第10話 この子給料いらないらしいです
俺はルゼルとイレーナを連れて奥の自動レベリングシステムのある部屋に来てからアクティブスキルを起動した。
【使用するスキルを選択してください】
→経験値集中
スキル詳細:パーティメンバー1人にパーティの獲得した全ての経験値を注ぎ込みます。
【経験値集中を使用するメンバーを選択してください】
・アイル
・イレーナ
→ルゼル
「今から全ての経験値を君に注ぎ込む」
「え?え?経験値を注ぎ込む?ここで何をするのですか?っていうか、何でスライム?」
不思議がっているルゼルの横で俺はレベリングシステムを動かす。
イレーナにもスキルを使ってもらいスライムの数を適度に増やしてもらう。
すると、どんどん消滅していくスライム。
【アイルがスライムを討伐しました。経験値を1獲得しました】
【経験値シェアの効果でイレーナ、ルゼルも経験値を1獲得しました】
【経験値集中の効果が発動しました。ルゼルが経験値3を獲得しました。イレーナ、アイルの獲得経験値0】
【アイルがスライムを討伐しました。経験値を1獲得しました】
【経験値シェアの効果でイレーナ、ルゼルも経験値を1獲得しました】
【経験値集中の効果が発動しました。ルゼルが経験値3を獲得しました。イレーナ、アイルの獲得経験値0】
どんどん視界の端で更新されていくログ。
後は経験値を取得したというログが無限に続いていく。
「な、なんですか?これぇ……」
ぺたりとその場に座り込むルゼル。
イレーナの先にスキル効果で普段の何倍もの速度で進むレベリング。
【ルゼルのレベルが上がりましたレベル6】
【ルゼルのレベルが上がりましたレベル7】
と、ルゼルのレベルもどんどん上がっていく。
最初の方は必要経験値が少ないから本当にサクサク上昇していく。
「寝てていいよ、ルゼル。あとは俺達がやっておくから」
と言ってみたらルゼルは気絶していた。
「はぁ。なんか気絶してるしこの人」
ボヤきながら俺は彼女を抱えるとこの部屋に置いてあるベッドに寝かせる。
「あとは寝てるだけで勝手にレベル上がるってね」
俺はそう言ってイレーナに目をやった。
「俺達も寝よっか」
「うん!」
壊された扉だったけど何とかそれっぽく付いてあるようにしてイレーナと交代で寝ることにした。
こんなボロ屋に泥棒に来るやついないと思うけど一応ね。
翌日。
俺が起きて奥の部屋を見るとルゼルのレベルが30まで上がっていた。
名前:ルゼル
レベル:30
次のレベルまで:356/21,000
累計獲得経験値:141,000
だいたい一晩でスライム5万匹弱くらい倒したのかな?
数にしてみればすごい討伐数だ。
そろそろいいだろう。
そう思って俺は経験値集中の効果を切って今度は、経験値が俺とイリーナに注がれるようにする。
その時にルゼルのこともパーティを外しておく。
ま、今回はお試しということだ。
そうしているとルゼルも起きてきた。
「おはようございます。アイルさん」
「おはよう。とまぁ、無料体験はここまでということで」
そう言って俺は彼女に自分のステータスを見させた。
「れ、レベル30?!!!!!!!」
叫ぶルゼル。
「れ、レベル30って数年かかるって聞くんですけど、何で寝るだけでこんなに上がってるんですかぁぁぁ?!!!!」
「これが俺の店の売りだからさ」
まぁもっとも、俺もゲーマーとしてバランスとか需要とか供給とかは考えてあるからあんまりめちゃくちゃなレベリングはしないけど。
俺はさっそく彼女を促す。
「扉弁償してくれるんだよね?それだけレベル上がってればその額くらい簡単に稼げるでしょ?でさぁ、ついでにこの店のことそれとなく宣伝しといて」
「は、はい!行ってきます」
そう答えてルゼルは朝早くからギルドに向かっていった。
あのレベルがあれば冒険者ランクCくらい本来狙えるはずだし扉の弁償くらい今日してくれるかもな。
そんな事を思っていたら夕方にルゼルが帰ってきた。
「アイルさん!いっぱい稼ぎましたよ!」
そう言ってカウンターにドン!と皮袋を置いてくれるルゼル。
「おう。もう稼げたんだ早かったな」
「はい!パーティメンバー私一人なので報酬全部私のものなので!」
そう言ってルゼルは昨日のことなど覚えていないかのように店を出ていこうとしたのだが
「きゃっ!」
突然入口に現れた男にぶつかったせいで止まっていた。
そこに立っていたのは昨日マサトシと呼ばれていた男だった。
それを見てルゼルが後ずさろうとするのだが、その時頭を下げるマサトシ。
「悪かった!ルゼル!パーティに戻ってきてくれ!」
昨日の今日でいきなり謝り出したマサトシ。
「お前がいなくなって激怒スキルの強さがわかったよ。激怒状態にあるモンスターの攻撃命中率が大幅に下がっていたことに気付いたんだ!」
そう言い出すマサトシ。
「俺たちにモンスターの攻撃を避けるのが上手いやつが居ないんだ!戻ってきてくれ」
そう言われていたルゼルだが俺の横に来た。
「もう遅いですよ」
そう言い放っていた。
何が遅いのか聞いてみる。
「わ、私この素敵なお店で働きたいなぁって思って、雇ってくれませんか?」
「そう言われてもここ客こないし。そんな雇うほどのお金ありません」
「た、タダ働きでもいいので」
そう言われたので頷いておく。
「分かった。給料は払わない。無償で働きなさい」
「やったー!!!私頑張りますよー!!!!」
奴隷適性ありまくりの子がここで働くらしい。
その時マサトシが俺に目を向けてきた。
「た、頼む!あんたからも何とか言ってくれ、オンボロ店の店主!」
「あのさぁ?俺お前からまだ大事な言葉聞いてないんだよねぇ」
マサトシに詰め寄る。
ニコニコの笑顔で
「な、何のつもりだ?俺たちは冒険者だぞ!やんのか?優しくしてるうちに、ぶっ!」
マサトシの首筋を掴んで持ち上げる。
宙に浮かび上がるマサトシの体。
ニッコリ微笑んでその怯えた顔を見てやる。
「お前扉壊したの覚えてないの?」
ブン。
そんなマサトシの体を地面に叩きつける。
「かはっ!」
「俺今イラついてんだよねぇ?誰かさんが扉壊したくせに偉そうにしててさぁ。もう二度と顔見せないでくれるかなぁ?」
ニッコニッコの笑顔で見下ろながらレベルだけ見せてやる。
名前:アイル
レベル:75
「れ、レベル75?!!!!!ひ、ひぃぃぃぃぃ!!!!!すいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!!これで勘弁してくだせぇぇぇぇぇぇ!!!!!二度と来ませぇぇぇん!!!!」
マサトシは皮袋を置いて走り去っていった。
皮袋を拾うと中には金貨がジャラジャラ。
俺はその皮袋をルゼルに投げ渡す。
「それ、ルゼルの給料からピンハネしたものだろうしあげるよ」
こういうのってだいたいそんなものなんだよねぇ。
「い、いいんですか?アイルさん」
元々君のものだろって返してやると
「私一生あなたについていきます!」
ルゼルがそう宣言していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます