第12話 ふたり雑談後編

 二人雑談の後半戦。

 まだ、Valのサーバーが落ちているらしい。ゲームができないため、雑談を続けていた。


 次は視聴者の質問を答えていく。

 今回は二人とも別々の配信をしている。そのため、共有の質問箱を作って、そこに送ってもらった。意外にも僕達にたくさんの質問がやってきた。


「質問箱、結構来てるね」

「ん。これ初めて」

「雑談もそんなしてないもんね」

「したことがない」


 :確かにみたことない

 :そうなんだ

 :二人の会話おもしろい


「僕達の会話面白いって」

「ん。よかった」

「さて、そろそろ締め切りますよー」


 :OK

 :送ったよ!


「たくさんの質問、ありがとうー。よし、質問を交互に決めてく感じでいい?」

「ん。先どうぞ」

「はーい。じゃあ……これかな。二人がコラボするとなったきっかけはなんですか?だって」

「きっかけね。私がDMで声かけたことかな」

「そうだね」


 :そうなんだ

 :ルート君から誘った思ってた

 :なんとなくわかる


「いや実は、コラボをお願いするか迷っていた時もあったよ、僕も。でも、なんかね。いろいろ忙しくなったしね。うん」

「……の割には半年間来なかったよ」

「違うですよ。あの、さすがに、初対面で女性と話すことはハードルが高いといいますか……。僕には無理でした」

「あはは」


 :ルート君はビビリだから

 :野良とのVCでもビクビクしてたから…

 :うん、でしょうね


「正直な話、花蓮に誘われなかったら、一生できてなさそう」

「なら、あの時勇気出してよかった」

「勇気を出してくださり、ありがとうございました」

「どういたしまして」

「……鬼畜だけど」

「ん?なかおかしなこと言わなかった?」

「いえ、気のせいだと思うよー(棒)」


 :鬼畜だけどw

 :感動的だったのにw

 :ww


「よし、次行こうか。花蓮、よろしく」

「……配信終わったら、練習増やすか」

「え……」

「よし、なら。……お互いの良いところと悪いところ、だって」

「え、練習嫌だ。てか、何そのカップルに聞くみたいな質問」


 :ナイス、誰か!

 切り抜き師:私が送りました。ありがとう、世界

 :切り抜き師、有能!

 :GJ


「うわ。うちの視聴者だ。最近なんかみんな当たり強くない?」

「まあまあ。とりあえず質問に答えるよ」

「後は恥ずかしいから。先言っておこー。いいところは、そうだなー。……僕のことをよく見てくれていることかな」

「ふーん」

「疲れてエイムがぶれていたら、すぐに気づいて休憩させてくれるし。そういう、細かい気遣いが花蓮のいいところかな。……悪いところは、練習が鬼畜なことです」

「……なんか少し恥ずかしかったけど、最後のやつで台無し」

「自分で言ってて恥ずかしくなったから」

「それじゃ、次は私か。ルートのいいところは、……文句を言いながらも、一生懸命やっているところ。悪いところは素直じゃないところ」

「……そっか」


 :にやにや

 切り抜き師:なんか、いいね

 :てぇてぇよ


「……ちょっと待って。え。素直じゃないの、僕?」

「え?結構素直じゃない。褒めたら喜べばいいのに、静かに笑顔でいるし」

「そんなわけ」

「確か切り抜きでもあった気がする」

「すー、……この話やめときましょう」

「素直になればいいのに。あ、でもたまに変に素直になることもある」


 :ルート君はツンデレ

 :表情で結構わかるよ

 :今も恥ずかしそうに目を離しているし


「よし次の質問選ぼう」

「逃げた」


 :逃げたね

 :逃げたな

 :逃げた


「えーと、なにしよう。お二人にValの強さの秘訣を知りたいですって。これ僕も答えた方がいいのかな……?とりあえず、師匠先お願いー」

「ん。そうだね、意識することかな。敵も味方も、一つ一つ意識してやってみたら」

「意識、僕も過去に言われたね」

「ん。やっぱ、意識して行うと自信がつく。プロとか私ぐらいになると、無意識にするようになるけどね」

「僕も少しずつ、無意識にできるようになった気がする」

「ルートの場合、言われたことを身に着けるのが早いけど……。まあ、意識することは難しいから、気長にゲームするのもいいと思う」

「やっぱ、楽しみつつやるのが一番だよね」


 :ほー

 :ありがとうございます!

 :なるほどね

 :自然と身につくまでゲームを楽しむって感じか


「じゃあ、ルートからは?」

「そうだなー。僕は技術的な事じゃなくて、精神的な事で言おうかな。このゲームのやめる原因って、結構野良とギスることだと思うんだよね」

「ん、あるね」

「うん。熱くなるからこそのこれがあると思う。だから、僕はその場面で精神的に冷静になって反省できれば、強くなれると思う」

「……」

「自分を見つめることが……できるといいかもね。まあ、そこで冷静になることが難しいけどね」

「…………」

「その日は、怒ったり泣いたりしても、次の日には、落ち着けるでしょ。次があるから、その時に考えるってことをしてみたら、どうかな?」


 :なんか言葉が重くって心に刺さった

 :なるほど!

 :なんとなく理解できる


「まあ言っていることは後回しにしょうということだけどね。僕の場合、師匠いてくれたおかげで、そこまで深く考えていないけど」

「……なんか弟子が思ったより考えていてびっくりした」

「えぇ、僕ってアホなイメージなのか」

「あはは、そうじゃなくて、何って言うか困る」

「そっか」


 :17歳と思えないよね

 :その考えを持っているのがすごい


「そうそう、17歳と思えないというか。ルートがすごいなあって思った」

「そうかな?まあ、……いろいろと経験しているからかな」

「そうなんだ」

「僕の話はこのぐらいにして、そろそろ次の質問行こう」

「ん。あ、サーバー直ったって」

「なら、Valやりつつ、残りの質問答えようか」

「ん」


 __________


 その後も、いつも通りに配信を楽しんだ。いつもと同じように、ルートが切磋琢磨にValを練習し、花蓮がその様子を見て反省点を教える。ところどころ雑談を挟みながら。


 一か月。僕にとってはとてつもなく濃い毎日だった。それもこれも全部、花蓮のおかげだ。あの時、花蓮がDMしてきたことから始まった。

 そして、僕はここが好きなんだなと、改めて思った。


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