第24話 勝つ気持ちは誰よりも

 翌日、今日は日曜日である。いつもの日課を素早く済まし、今はおじさんと外に出かけている。本番までまだまだ時間があるため、久しぶりの買い出しだ。


「おじさんー、今日何買う?」

「うーん、食料品と少し家電を買い替えるかな。あとはとあるものをね」

「それじゃあ、家電から?」

「うん。行こう」


「昨日料理していて言われたけど、よくあの状態で料理していたな」

「うん?」

「電子レンジとか炊飯器。結構、壊れていたよ。あれで料理上手くできるのか?」

「ああ、壊れているのはオーブンの方だし、あまり使ってなかったからね。レンチンだけならまだ使えたし、炊飯器は一気に炊くから毎日使わないし」

「壊れているなら言ってくればいいのに。金はたくさんあるぞー」

「金だけのおっさんはモテないぞー。料理できるようになったら?」

「智樹もグサグサさしてくるな。まあ買い替えることを機に頑張ろうかな」

「お、ならいいもの買わないとね」

「智樹のためにもな」

「はいはい」


 新しいものに買い替えるのはワクワクする。まだまだ、僕も料理を楽しめそうだな。

 それとおじさんが料理を頑張るか。道のりは長そうだな。まあ、誰に作ろうとしているかは明白だけど。



 僕たちはいろいろな商品を見比べて、選び購入した。製品の宅配も頼んだ。家で受け取れて便利だな。早く届って使ってみたいな。結構、楽しみだな。


 次に食料品を買いに行く。最近、僕も練習で忙しくて、家の冷蔵庫には何もない。今日はたくさん買って帰ろう。


「あと、もうちょっと待ってくれ」

「……?うん」


 少し経つと、すぐそこにあるフードコートのドーナッツをテイクアウトしてきた。二箱分を手にして。


「ドーナッツ?二箱?」

「あ、片方は俺たち分。そして、もう片方は社長分だ」

「ふーん。なるほどね」

「なんだ、その目。にやにやしやがって」

「それじゃあ、温かいうちに届けないとねー。彼女にね。あ、間違えた」

「……わざとらしい。てか俺とあかりはそんなものじゃないわ。昨日のカツをお礼じゃ」

「お礼ならいいもので渡さないと。早く帰ろう~」


 おじさんは少し曇った顔になってた。

 ちょっと踏み込んではいけない話みたいだった。僕は、二人は元々お付き合いをしていたが、おじさんが僕を引き取ったことで、二人は交際を遠慮していると思っていた。そう思い、申し訳ないと感じて、こうやって揶揄いながら別に大丈夫だよってアピールしたかった。ちょっと気まずい空気になってしまった。


「……まあもう少ししたらわかるかもな。そろそろ行こうか」

「……どういう__」

「まあまあ。智樹の気持ちもなんとなくわかったし。流石にそろそろ終わらせないとな」


 そう言いながら、おじさんは澄ました顔をしていた。


 _________


 そして、夕方。大会があと数時間後始まる。

 僕は花蓮と通話していた。昨日の冗談が実現するとは……。あの時もっと否定しておけばと後悔していた。

 何を隠そう、マジであの地獄の練習をしている。百体のボットを百秒以内に全て倒す。それを全ての武器を交換しながら使って。それが終わったら、ボットの自動出現を最速にして、また全て倒す。これも、すべての武器を交換しながら。


 うん、頭おかしい。弱い武器も混じるため、どうしてもタイムロスができる。それなのに、1秒1体を倒さなければならない。そんなの可能なのか、うちの師匠はこれをほぼ毎日しているらしい。そして毎日成功させている。

 僕は、一応毎日一回している。ほとんど成功してないけど。


「マジでやるの?」

「ん。そんなにやりたくないの?」

「うん。てか普通に疲れる」

「それじゃあ、1発でできたらなんでもしてあげる」

「なんでもか。修行をもっと優しくしてとかしてもらえるのか」

「……もっといいものに使って欲しい」

「少しやる気出たしやるか」

「よし、行くよ。用意スタート」


 僕はめちゃくちゃ集中した。やっぱり、なんでもしてくれるということが気になる。

 まあ、実は一時間前からエイムを温めている。そのため、ちゃんと集中すればそんなのだ。


「100!時間は!」

「99。ギリギリ合格だね」

「よしゃああ!もう疲れたああ」

「ちなみに私90秒だよ」

「師匠、僕はできた。だから知らないそんな記録」

「まあ、いいか。それで何して欲しい?」

「そっか。なんでもいうことを、といっても特にないな」

「なんかの企画でもいいから考えててね」

「はい。とりあえず、久しぶりにデュオいこ」

「ん」


 みんなと合流するまで、僕と花蓮はランクを回した。


 __________


 そして、そして。時刻は18時、決戦の時だ。

 決勝に進むみんなには、それぞれの考えや感じたものがあるのだろう。でも、たった一つ、同じものがあるとするなら、それは絶対勝つという気持ちだろう。


 この戦いは、自分たちがそしてチームが積み上げたものを発揮する場。どちらのチームが優秀だったかを決めるところでもある。

 僕たちにとっても相手にとっても、負けられない戦いだ。だから、正々堂々とそして楽しんで戦おう。


 僕は僕なりの恩返しの気持ちと共に。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る