第21話 かつ
そして、本番2日目。
今日はいつも通りに早起きをした。やはり、早起きは三文の徳。普段の生活リズムのため、昨日より心地よい。まあ、起きたのはまだ今月の学校の宿題が終わっていないからだ。毎月のレポートは大変だ。僕は少し憂鬱に思いながら勉強した。
勉強がようやく終わった。時計を見ると、もう12時を過ぎていた。今日は土曜日。おじさんも仕事が休日のため、おじさんが昼食を作っていると期待して、リビングに行った。
リビングに行くと、おじさんと社長さんことあかりさんがいた。
「あ、智樹終わった?」
「お邪魔してます、智樹君」
「ようやく終わったよー。あかりさん、こんにちは」
来客がいると思わず、びっくりした。てか、おじさんが人を連れてくるのは初めてだった気がする。
よく見てみると、二人はキッチンにいて、何かを作っているようだ。期待してた通り、昼食が調理され、とても楽しみだ。
「あ、お腹空いたでしょ?もう少しでできるから待ってて」
「あ、はい。てか、なんで、社長さんがいるの?」
「えっと、なあー」
「この人がね、トンカツの作り方を教えて欲しいって言ってきたから教えにきたの」
「とんかつ……?」
「理由はこの人に聞きたら?」
「……おじさん、なんで?」
「いやだってさあ。勝ち飯と言われたらとんかつでしょ?それを作りたかったけど、俺そこまで料理できないから、助っ人を呼んだ」
「ああ、勝つとカツね。……というか、おじさんって揚げ物できないの?」
「ね。智樹君もそう思うよね。……いい年をしたおっさんが料理できないってね」
「いい年って、まだ32歳だし。あかりに関しては同い年だから__」
「正宗?」
「うわー、おじさん女性の人に年齢の事言った。ノンデリだ」
「そうよ。智樹君の方がよっぽどいい人だわ」
「……二人して俺を悪者にして卑怯だぞ」
「料理ができない32歳独身男性」
「字面だけで酷いわね」
「俺の悪口で仲良くならないで!」
おじさんが嘆いているのを見ると、なんか面白い。それにあかりさんも満足げだ。あかりさんの気持ちが少しはわかった気がする。
「よし、できた。これでどうだ?」
「……よし。ようやく、焦げずにできたわね」
「やった」
「じゃあ、あとは盛り付けてね」
「はーい」
「おじさん、尻に敷かれているなあ」
「まあ、長い年月共にしているからね」
「そうですか~」
「俺は敷かれてないぞ」
「あ、盛り付けが雑。ちゃんと綺麗に盛りなさい」
「えー。はあい」
ダメ出しをされたおじさんは、きつね色に揚がったトンカツを綺麗に盛り付ける。千切りキャベツを添えて、彩りよく飾り付ける。うん、見ているだけでおなかがすいてきた。
「今度こそ完成。どうぞ」
「いただきます!」
「どうだ、智樹?」
「うん、おいしいよ」
カリっとした衣にジューシーな豚肉、とてもおいしくできている。おじさん、頑張ってくれたんだなあ。
「そっか。あかりのおかげだな」
「そうね。後日のお礼を期待しておくわ」
「えー」
「あかりさん、わざわざありがとうございました!」
「どういたしまして。まあ今日は頑張ってね」
「あ、僕のこと知っているのですか?」
「ええ。今回のダークホースのルート君」
「えぇ……。僕がダークホースですか」
「正直、花蓮ちゃんと零が勝負すると思ってた。でも、君がいるからね」
「そうですか?僕より花蓮の方が強いですよ。チームの中で一番手だし」
「まあ、ランク的にはそうだわ。でも、強さはランクだけでは測れないと私は思う。……例えば、君のチームにいる花蓮ちゃん。あの子は意外と責任感を感じやすい子なの。だから、負けると自分のせいだと思って、怖がってしまう。そのせいで、いつもと同じぐらい自由にできず、また負けてしまう。これは悪循環だわ。まあ、君なら思い当たると思うけど。どう?」
あかりさんの言う通りだ。花蓮は責任感が強い。そのせいでうまく指示が出来ず、負けていることが多くあった。だから、昨日僕たちがちゃんと支えるということをしゃべった。
「……なるほどです」
「そう。私の考えを聞いてくれて、うれしかったわ」
「……高校生に言うことじゃないと俺は思うけどな」
「そう?高校生って言っても大人の一歩手前。もう一歩踏み出している子は意外といるわよ。この子みたいにね」
「僕はまだ高校生だと思いますが。あ、あと良ければ僕の強さを教えてくれませんか?僕が強いのなら」
「君の強さか。なんで?」
「正直な話、僕は僕の強みを理解してません。それでは本当の意味では僕は花蓮より強くなれませんよね?そして、何よりも今日と明日勝ちたいです。だから、知りたいです」
「……この子やっぱりね。あなたよりいい子ね」
「そこでなぜ俺が出で来る?まあ、そうだけど」
そう言われ、僕は少し恥ずかしくなった。そして、僕はおじさんとあかりさんを見る。
「いいわよ。君の強さは___。あとせっかくだしあなたも言っておきなさい」
「はいはい。智樹は、______」
ああ、そういうことか。僕は納得できた。まあ、最初からこれを理解していたらなと思ってしまう。
しかし、まだ後悔はしない。だって、まだ僕の強さが発揮できるから。二人に教えてもらったことに感謝し、パソコンの前に座る。
さあ、今日こそ決勝へ!
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