第10話 コーチング

 そして翌日、約束通り今日はコーチングだ。

 Valを1から師匠ぐらいの実力になるまでやる予定だ。よくよく考えると俺が世界レベルに行けるのか疑問だ。まあ、花蓮が教えてくれるというので信じて頑張ろう。


 __________


「始めた。こんー」

「Hello、ルートです」

「コーチングする」

「お願いしますー」


 :こんー

 :こん

 :ハロー


「じゃあ、練習から」

「はい。えっと、一応視聴者に言われたことをやっているよ。なんなら花蓮さんじゃなくて……花蓮の動画を見てやっているよ」

「んー、うまい。なら、もっとやれる。速度マックスでそこから5m離れて」

「え?これ絶対無理でしょ……。師匠ー」

「ん?できるまで」

「えっ」


 :いきなり鬼畜w

 :ルート君、可哀そうw

 :花蓮さん…ルート虐助かる


「え。むず。助けてリスナー。……なんか一人おかしくない?」

「ん?助かってる。OK」

「えー。本当に難しい」

「ん、設定変える?」

「あー、確かに。僕まだ初期設定ですね」

「……初期でそれ?」

「まあ普通にやってるよ」

「そう。私のやつと同じで?」

「お願いします」

「__これでOK」

「はい。ならやりますか」


 一時間後……


「いいじゃない」

「そうですか」

「これを毎日やってよ?」

「はーい。気が乗らないけど。次、なにする?」

「ランク回しながら私が教える感じで」

「はいはい」


 :もう一時間か

 :あんま参考にならんかったw

 :練習からおかしいもん、この二人

 :さらっと順応するルート君も変態と。


「……解せぬ。師匠に言われたとおりにやっただけなのに変態とは」

「すごい才能だよ?ルートだけ」

「うーん、あまりうれしくないような。あ、始まりました」

「ん。がんば」

「はい!」


 __________


 なんやかんやでもう夜遅くまでなってきた。さすがに疲れてきたので、配信は終わっていた。

 

 しかし、花蓮が話したいことがあると言われていたから、まだ通話に残っていた。


「お待たせ」

「大丈夫、それでなにかあったの?」

「お願いがあって」

「はい……」

「これから2ヶ月後、Valの大会を開かれる」

「そうなんですか!」

「そう、それで、あの。一緒に出てくれない?」


 え、僕出ていいのと思ってしまう。でも、それなら、


「もちろん。花蓮と出られるならよろこんで」

「……ありがと」

「こちらこそ。てか、2か月って結構あるよね?」

「ん。あと、Val公式がやるってきた」

「え、その大会ってプロのやつですか?」

「一応カジュアル。でも、世界ランカーがいる」

「なるほど。花蓮みたいな人ね」


 世界ランク。そのゲーム内の世界順位。その上位500位にいる人を世界ランカーと呼ばれている。簡単に言うとめちゃくちゃうまい人。


「それで私が呼ばれた」

「あー言われてみれば、Valって日本のプロいないのか。それで、花蓮とかの世界ランカーから呼んだのか」

「そう。コーチングもそう」


 あー、そういうことか。急な誘いだったがそんな魂胆があったのか。


「なるほど。あと三人はどうなってます?」

「……後2人。ルートと公式から1人呼ぶって」

「花蓮が後2人呼ぶの?てかいつ公式から発表されます?」

「招待制で大会開くみたいで私ともう一人それぞれ推薦する感じらしい。発表は一か月後ぐらいって聞いた」

「なるほどねー。花蓮も大変だね」

「ん、もう一人もわからないし。初大会だし」

「俺は、自分がやっているカスタムぐらいしかやったことない。」

「私はそれすら」

「あ、そうだ。それなら、次のカスタム来ます?」

「いいの?」

「特に決まりとかないし。なんなら初ゲストだね」

「じゃあ、参加する」

「次は来週の土曜日にやるから」

「ん」

「あ。今日はそろそろ落ちます」

「ん。……これからよろしくね」

「はい。こちらこそ、よろしく。強くなるよ」

「ん。じゃあね」


 __________


 まさか、自分が大会に呼ばれるとは思っていなかった。花蓮に誘われたときは驚きが大きかったが、今はワクワクしている。

 初めてできた友達の為に、俺は本気でValを頑張ろうと思った。これからの2か月全力で力を蓄えよう。とても楽しみだ。

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