第11話 初めてのお客さん


翌日。

扉も直ってイレーナと遊んで客が来るのを待つことにしたが客が来ないので外に出て呼んでみることにした。


「経験値いりませんか〜?なんと、今ならオープン価格!」


言ってみるがし〜ん。

みんな素通りしていく。


「経験値なんて自分で稼いでなんぼだろうが」

「だよな〜。金で経験値買うなんて虚しいわ」


そんな声が聞こえてくる。

みんなはお金払って楽に強くなりたくないらしい。


まぁそういう人がいるのは分かってる事だしめげずに突っ立っていると


「すまない。君が経験値を売っているという人か?」


声をかけられた。

そちらに目をやると女の人が立っていた。


金色の髪をロングにした女の人だった。


「そうだけど」

「私はギルドマスターのルーシーという」


そう名乗ってきた女の人。

え?ギルマス?


「ギルマスが何の用?」

「いや、クエスト同行の仕事は我々が許可した人間じゃないと出来ない決まりになってるから見に来たんだが」

「俺は同行じゃないよ」


本当に経験値そのものを売っていると言うけど。


「信じられないな。そんな仕事見たことがない」


そう言って彼女は俺に皮袋を渡してきた。


「経験値2000。頼めるか?」

「うん。どうぞ」


俺は中にギルマスを入れた。


「お邪魔する」


律儀にそう口にするギルマスに対して俺はルゼルに椅子を用意させる。


「とりあえずそれに座って」


椅子に座るように伝えてからいつものように、俺はギルマスのルーシーにパーティ勧誘を行う。


「パーティ勧誘?」

「経験値を渡す際に必要になるから加入して。後で外すよ」


【ギルドマスターのルーシーがパーティに加入しました】


そう出たのを確認してから俺は奥の部屋でシステムを稼働させた。

経験値集中も使いギルマスだけに経験値を突っ込んでいく。


30分ほどで経験値2000の稼ぎが終わった。


「確認してみて」


俺がそう指示するとルーシーはステータスを開いて確認を始めたが


「ほ、本当に増えてる!」

「でしょ?」

「どうやってるのかは分からないが同行系では無いことはわかった」


そう口にするルーシーをパーティから除外する。

立ち上がるルーシーに聞いてみることにした。


「このまま店は続けてていい?」

「あぁ。問題ないだろう。ちゃんと経験値も入っているし」


ギルマスのお墨付きが出た。


そうして出口に向かうギルマス。

俺は扉を開けてやる。


「どうも、またよろしく頼むよ」


そう言うとまた時間の空いた時にでも来るよと言って出ていく彼女だったが


「あ、そうそう。もし冒険者登録していないのどあれば、ギルドに登録くらいは済ませてもいいんじゃないかな?」


そう聞いてきて思う。

確かにギルドカードがあれば色々やりやすくなるかな?身分証明書にもなるだろうし。


何より異世界と言えばとりあえずギルドという程じゃない?


「おっけー。行こっか」


そういえばイレーナは以前王都にいてカードを持っているらしい。


じゃあ俺だけでいいか。イレーナとルゼルに店番をやらせて俺はルーシーと共にギルドに向かう。


ギルドに付くとルーシーがカウンターまで案内してくれてそのまま受付が始まり、無事に終わった。


そしてEランクの冒険者カードを渡される。


「ありがとー」


そう言って俺は出ようとしたんだけど、声をかけてくる女の人が1人。


「あ、あのー」


そちらに目を向けると少女が2人と男が1人。


「経験値売ってる人ですよね?」


そう声をかけられた。

ルゼルから俺が経験値を売っているという話を聞いたらしい。


あの子はちゃんと宣伝したらしい。


「うん。そうだけど」


そう答えると少女は良かった、人違いじゃなかったと胸を撫で下ろす。


「私達冒険者になったばかりのEランクでモンスターが怖くて中々近寄れなくて。先に経験値が欲しいんです」


と言われた。

ふむ。そうか。


「お、お金払うので私たちに経験値を下さい」


そうお願いされた。

初めてマトモに来た客かこれ。


何だか嬉しくなってくる。


「いいよ。近くに店あるからそこまで来てくれる?案内するよ」


俺はそう言って少女達を店まで案内する。


扉を開けるとイレーナとルゼルが直ぐに察したようで人数分の椅子を用意していた。


3人が座って俺は対面に座って話をする。


「あ、俺の名前はアイルね」


そう名乗ると彼女はユイと名乗った。


俺たちと同じで遠くの田舎から幼なじみ同士でパーティを組んで出てきたようだが、農業をしていた子達らしくモンスターとの戦闘経験はあまりないらしい。


「あ、あのアイルさん」


ユイが口を開いて俺に聞いてくる。


「よ、良かったらコーチングもしてくれませんか?私たち武器もよく振れないんです。追加で払いますので」


ふむ。コーチングか。

それに関しては専用のところに行った方がいいんじゃないかなって思うけど、と伝えると


「どこも王都に住んでる人達ばかりでいっぱいになってるみたいなんです」


ふむ。そういうことか。

なら仕方ないな。


俺はイレーナとルゼルに目をやった。

イレーナはこれでも元聖女候補だったしそこそこやれるはずだ。


ルゼルも戦い方はしっかりと分かっているようだし、実戦を交えながら教えられるかもしれないな。


「いいよ。コーチング引き受けるよ」


と、その前に


「経験値はいくら欲しい?」

「じゃ、じゃあ、とりあえず全員に8000お願いできますか?」


8000だとみんなのレベルが16くらいになるのかな。


そこまで上がればEランクのクエストで負けることはないだろうってレベルだ。

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