第34話 腫れ物に触るよう

 3日目も無事終え、今はおじさんとご飯を食べている。ちなみに、今日の晩御飯はホテルのバイキングだ。和洋中、色とりどりの料理を好きなだけ食べる予定だ。


「お疲れ様だな」

「うん、学校疲れた。しばらく行きたくないよ」

「ははは。まあ学生のうちに学校を楽しんでおけよ」

「はいはい。友達もできたし満足したよ」

「そっか、智樹に友達かぁ。なんかしみじみと感じる」

「僕をなんだと思っているのよ……」

「コミュ弱」

「ぐっ。言わなくっていいじゃない!」


 本当にストレートに心をえぐってくる。こちとら疲れているんだぞ、もっといたわってもいいのでは?!

 それはさておき、本当に今回のスクーリングは満足した。久しぶりに高校というか学校そのものを感じた。一年前は本当に楽しかったな……っと少しネガティブになってしまった。そのぐらい良かったということにしておこう。


「お腹いっぱいになってきた。デザート取ってくるね」

「はーい」


 そう、僕は席から離れる。心が傷つけられたので甘いもので治そう。バイキングには綺麗で甘そうなデザートが並べられている。やっぱりこういうのは、こうやって並べられている料理を眺めながら何を食べようと悩むのが醍醐味だと思う。

 端から端まで見ていると、小さい女の子がうろうろしていることに気がついた。小学生低学年ぐらいだろうか、今にも泣きそうな感じがする。まだ憶測の範囲だが、おそらくは迷子なのだろう

 それでも周りの大人たちは見て見ぬふりをする。まあ、関わりたくないよな。あえて言うのならば、腫れ物。


「どうしたの?」

「……まいご」

「そっか。お父さんとかお母さんはどこかわかる?」

「……わかんない」

「うん、わかった。ちょっと待ってね」


 やっぱり、迷子だった。とりあえず、スマホでおじさんを呼ぶ。僕もどうしたらいいかわからないからね。頼れる大人を頼っていこう。


「どうしたの?これ気になる?」

「……うん。どうしてのっているの?」

「僕はね。足がね、なくなっちゃたの。それでこれに乗っているの」

「そうなの」

「乗ってみる?僕の膝でもいいなら」


 僕の膝をトントンとしながら話す。見たことがないものに興味津々で、なんともかわいらしい子だな。


「のりたい」

「いいよ。ここどうぞ」


 うんしょっと、小さい体でよじ登ってきた。僕の膝に乗ると、少し顔色が良くなったように見える。少しは安心してくれたのかな。


「お、いた。どうしたって」

「あ、おじさん。見ての通り、迷子の女の子を見つけて。助けてほしい」

「お前なあ……まあいいか。とりあえずエントランスまで行こう」

「はーい。ね、車今から動くからジッとしててね」

「うん」


 女の子を膝に乗せたまま、エントランスまで行った。女の子の方を見ると、この車椅子が不思議なのかなんだか楽しそうだ。その後、エントランスの人に事情を話していると、女の子の両親が現れた。女の子がお母さんとお父さんを見つけると、一目散に走っていた。

 その姿がなんだか妹みたいだった。元気よく走っていく妹の姿がフラッシュバックした。


「……」


 それから、女の子とその両親から感謝の言葉をもらった。車椅子で座っているだけで、僕は腫れ物と烙印が押された。自分が誰にも助けてくれない悲しさを知っている。だからこその行動だった。感謝され、その行動が報われた感じがした。助けられてよかった。


 __________


「……ねえ、お盆の日って帰省するの?」

「…………どうしたい?智樹次第だ」

「僕は行きたい。一周忌だよね……」

「……わかった。一緒に行こう」


 両親と妹の一周忌。あの女の子から僕は思い出した。おじさんは少し困った顔をしていた。意図的にこの話をしないようにしていたようだ。ありがたいが、僕は大丈夫だ。というか、今の生活が忙しすぎて忘れかけていた。それほど、大丈夫になってきた。

 まあ、一年前の僕はこんなことを想像できてなさそうだけど。


 今年のお盆も忙しくなりそうだ。


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