシュされてる」

「前押そう」

「ごめんー、やられた。後ろたくさんいる」


「どんまい」

「次Bメインラッシュしよう」

「師匠、詰め待ちしてからラッシュがいいと思う」

「A、結構前目にきているから、狩りたい」

「そうしよう、それ以外はデフォルトで」

「了解」

「うん」

「ルート、一緒にピークしよう」

「はーい」

「行くよ?せーの」

「よし、倒せた」

「このまま押さえてからBに行こう」


 そして、そして、そして。


「ラスト、ミッドにいたよ。落ち着いて」

「時間ない」

「ゆっくり」

「A設置」

「よし!勝ったー」

「なあいす」

「ナイスクラッチ」

「勝ったー!」


 最後、僕が1対1で勝つことができ、まずは1勝を納められた。現在、チームDに対して2対0で勝ち、1勝0敗。

 全体では、チームAがチームBに負け、0勝1敗。チームBが1勝0敗。僕たちチームCが1勝0敗。今回相手だったチームDが0勝1敗。

 チームB、僕たちチームCが一歩リードしている感じだ。


 初の試合であり、僕はかなり緊張していた。手の震えもエイムのブレもあった。しかし、昨日のおかげでこのチームで勝ちたいと気持ちが強まり、この本番で発揮できた。

 花蓮の負担も減らし、チーム全体で勝つ。そんな昨日思い描いた理想が、現実となりほっとしている。

 だが、試合はまだまだある。気が抜けない。今日の残り試合は、Bチームとの対戦だ。


「さて、次はリベンジかな」

「そうですね」

「Bチームかー」

「Bチームも一勝しているね」

「やっぱ、零さんが強い。俺、撃ち合いたくないぜ」

「でも、うちには花蓮ちゃんがいるから大丈夫」

「私も勝てないよ。……まあ勝てるとしたらルートかな」

「え?僕?」

「なんか急にルートが責任重大になったね」

「でも、ルート君もなかなかエイムいいよ」

「そうだね、自信を持って〜」

「はい!頑張ります」


 みんなに励まされた。正直勝てるかわからない。けど、みんなの期待に応えたいと強く思った。


「そろそろだね」

「連戦だけど、頑張ろう!」

「ファイトー!」

「おー!」

「ファイティング!」


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