第14話 顔合わせです!

 数日後、ついにVal公式大会に参加するメンバーと顔合わせする日になった。つまり、僕の推しである氷谷キラトさんと喋ることができる日ということだ。

 もちろん、とても緊張している。初対面の人もいるだけでも慌てるのに、推しとなるとむちゃくちゃ緊張する。何しゃべろうとアワアワしていると、DMが来た。


「底辺Vがしゃしゃりでるな」っと。


 今更だが、公式もメンバーが発表されたときから、少し燃えているらしい。大会は完全招待制で開催される。それが少し話題になり、今回の出場メンバーでも物議を醸した。まあ、九割以上が特に何も文句がなく、楽しみにしているようだ。しかし、当たり前だが、批判的な意見もある。そのため、こうやって僕の方にもメッセージに来ていた。


 まあ、こうゆうものが来ているということは炎上しているのかなーとか、初アンチDMだなーと気楽に考えていた。

 キラトさんも雑談で言っていた。

「こういう人は相手する方がばからしい」っと。


 推しが言うならそれを実行するのが、オタクです!


 冗談はさておき、師匠こと花蓮に事前にこういうのが来るよーって教えてもらっていたから、無傷だ。

 余談だが、「師匠、ありがとう!意外と何とも思わなかった」っとメッセージを送ったら、


「それはよかったけど、元気で言うことじゃないよw」っと花蓮に笑われた。


 そんなこんなで、時間だ。

 僕は、パソコン部屋に移動して準備し始めた。


 __________


(通話のマイクミュート中は『』で表記しています。配信の音は入っているという程で書いていきます。)


『あああ。声は言っているかな』


 :Hello

 :頑張れ!


「みんな、配信始まったかな。よし、僕もできました」


 推しの声が聞こえてきた。胸の鼓動がうるさく感じる。こんなに緊張しているため、もちろん返答することができない。余裕がないよぅ。


「……」


「よし、みんな緊張しているみたいだね。初めての人がいるので自己紹介からしましょうかー。こんきら~、氷谷キラトです。指名していこうか、次、イフー」

「イフです。今回は初心者です。ヨロー」

「じゃあレナー」

「同じく初心者の時雨レナだよ。よろしく」

「次は花蓮さん。お願いしますー」

「ん。初めまして、花蓮です。よろしくお願いします」

「最後にルートさん」

「ぁじめましって。ルートです。お願いします。」


「あはは」

「ぷははは」

「きれいに噛んだなw」

「ふふ」

「はは。そんな緊張しなくても大丈夫だよ?」

「はぃ…。頑張ります」


 :www

 :やったよこの子wwww

 :ルート君www


「ということで、このメンバーで一か月後のVal大会に出ますー。よろしくー!」

「お願いします!」

「よろしくー」

「よろしく!」

「よろ」

「ということで早速、みんなでValやっていこう」


 配信者としてはいいのだろうか。いきなり不安でいっぱいでのスタートを切った。


 __________


『よし、めっちゃぶれる。終わった』


 :ww

 :すっごいw

 :緊張しすぎだろwww


「Valはストッピングが大事。止まって撃つ」

「なるほどー」

「世界五位の人が言っているから、それが正しい」

「花蓮先生ー、指示してくる人がたくさんいます」

「無視、もしくはうるさいという。私を信じて」

「うるせーーー!!」

「お前の声がうるさいわ!」

「あはは」

『はは』


『師匠がもう馴染んでいるよー。やめてー!僕を一人にしないでー』


 :ぼっちww

 :しゃべれ!

 :しゃべりに行きなさい!


『緊張して頭が真っ白ですー!無理無理。まじで無理。』

「ルート君、大丈夫ですかー?」

「え。ぁ、はい。頭が真っ白です」

「それは大丈夫ではないのでは……」

「そういや、ルート君は花蓮さんの弟子なんだよね?」

「そうですね。やらしてもらってます」

「それじゃあ、ルート君も強いってことだよね?」

「そのはずなんですけど、今日だけなぜか弾が当たらないですよね」

「あれ、俺たちと一緒?」

「あれ、僕は初心者だったのか……」

「あはは。師匠的にはいいですか?」

「んー?ルートがしゃべれないのはいつものことだから」

「そうなんだ」

「まあ、エイムが合わないなら合うまでやればいいもんね?ルート」と、花蓮はいつもより冷たく言った。

 その言葉を聞いて、僕は「スー」と恐怖に満ちた呼吸音を鳴らした。


 あの地獄はもう体験したくないと強く思った。そう思うだけで、手の震えが止まった。花蓮の一言で緊張が解けたに違いない。……決して、別の震えが合わさり止まったわけではないと思う。多分。


「スー。なんか急に手の震えが止まった……」

「え、むっちゃこわ、今の声」

「え……?」

「ルート君って花蓮さんに……。私も悪寒を感じた」


 :ひぇええ、あれだけは勘弁を

 :こっわ

 :急にホラーw


「師匠、もう大丈夫です。いつも、いやいつも以上うまくなりました」

「ん」

「事前に切り抜きとか見たけど、生で見るとこれは……」

「これはこれでいい。ショタがいじめられいる」

「レナ、ステイだよ……」

「え、なんか別の寒気がしましたけど……」

「大丈夫だよ?」

「ルート。気にしちゃ負け」

「女性陣が怖いんですが。キラトさん、イフさん」

「……よし」

「よし」

「なにが!?」


 :ショタ好きのレナさんだもんねw

 :ルート君、逃げて!

 :このチームたくましいな()


 _________


 配信中ずっと緊張していたが、なんとか終えた。

 今回は初めてだったため、視聴者から特に言われることはなかった。しかし、このままの調子ではよくない。

 せっかくの大会だ。楽しまないと。


「うん?花蓮からDMだ。えっとー」


 花蓮:おつかれ。暇だったらしゃべらない?

 急な誘いだが、僕はすぐに「行く!」っと返した。


 花蓮との雑談だが、そこでも喋れと怒られた。なんなら、喋らないと地獄の修行をさせると脅された。

 あれだけはいやだあ。そんな気持ちで、明日の練習いや、会話を頑張ろう。


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