第5話 自動でレベルが上がっちゃうんです


俺は今日も草原に来たが今日は色々実験をしてみることにした。

討伐判定は最後にHPを削りきった人に与えられるということは調査済みだ。


だからこの世界では経験値を与えたいパーティメンバーがいるならその人に最後の削りを任せるなんて手法も取られているみたいだ。


俺は考えていることをイレーナに伝える。


「実はさ。自動レベルアップシステムがあったらなぁって思って」

「自動レベルアップ?」


俺は頷く。


「寝ている間とかも勝手に稼いでくれる装置があったらよくない?」

「ど、どういうこと?寝てる間にアイルが倒しに来るの?」


俺は笑いながら違う違うと言って。

とりあえず下に用意した焚き火に目を落とした。


ここに来るまでに枯れ木を拾って組んだものだ。

俺はイレーナを待たせてスライムを1匹捕まえてきた。


意思があるのかどうか分からないけどムニョムニョ動いて攻撃してくる様子の見えないスライム。


そのスライムを脇で抱えてから


「ファイアボール」


俺は基礎魔法のファイアボールを作り出す。

ファイアボールすらも余り得意ではなくてふよふよと不安定だけどそれを焚き火に投げ入れた。


ボオッと火のつく焚き火。

それにスライムを落とす。

しばらく見ていると


【アイルがスライムを討伐しました。経験値を1獲得しました】


と、出てくる。

どうやら魔法を使って起こした火ならば焚き火でも討伐したと見なされて経験値が入るようだ。


「これがどうかしたの?」


聞いてくるイレーナに説明する。


「今のは焚き火で倒しても経験値が発生するのかどうかを確認しただけだよ」


そう答えて俺は今度は家から持ってきたスコップを使って穴を掘り始める。


「イレーナも手伝って」

「う、うん」


2人で穴を掘っていく。

1時間後。


深さ1メートル、横も1メートルくらいの穴ができた。


「ふぅ」


穴の底から出る。


「あ、アイル出れないよ。出してー」


イレーナの手を引っ張って穴から出すけど勢い余って後ろに転んでしまった。


「きゃっ!」


イレーナが俺に倒れ込んできた。

近くなる俺達の顔。


「あ、ありがとう……」


そうとだけ言って照れたように顔を逸らすイレーナ。を見て俺もドキドキしていた。

可愛いと思ったけど俺にはビルチがいるんだった。


首を横にブンブン振ってから次の作業に取り掛かる。

穴の中に枯れ木を落として、とりあえず終わりだ。


その後に俺は近くにスライム用の囲いを作った。

少し盛り上がっている場所だ。


以前作ったこともあるのでスムーズに作業は進む。


自然湧きを待つのが面倒になり、以前倒すために増殖させるために作った。


スライムは放っておけば勝手に分裂して増殖する。


つまり倒す手間も増えるけど、本来1だった経験値が2になるというわけだ。


囲いの一部は開くように設定する。魔法道具と呼ばれる道具を使えばそんなことも簡単に出来る。


その場所からさっきの穴へ向けて滑り台のように、地面を斜めに削って繋げる。


この囲いにはスライムを入れて適度に増やし一定数増えればこの滑り台から滑り台から滑り落ちてあの穴に入るようにする、という仕組みだ。


「な、なんかすごいのできてる!これ、どうするの?」


イレーナの質問に答えるためにとりあえず実演することにした。


俺は囲いにスライムを何匹か放り込んでそれから穴のそこに焚き火を入れそれに、ファイアボールを放つ。

ボオッと火のつく焚き火。


しばらく待っているとスライムが分裂して合計の数が20になった。

するとバカンと囲いの一部が空いて流れ落ちていくスライム。


15匹くらいだ。


規定数流れれば扉は封鎖されて全部は流れないようにしてある。


流れ落ちたスライムが焚き火に当たって消滅。


【アイルがスライム15体を撃破しました。アイルが経験値を15獲得しました】


と表示される。


「えー!!!!すごーい!!!アイル!!!なにこれーー!!!」


俺の腕に飛びついてくるイレーナ。

その彼女の前に


【アイルの経験値シェアが発動しました。イレーナが経験値を15獲得しました】


「えー?!私にも経験値入るの?!!!!」


やったーと喜ぶイレーナ。


「ありがとーアイル!私もレベル上がるよー!」


ぴょんぴょん跳ねて俺に感謝してくるイレーナ。

これが俺の考えた自動レベルアップシステムだ。


囲いの方を見ると今もスライムがプルプル体を震わせて分裂していた。

やがてそれは20匹以上になると自動的に囲いが開いてまた消滅する。


寝ていても遊んでいても何しててもレベルが勝手に稼げるシステム。


「すごい!すごいよ!アイル!自動で経験値入ってるよ!私アイルに出会えて幸せ!」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


さてこの作業をしていたら既に日も暮れかかっていた。


「今日はもう帰ろっか。いつもよりはちょっと早いけど」

「うん!」


元気に返事をしたイレーナと俺は家に帰ることにした。

その間も


【アイルがスライム15体を撃破しました。アイルが経験値を15獲得しました】

【アイルの経験値シェアが発動しました。イレーナが経験値を15獲得しました】

【アイルがスライム15体を撃破しました。アイルが経験値を15獲得しました】

【アイルの経験値シェアが発動しました。イレーナが経験値を15獲得しました】

【アイルがスライム15体を撃破しました。アイルが経験値を15獲得しました】

【アイルの経験値シェアが発動しました。イレーナが経験値を15獲得しました】


と経験値を自動的に俺たちは獲得していた。

流石に自分で動いて経験値を稼ぐよりは効率は悪いだろうけど。自分で倒すのはだるいもん。楽なのがいい。


さぁ、明日は何をしようかなぁ?

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