第11話 ふたり雑談前編

 そして、一ヶ月が過ぎた。あれから、ほぼ毎日花蓮とValをしていた。

 大会に誘われている身なので、なんとしてでも上手くなろうと頑張っている。真剣に取り組んだ結果、ゲームでのランクアップや成績トップなど、着実に実力を積み上げている。


 でもまだ足りない。花蓮と同じレベルまで辿り着けていないからだ。やはり、ゲーム上位の人と戦い始めて、なかなか勝つことができない。僕はこの壁を乗り越えなくてはならない。ゲームはやればやるだけ上手くなると考え、もう一層ゲームを真剣に取り組もうと思った。




 花蓮に大会を誘われて一ヶ月。ついに公式が大会を発表する日だ。

 当日は、大きな盛り上がりを見せた。最近有名になりつつあるValがカジュアル大会を開くと。しかも、優勝賞金100万と。僕もこんな大きな大会になるのかと驚いた。

 それらの影響により、このゲームの人口が大きく増加して、今よりもっと盛り上がるだろう。

 まあ、招待制の大会ということであり、自由ではないだの、不公平だのと、少し荒れたけど。


 そして、あと一ヶ月となった。意外と時間がないと少し焦った。カジュアル大会と言われているから、そこまで勝ちに拘らなくてもいいと思う。しかし、単純に勝ちたい、優勝したいという気持ちがある。


「……楽しみだな」


 _________


「Hello、みんな。ルートです」

「こんー、花蓮です」

「今日はコーチングではなく、ふたり雑談します」

「ん」

「Valがサーバー落ちているみたいので。よろしくね」


 :hello-

 :ハロー

 :初対談!

 :了解


「そういや、まだ対談やったことなかったよね」

「ん。まだ、一ヶ月ぐらい」

「もう一ヶ月経ったのか。早いね」


 :あっという間

 :一ヶ月でルート君上手くなったね!


「ん。一ヶ月でよく頑張った」

「やっぱ、師匠のおかげだよ。ありがとう」

「どういたしまして。まだまだこれからだけどね」

「うん、ようやく上位帯に入れたからね。師匠までが遠い……」

「まだまだ」


 :上位帯は大変?

 :これからが本番だよな

 :がんばれ


「そうそう、上位帯で何回かランクやったけど、本当に難しいよ」

「一個のミスが命取り」

「そんなレベルなの?これはなかなか躓きそう。いやー、怖いな」

「ソロはむずいから、フルパでもいいよ?」

「……友達がいないよ」


 :ソロはきつそう

 :;;

 :これから人が増えるから……

 :Valは今から大きくなるから


「ん。大会あるから、人がたくさんくる。つまり、友達ができる」

「Valに人が増えることは嬉しいけど、友達できるかは別では……。でも公式が大会開催するのすごいね」


 :楽しみ

 :優勝賞品100万です。

 :盛り上がっているね

 :二人とも出る?w


「100万。いいパソコンが買える!」

「……もっといいもの買ったら?」

「今欲しいもの、パソコンぐらいだもん」


 :確かに買えるけど…

 :100万は夢がある

 :花蓮ちゃん、その通りすぎる


「逆に花蓮は100万あったら、どうする?」

「んー、貯金かな」

「堅実的だね。意外」

「そう?特に欲しいものがない」

「でも100万だよ。美味しいもの食べたりとかなんか高級なものを買ったりとか」

「今の生活で満足」


 :真面目

 :なんとなくそれっぽい

 :ギャンブルして増やそうw


「ギャンブルとかダメだよ。てか僕未成年!アウトです。」

「え……?未成年なの?」

「あれ、言ってなかったけ。17歳でバリバリの高校生だよ。」

「そうだったのか……」

「どうした?」

「いや、これって事案ですか?」

「?」


 :あー言われてみると結構危なかったり

 :大人な女性と未成年少年がゲーム()

 :いや健全な関係だし、ただ師弟な関係だけだし


「別に何もしていないよ。それに花蓮のこと信頼しているし」

「……それなら、大丈夫か。私だって弟子のこと信頼しているよ」

「ならセーフ!」


 :なんかいいね!

 :これがてぇてぇ

 :てぇてぇ


「自分がてぇてぇて言われるとなんか複雑」

「同じく」

「まあ、いっか」

「ん」


 花蓮に未成年だったことを伝え忘れていた。

 この一ヶ月で仲が深まり、僕はこのことを言ったつもりであった。まあ、特に良くないこととかはなさそうでよかった。

 まだまだ、僕たちの雑談は続く!


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