第12話 俺何かした?


急ぎじゃないらしいからあまり一気にレベルは上げずにユイ達に教えていく。

先ずは武器の握り方から。


あまりレベルを上げすぎるとモンスターをワンパンしてしまいめちゃくちゃな戦い方が染み付いてしまうかもしれないし。


ルゼルにはそれをやっちゃったけど彼女は幸い勉強だけはしていたようで変な癖は付いていなかったけど。


「剣の持ち方はこうだね」


そうやってユイに説明していく。


「こ、こうですか?」


俺はそうそうと頷いてユイの動きを見守る。

そうしているともう1人の女の子が俺の服を引っ張っていた。


「ん、私にも教えて欲しい」

「アサシンだっけ?」

「ん」


頷く女の子の名前は確かアサっていう名前だったと思う。


「武器はナイフでいい?」


頷く少女に俺は教えていく。


「アサシンの役は基本的に敵の注意を引くことだから前に出るんだよね」


その際必要なのが出来るだけ被弾しないことと付け加える。


「今はそんなに自分の役がはっきりしないかもしれないけどモンスターが強くなると、どんどん自分の責任が重くなるから」


それだけは覚えておいてね、と付け加える。

アサシンが被弾せずに敵の攻撃を引き続けるだけで後衛も楽になるから、って。


「ん、分かった頑張る」


眠そうな目でユイとのコンビネーションを練り始める2人。

俺は残りの1人に声をかけた。


「お前はいいのか?」

「お前に教わることなんて何もねぇよ!」


1人で剣を振っている。

元々俺に頼るのは乗り気じゃなかったらしい。


まぁ、要らないと言われたなら別に何も言わないけどさ。

でもその武器の振り方じゃ無駄があり過ぎるんだよなぁ。


「がっ!」


男は今ゴブリン相手に振り負けた。


何がしたいのか分からないけど最短距離で剣を振ってないから咄嗟の場面で振り遅れる。


そのままゴブリンに吹っ飛ばされる男、トシゾウから目をそらす。


「やったー」

「ん、勝った」


その一方で俺の言うことを素直に聞いて実践していくユイ達はゴブリン三体相手に勝っていた。

人数差をものともしない鮮やかな勝利だった。


「やりましたよ!勝てましたよ!アイルさん!」

「ん、褒めて」


そうやって寄ってくる女の子2人。


「2人とも良くやったな」


そう言ってやると途端に笑顔になるユイ。


「うん!これも全部アイルさんのおかげだよ!」


そう言ってくれる。

嬉しいねぇこういうの。


コーチングとかもやってみると悪くないね。


「モンスターって思ったより怖くないんですね」


そう言ってくるユイに伝えておく。


「ゴブリンなんて誰でも勝てるようなモンスターだよ。慢心しないようにね。ここからだよ。ランクが上がるとモンスターも手強くなるから」


そう伝えると舌打ちが聞こえた。

トシゾウがしたものだった。


あー、そういえばあいつゴブリンに結局負けたんだったな。

訂正しようかと思ったけど実際のとこゴブリンって誰でも勝てるようになるからなぁ。


「ちっ!俺は先に帰るぞ!」


そう言ってトシゾウは誰よりも早く帰ってしまった。

まぁもうクエスト終わったから帰ってもらってもいいんだけどさ。


「何なんだ?あいつ」


俺はそう思いながらこれからどうする?とユイ達に聞いてみたが


「私、アイルさんとご飯食べたいです!追加で払うので経験値もください。デートしてるだけで強くなれるなんて最高です」


デート?ユイはそんな風に思っているのかな?


「ん、私も食べたい」


アサにもそう言われたので、じゃあということで俺たちは酒場に向かうことになったのだが。

その酒場の前でトシゾウと再会した。


なんか気まずいなと思ってたら


「トシゾウも一緒にどうですか?」


ユイがそう勧誘していたけど


「いらねぇよ。俺は1人でいい」


そう言って1人で先に入ってしまう。

何なんだよほんとに。


「俺、嫌われてんのかなぁ?」


と呟いてみたら


「そ、そんなことないですよ!アイルさんは素敵な方です」

「ん、そうだよ。アイルはいい人」


そう言ってくれる2人。

俺は頷いて中に入った。


「はい、あーん♡」


隣に座ってきたイレーナが俺の口許にスプーンを運んできた。


「そ、そういうのは家でしてくれないか?イレーナ」

「恥ずかしがり屋だなぁアイルは」


そんなことをしているイレーナと俺を見て


「お2人ってもしかして付き合ってるんですか?」


と聞いてくるユイ。

それに勝ち誇ったような顔をするイレーナ。


「もう5年くらい付き合ってるかなー。私の感覚だと」


イレーナの中じゃ丁度俺がイレーナを拾った辺りから付き合ってることになってるらしい。


まぁ、確かにあの頃から友達とかそういう関係は明らかに超えてたと思うけど。


「そ、そうだったんですか。残念です」


シュンと俯くユイ。


「いいなーっと思ってたんですよねアイルさんのこと」


そう口にするユイを小突くアサ。


「ん、大丈夫だよ。この世界は多妻が認められてるから」

「そうだね。じゃあ私もチャンスがあるんだね」


そんな会話を始める2人の中に入っていくルゼル。


「わ、私にもチャンスがありますね。それだと」


そんなことを言っているルゼルだが俺でいいのか?お前は。

そんなことを思う。


その時カウンター席の方から視線を感じてそっちに目をやって見ると


「ちっ、死ねよ」


トシゾウが舌打ちして小声でそんなことを言っていた。

しかも、今死ねって言わなかったか?


マジでなんなんだ?あいつ。

俺何かした?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る