第6話 王都からの手紙
1週間後
「ま、待ってアイル〜」
「ははは、早く行くぞイレーナ」
俺たちは今日も朝から遊びに行こうとしていたけどそれをビルチの父親であるダダンナさんに止められた。
「待ちさない2人とも」
「どうしたの?」
俺はダダンナさんに聞いてみる。
「2人とも毎日遊び回っているようだけど冒険者を目指すんじゃなかったのかい?」
「目指してるよ?」
首を横に傾げた。
どゆこと?
「はぁ……いいかい?アイル。君は数年前もっと必死にモンスターを狩っていたじゃないか。でもココ最近はずっと遊んでいないか?」
俺はイレーナと顔を見合せた。
「それがどうかした?」
「スライムを倒したり何かを倒したりして経験値を稼がなくていいのか?そんなんじゃ後で後悔するぞ」
なるほど。
俺たちが遊び回っているから経験値稼ぎが出来ていないと思っているのかもしれない。
「俺とイレーナはこれでも毎日2000弱くらい経験値稼いでるよ?」
「はい。稼いでるのであります」
ビシッと敬礼するイレーナ。
何処で覚えてきたんだろう。
「で、でも遊び回ってるだけじゃないか?2人で」
俺はダダンナさんのレベルを見た。
30前後くらい。
昔Dランクくらいまでは冒険者をやっていたというのは聞いた。
「ならダダンナさん俺と勝負する?」
「しょ、勝負だって?僕と?」
「うん。それで俺が勝てたらちゃんと経験値稼いでるってことで任せて欲しいんだけど」
多分勝てると思う。
俺はこれでも言われた通り小さな頃はスライム相手に色んな相手を投影させて戦ってきた。
殆どのパターンに対応できると思う。
今もきっと体はついていく。
俺はいつかのようにナイフを取りだした。
「アイル。僕はこれでも冒険者だったんだよ?その僕に君が勝てるわけないじゃないか」
「逃げるの?俺は自分の実力が今どれくらいか知りたいんだけどな」
ナイフをクルクル回して挑発的な目でダダンナさんを見る。
「その手には乗らないよアイル。君挑発得意だもんね」
前世では煽ったり煽られたりそんなものは日常だったから、たしかに普通の人よりは得意だと思う。
「負けるのが怖い?不戦勝ってことでいいかな?」
「そこまで言うならやってあげるよ」
そう言って構えを取るダダンナさん。
「制限時間内に僕の体に触れたら勝ちでいいよ」
そう言っていいよと口にしたダダンナさん。
舐めているのか手は出してこない。
ならば、スっ!
「わっ!危ない!」
ナイフを顔に向けて投げてから
ただ、歩いて俺はダダンナさんの腰に手を触れた。
「はっ!」
触れられているのに気付いたのか驚くダダンナさん。
ちなみにナイフは偽物だから当たっても問題はない。
「い、いつのまに?!」
「油断したよね?投げないとでも思った?」
そう言うと座り込むダダンナさん。
「こ、降参だよ。もう僕からは何も言わない」
そう言うとイレーナが俺に飛びついてきた。
「すごーい!アイル!大人の人に勝っちゃった!!!」
「じゃ、今日も遊びに行ってくるよ」
ダダンナさんにそう言って俺は今日もイレーナと遊び倒す。
俺は知ってるんだ。前世があったから。
この楽しい子供時代はもう帰っては来ない。
なら遊ぶしかないっしょ、と。
「ただいまー」
家に帰るとダダンナさんが俺に紙を渡してきた。
「なにこれ?」
「ビルチからの手紙だよ。読んで返事をしてあげて欲しい。あの子も不安だろうから」
受け取ると俺は部屋に向かって手紙を開けた。
中に書いてあったのは王都の訓練は厳しいこと。
周りとやって行けるか不安なこと。
そんなことだった。
それから最後に俺のこと好きだって書いてた。
「な、なにそれ」
いつから隣にいたのか分からないけどイレーナが聞いてきた。
手紙は覗いてなかったらしいけど。
「い、いつからいたんだよ」
「ずっとついてきてたよ。夢中でアイル気付いてなかったけど」
「ただの手紙だよ」
そう言いながら俺は机に座ると返事を書き始める。
反対にイレーナは俺のベッドの下を漁り始めた。
「何してんの?イレーナ」
「村の子に聞いたよー男の子ってここに何か隠してるって、ってあれ?何も無いー」
「俺はそんなところに隠してないんだよねー」
そんな誰でも分かるようなところに物は隠してない。
そもそも何か隠すようなものなんて別にないしなぁ。
「うーん。なんにもないなぁ」
そうやってベッドの下から這い上がる頃には俺は手紙を書き終えていた。
さて、明日にも出そうかな。
そうやって寝るかと準備を始めようと思った時
「ね、ねぇ。今日もアイルと寝ていい?」
「いいけど?」
「やたー」
喜ぶイレーナ。
最近イレーナとよくいるからか知らないけど俺は最近意識し始めてるんだよなぁ。
イレーナがシャワー浴びてるところとかも想像したりするんだけど、やめとく。
「ねぇ!一緒にシャワー浴びようよアイル」
「そ、それは不味いんじゃないか?」
そう言ってみてもイレーナは俺の腕にしがみついてきて
「恥ずかしいのぉ?アイル?男の子って裸見たいんじゃないのー?」
「そ、そりゃ見たいけどさ」
俺も男だけど。
でもさ
「好きでもない男にそうやって見せるもんじゃないよイレーナ」
そう言うと彼女は顔を下に向ける。
「わ、私はアイルのこと好きだもん。だからいいよ」
そう言ってくれる。
自分、突撃していいんですか?
すまないビルチ。
これは浮ついた心だ。浮気だよ。本命は君だけだよ。
本能に抗えないんだよ。
俺は意思の弱い男さ。
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